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トップページ>認知症を学ぶ>認知症の症状>記憶障害とは?症状や原因、ストレスとの関係まで徹底解説!

記憶障害とは?症状や原因、ストレスとの関係まで徹底解説!

  • 記憶障害の種類、症状について
  • 記憶障害の原因について
  • 記憶障害の治療方法について

家族や身近な方に記憶障害の症状がみられた時のために、記憶障害について正しい知識を身につけましょう。

 

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記憶障害とは

記憶障害についての図

記憶障害とは、自分が体験した過去の出来事についての記憶が抜け落ちてしまう障害です。
新しく起きた出来事が覚えられない、またはすぐに忘れてしまう、覚えていたことが思い出せないなどの症状が見られます。

記憶障害と認知症の違い

記憶障害は認知症の中核症状の一つであり、認知症そのものではありません。
中核症状とは、認知症の進行で壊れてしまった脳の細胞の担っていた役割が、失われることで起こる症状の事を指します。

中核症状の例として、家事や趣味がうまくできない、会話が理解できない、今の時間や今いる場所が分からないといった症状が挙げられます。

記憶障害と物忘れの違い

物忘れとは、人の名前が急に出てこないなど、日常生活の中でうっかり忘れてしまうことを指します。
しかし記憶障害は、最近のことだけでなく、自身の人生に対して重要な事についても忘れてしまう症状です。

また、記憶障害では記憶をうっかり忘れてしまう訳ではなく、記憶そのものが抜け落ちてしまいます
そして、記憶障害の当事者自身が忘れていたことを自覚することができません。

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記憶障害の原因

記憶障害の原因について解説する医師と患者記憶障害の原因として、以下の項目が挙げられます。

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老化による記憶力の低下

どのような人であっても、年齢を重ねるにつれて少なからず脳機能の低下が生じて、何かしら記憶の問題を抱えます。
例えば、新しいものを思い出すために時間を要する、記憶するために何度も繰り返し考えなければならないといった現象が起こります。

しかし、このタイプの記憶障害は、日常生活を送る能力や思考力などは損なわれません。
そのため、生活の中で不便を感じる場面はありますが、時間をかければ思い出すことができます
したがって、老化が原因の記憶障害は、認知症やアルツハイマー症の徴候ではありません。

認知症

認知症の最初の症状に、直近の情報が覚えられないという記憶障害が見られることがあります。
そして、認知症が原因の記憶障害は時間の経過とともに症状が悪化していきます。

認知症の方は、出来事の詳細だけでなく、その出来事自体を忘れてしまいます
例えば、よく行く場所の道順を思い出せない、約束を忘れる、家の鍵をかけ忘れるなどの症状が見られます。

また、老化による記憶力低下とは異なり、認知症の方は自身が記憶障害になっていることに気づかない、そのような症状はないと言い張ることがあります。

そして、症状が悪化していくと、物の名前、言葉の理解、日常的な生活が困難になっていきます。
最終的には見当識を失い、今が何時なのか、今どこにいるのかも把握できなくなってしまいます。

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うつ病

うつ病も、認知症による記憶障害に似た症状を引き起こす原因になり、その場合は仮性認知症と呼ばれます。
名前の通り、うつ病による記憶障害は認知症による記憶障害との判別が難しい場合があります。

認知症の方と異なる点は、自身が記憶障害を自覚していて、その症状を訴えるという点です。
最近の大切な出来事、個人的な事柄を忘れることはあまりありません。
また、うつ病は記憶障害の他に、強い悲しみ、睡眠障害、反応の鈍化、食欲低下などの症状が併発することがあります。

