葉酸といえば、妊娠希望の方が必要な栄養素というイメージが強いのではないでしょうか。
実は、男女関係なく葉酸を適正に摂取することによって様々な健康効果があります。
では、葉酸とは具体的にどのような働きを持つ栄養素なのでしょうか?
効率よく葉酸を摂取する方法は何なのでしょうか?
本記事では、葉酸の効果について以下の点を中心にご紹介します。
- 葉酸の効果とは
- 葉酸の1日必要量
- 葉酸を効率よく摂取するポイント
葉酸不足になるとどうなるかも解説しています。
葉酸の効果について理解するためにも、ご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
葉酸とはどんな栄養素なのか?
葉酸とは、ビタミンB群に属する水溶性ビタミンの1つです。
プテロイルモノグルタミン酸とその派生物の総称として呼ばれています。
葉酸の働きは、主に以下のとおりです。
- 赤血球の造成
- 核酸(DNA・RNA)やタンパク質の合成を促進
- 代謝を促進する酵素をサポート
それぞれ詳しく見ていきます。
【赤血球の造成】
葉酸は、ビタミンB12と同様に「造血のビタミン」ともいわれています。
骨髄での赤血球や白血球の形成と、成熟に欠かせない栄養素です。
【核酸(DNA・RNA)やタンパク質の合成を促進】
核酸の種類は以下の2つです。
- DNA(デオキシリボ核酸)…細胞から細胞へ性質を伝える遺伝子の本体
- RNA(リボ核酸)…DNAの情報に基づいてタンパク質を合成
核酸の働きである細胞の生産・再生は、特に胎児の発育に重要な役割を担っています。
【代謝を促進する酵素をサポートする】
葉酸は、妊娠前後の女性だけに必要な栄養素ではありません。
葉酸は代謝を促進する酵素をサポートし、動脈硬化の予防にも効果があります。
そのため、男女関わらず全ての方に必要な栄養素です。
葉酸の効果:胎児への好影響
葉酸の効果としてよく挙げられるのが、胎児への良い影響です。
核酸の働きにより、胎児が成長する過程で起こる細胞分裂をサポートします。
胎児の脳や脊髄が作られるのは妊娠初期です。
妊娠中はもちろん、妊娠前や産後の授乳期にも、葉酸の積極的な摂取が求められます。
葉酸の効果:貧血の改善
葉酸は貧血の改善にも役立っています。
貧血は、赤血球の生産・供給・崩壊のバランスが崩れたときにみられる症状です。
赤血球の造成という葉酸の働きにより、赤血球量のバランスを整えます。
葉酸欠乏性貧血の特徴は以下のとおりです。
- 疲れやすさ
- 息切れ
- 動悸
- 頭痛・めまい
- 足のむくみ
- 味覚障害
- 顔色が悪い など
女性は、月経などにより貧血になりやすい傾向にあります。
普段の食事バランスが崩れがちな方も、貧血対策として葉酸を積極的に摂取しましょう。
葉酸の男性や妊婦以外の方への効果とは?
葉酸は妊娠中の女性だけではなく、男性や高齢者の方など全ての方に重要な栄養素です。
男女問わず、全ての方への葉酸の効果は以下のとおりです。
- 美肌・美髪
- 新陳代謝の促進や疲労回復
- 循環器系の疾患への予防効果
- うつ病予防や改善への期待
- 認知症予防への期待
順番に見ていきましょう。
美肌・美髪
葉酸には、代謝をよくする効果があります。
その結果、肌のターンオーバーが活発となり、美肌への効果が期待できるでしょう。
また、葉酸は健康的な髪を維持するために不可欠な栄養素です。
葉酸が持つ髪への効果は以下のとおりです。
- 髪の成長を促す
- 枝毛になることを防ぐ
- 白髪の増加を防ぎ、髪を黒く保つ栄養素(シロチン)の働きを促進する
新陳代謝の促進や疲労回復
葉酸は、新陳代謝や疲労回復がしやすい身体になることをサポートします。
葉酸そのものに効果があるというよりは、細胞分裂や造血などの役割を果たした結果として、新陳代謝や疲労回復がしやすい身体になります。
更年期の代表的な症状である、疲労感の改善にも効果があるとされています。
循環器系の疾患への予防効果
葉酸の適正摂取は、循環器疾患の予防効果が期待されています。
循環器疾患の予防に関係しているのが、ホモシステインという血液中のアミノ酸です。
ホモシステインの濃度が上がると、正常な血管を維持することが難しくなります。
その結果、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)や、動脈硬化が進行するのです。
循環器疾患や動脈硬化は、高齢者の方が発症しやすい疾患です。
葉酸には血液中のホモシステイン濃度を下げる働きがあるため、積極的に摂取しましょう。
うつ病予防や改善への期待
様々な研究から、うつ病の方は血液中の葉酸値が低い傾向にあることが分かりました。
葉酸はカテコールアミンといううつ病に深く関わる物質の生成に影響します。
カテコールアミンは、ドーパミンなどのストレス反応やうつに関する神経伝達物質です。
カテコールアミンが体内で不足すると、意欲が低下し抑うつ症状を招きます。
葉酸の適正摂取は、メンタルヘルスにも重要な役割を担っているのです。
認知症予防への期待
先述したとおり、ホモシステイン濃度が高くなると様々な病気の発症リスクが上がります。
認知症もその1つです。
日本人は、ホモシステインが高くなりやすい遺伝子型を持つ方が15%いるといわれます。
このような遺伝子型を持つ方には特に、葉酸の摂取が必要といえます。
ただ、葉酸による認知症効果の程度はまだ研究段階です。
今後様々なことが明らかになっていくでしょう。
葉酸を豊富に含む食品
続いては、葉酸を豊富に含む食材をご紹介します。
生で食べられるものや、手軽に取り入れられるものをピックアップしました。
ほうれん草 | ブロッコリー | 枝豆 | いちご | 納豆 |
きなこ | 鶏卵 | 鶏レバー | 焼きのり | 玉露 |
例えばブロッコリーは、茹でると葉酸が流れ出すため電子レンジでの加熱がおすすめです。
1つの食材に偏ることなく、バランスよく摂取することが大切です。
葉酸を効果的に摂取するには?
葉酸を効果的に摂取するためには、できるだけ水にさらさない調理方法が有効です。
葉酸は水溶性ビタミンのため、水に溶けやすい栄養素です。
摂取したうちの半分ほどは、翌日までに尿や汗で排出されます。
そのため、毎日適正量を摂取することが必要です。
また葉酸は、光や熱に弱いという特徴も持っています。
葉酸を効率よく摂取するためのポイントは以下のとおりです。
- 可能であれば生(非加熱)で摂取する
- 茹でる調理は避け、蒸す・炒めるなどの調理法にする
- スープなどにして汁ごと摂取する
上記のポイントに気をつけて、効率よく適正量を摂取することを心がけましょう。
葉酸は毎日継続して摂取しましょう
葉酸は体内で作り出すことができないため、食事で継続的に摂取する必要があります。
継続的に摂取する理由としては
- 調理による栄養素の損失が大きいため
- 体内への蓄積性が低いため
などが挙げられます。
また、厚生労働省は、特に妊産婦への栄養機能食品の利用を推奨しています。
栄養機能食品とは、厚生労働省が定める基準で特定の栄養成分・機能を表示した食品です。
栄養機能食品を利用する際は、食事全体のバランスに注意しましょう。
まずは、野菜や果物など、手軽に購入・摂取できる食材を知ることが大切です。
その上で調理方法などを工夫し、毎日効率的に摂取することを心がけましょう。
出典:厚生労働省【不足しがちなビタミン・ミネラルを「副菜」でたっぷりと】
1日あたりの葉酸摂取量は?
1日あたりに必要な葉酸の摂取量を表にまとめました。
(単位:μg)
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
年齢等(歳) | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
0~5(月) | - | - | 40 | - | - | - | 40 | - |
6~11(月) | - | - | 60 | - | - | - | 60 | - |
1~2 | 80 | 90 | - | 200 | 90 | 90 | - | 200 |
3~5 | 90 | 110 | - | 300 | 90 | 110 | - | 300 |
6~7 | 110 | 140 | - | 400 | 110 | 140 | - | 400 |
8~9 | 130 | 160 | - | 500 | 130 | 160 | - | 500 |
10~11 | 160 | 190 | - | 700 | 160 | 190 | - | 700 |
12~14 | 200 | 240 | - | 900 | 200 | 240 | - | 900 |
15~17 | 220 | 240 | - | 900 | 200 | 240 | - | 900 |
18~29 | 200 | 240 | - | 900 | 200 | 240 | - | 900 |
30~64 | 200 | 240 | - | 1000 | 200 | 240 | - | 1000 |
65~74 | 200 | 240 | - | 900 | 200 | 240 | - | 900 |
75以上 | 200 | 240 | - | 900 | 200 | 240 | - | 900 |
妊婦(付加量) | +200 | +240 | - | - | ||||
授乳婦(付加量) | +80 | +100 | - | - |
出典:厚生労働省【日本人の食事摂取基準(2020年版)】葉酸の食事摂取基準(μg/日)262P
妊婦・授乳婦はより多くの葉酸を必要とするため、推奨量に加えて付加量をプラスします。
また、厚生労働省では毎年、国民健康・栄養調査を実施しています。
令和元年国民健康・栄養調査と、上記の表を比較して分かったことは以下のとおりです。
- 男性では全年代において、平均摂取値がおおむね摂取推奨量に達していた
- 20~39歳の女性では、摂取推奨量よりも摂取平均値が低かった
摂取量が適正な場合も、葉酸は日々消費・排出される栄養素であり、蓄積できません。
健康維持に欠かせない栄養素であるため、毎日しっかりと摂取していきましょう。
20~39歳の女性は特に、妊娠の有無にかかわらず意識的に葉酸を摂取することが重要です。
出典:厚生労働省【第 1 部 栄養素等摂取状況調査の結果】70~73P
葉酸の過剰摂取による影響
葉酸を食材から摂取している場合、過剰症のような重い症状はほとんどみられません。
しかしサプリメントの過剰摂取によって、亜鉛の吸収障害が起きる可能性があります。
ビタミンB12欠乏による神経障害の発見が遅れる危険もあるため、注意が必要です。
サプリメントでの葉酸摂取は、耐容上限量を確認して用量を守りましょう。
葉酸の不足による影響
葉酸が不足することによって起こる症状は主に以下のとおりです。
- 巨赤芽球性貧血(造血作用の異常)
- 神経障害
- 腸機能障害
- 口内炎
- 皮膚異常
- 動脈硬化 など
通常の食事で葉酸が不足することは稀ですが、成長期などによって必要量が変わります。
また、葉酸の不足は、胎児の発育に必要な細胞分裂がうまくいかなくなる原因の1つです。
葉酸不足による胎児への影響は以下のとおりです。
- 神経管閉鎖障害
- 下半身障害
- 無脳症
- 流産・死産 など
葉酸は、母体自身の健康維持と胎児の発育に重要な役割を持つ栄養素です。
特に葉酸が不足しがちな妊娠前後は、より意識して摂取しましょう。
葉酸と鉄分の関係について
葉酸も鉄分も、赤血球の造成に関わる働きを持っています。
2つの栄養素は共通した食材に含有していることが多く、不足しやすい栄養素です。
葉酸と鉄分が不足すると貧血になりやすいため、両方の摂取が望ましいでしょう。
市販のサプリメントでは、葉酸と鉄分が1粒になったものも数多く販売されています。
葉酸サプリメントを選ぶポイント
数多くある葉酸のサプリメントを選ぶ際のポイントは、主に以下のとおりです。
- 葉酸以外の栄養素をチェック
- 葉酸配合量
- 適切な環境で製造されているかどうかの確認
葉酸だけの摂取では、十分な効果を発揮できない可能性があります。
様々な栄養素をバランスよく摂取することにより、それぞれが効果を高め合うことができます。
鉄分やカルシウムなど、他の栄養素が含まれているサプリメントを選びましょう。
また、サプリメントの種類によって葉酸配合量の違いがあります。
飲む際はきちんと確認する必要があります。
製造元が安心できる会社かどうかもチェックするといいでしょう。
葉酸の種類
葉酸には、以下の2種類があります。
- 天然葉酸(ポリグルタミン酸型葉酸)
- 合成葉酸(モノグルタミン酸型葉酸)
天然葉酸とは、野菜などに含まれる自然由来の葉酸を指します。
一方、合成葉酸は、吸収率などをよくするために人の手を加えた葉酸です。
種類 | 天然葉酸(ポリグルタミン酸型) | 合成葉酸(モノグルタミン酸型) |
吸収率 | 低い | 高い |
1粒の配合量 | 多めに配合 | 少なめに配合 |
日本人には、合成葉酸の代謝・活用ができない体質の方が多いことが分かってきました。
また、合成葉酸は過剰摂取になりやすく、摂取の際は注意が必要です。
他の栄養素
葉酸とともに摂取することが望ましいとされる栄養素は以下のとおりです。
- 鉄分
- カルシウム
- ビタミンB群
- ビタミンA・C・E・D など
不足しがちな栄養素がセットになったサプリメントは、手軽で効率よく摂取可能です。
購入の際はチェックしましょう。
サプリメントの形状やにおい
妊娠中に摂取するサプリメントは、つわりによって飲むことが難しい可能性があります。
サプリメントの形状(大きさ)や、におい(味)に敏感になるためです。
お試しセットなどを利用し、事前に飲むことができるか確認することをおすすめします。
価格や購入方法
サプリメントの価格は様々です。
妊娠前~授乳期の長期間摂取をする場合は、数年にわたって購入が続きます。
そのため、摂取するサプリメントは継続して支払いができる範囲のものを選びましょう。
また、体調や子供の世話によって外出が難しく、購入できない場合もあるかもしれません。
そのような時に便利なのが、定期購入のシステムです。
一定期間ごとにサプリメントを発送してくれるため、買い忘れの心配もないでしょう。
葉酸の効果についてのまとめ
ここまで、葉酸の効果について解説してきました。
葉酸の効果についての要点は以下のとおりです。
- 葉酸の効果は、赤血球の造成・核酸やタンパク質の合成・代謝の促進など
- 葉酸の1日必要量は、成人男性・女性ともに240μg
- 葉酸を効率よく摂取するためには、生のまま食べる・スープごと摂取など
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