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ストレスが記憶障害に与える影響

記憶障害の原因かもしれないストレスに悩まされる高齢者

記憶障害は老化や認知症ではなく、ストレスによって起こることもあります。
ストレスが原因の記憶障害の主な種類をご紹介します。

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解離性健忘

ストレスによる記憶障害として代表的なのが、解離性健忘です。
症状や診断方法をみていきましょう。

症状

解離性健忘では、自身がストレスを感じた出来事・経験が記憶から抜け落ちます。
たとえば以下のような記憶があてはまります。

  • レイプ
  • 戦争体験
  • 犯罪・事故・天災などの経験
  • 幼少期の虐待

解離性健忘では多くの場合、特定期間の記憶だけが抜け落ちます。
たとえば交通事故が原因の解離性健忘の場合、消えるのは事故の前後の記憶です。

より具体的には、事故に遭ったとき、自分がどこにいたのかや、なにをしていたかなどの記憶が失われます。

ただし解離性健忘では、特定期間ではなく、過去の記憶が全て失われるケースもゼロではありません。

解離性健忘を発症しやすいのは女性・若年者・自閉症スペクトラム障害の方です。
一般的には、記憶は数日のうちに回復します。

しかし中には、長期にわたって記憶が戻らないケースもみられます。

診断方法

解離性健忘の診断は、医師による評価で行われることが一般的です。
たとえば以下のような症状がある場合は解離性健忘と診断される可能性が高いです。

  • 悲惨な出来事やトラウマ体験などを覚えていない
  • 記憶障害のために苦痛を感じている
  • 記憶障害が原因で社会生活に支障をきたしている

脳検査などの身体診察が行われることもあります。
検査・診察で特定原因を発見できない場合、消去法として解離性健忘が疑われます。

一過性全健忘

一過性健忘もストレスが原因で起こる記憶障害として代表的です。
多くの場合、生涯に1度きりしか発症せず再発は稀です。

症状

一過性健忘は、一時的に記憶に重大な支障が出る状態です。
逆行性と前向性の2種類があります。

逆行性は過去の記憶が失われることで、多くの場合直近数時間の記憶を忘れてしまいます。
前向性は物事を新しく記憶できなくなることです。

いずれも原因はハッキリ解明されていませんが、ストレスを原因とする説が有力です。

急激に発症することが多いため、発症者が不安・混乱を感じやすくなります。
発症すると、同じ質問などを繰り返すなどの症状がしばしばみられます。
質問の内容は、自分が今いる場所や、日付・時間に関するものが代表的です。

一過性健忘は、数時間~1日で症状がおさまるケースがほとんどで、たいていは再発しません。
ただし回復後、健忘を発症していた間の記憶が失われることもあります。

診断方法

医師による診断が一般的です。
あるいは、MRIやCT検査で脳の異常を調べることもあります。

脳や身体に特別な異常がなく、かつ記憶障害の症状がみられる場合は、一過性健忘が疑われます。

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記憶の種類

記憶の種類についての図
記憶の種類として、まず短期記憶と長期記憶の2種類に大きく分けられます。
それぞれについて解説します。

短期記憶

短期記憶は数十秒から1分程度までの短い期間のみ残る記憶です。
作業記憶とも呼ばれる一時的な記憶で、忘れやすくなっています。

長期記憶

長期記憶は数分から数日間、または数日以降も残る記憶です。
長期記憶は更に、陳述記憶と非陳述記憶に分類されます。

陳述記憶とは言語化できる記憶であり、非陳述記憶とは言語化できない記憶です。
陳述記憶には意味記憶とエピソード記憶の2種類が存在します。
意味記憶は一般的な知識などに関する記憶であり、エピソード記憶は学歴や職業などの生活の中で体験したことに関する記憶です。

一方、非陳述記憶に当てはまるのは、手続き記憶と呼ばれる記憶です。
手続き記憶は、学習や練習を繰り返しすることで身につけられた技術についての記憶です。
一般的に、陳述記憶、非陳述記憶、短期記憶の順に忘れにくいといわれています。

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記憶障害の種類と症状

記憶障害の種類と症状について電話で確認する高齢者

上述したそれぞれの記憶の種類に対して、記憶障害がもたらす症状は少しずつ異なります。
ここからは記憶の種類によって、どのような記憶障害の症状が見られるか解説します。

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短期記憶障害

短期記憶に障害が生じると以下のような症状が現れます。

  • 今日が何日なのかが分からない
  • どこに物を置いたのか忘れる
  • いつも捜し物をするようになる
  • 何度も同じことを聞く

認知症の初期は、直近の記憶から失われていき、続いて認知症が進行していくと、思い出せない事が増えていきます。

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長期記憶障害

長期記憶に障害が生じると以下のような症状が現れます。

  • 一般に知られている祝日、記念日の名前を忘れる
  • 自分の通っていた学校名、子供の消息、職業などを忘れる

最終的には、家族の名前や顔も忘れてしまうこともあります。

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手続き記憶障害

手続き記憶は、自転車に乗る、泳ぐ、楽器を演奏するなど、無意識のうちに記憶している内容を指します。
そのため、認知症になっても体得していた記憶は比較的残りやすいと言われています。

エピソード記憶障害

エピソード記憶に障害が生じると、体験してきたエピソードそのものを忘れてしまい、周囲と話が噛み合わなくなります。

例を挙げると、「あの時は仕事が大変で中々家にも帰って来ることができなかったよね」という話をしても、「そんな事は全くなかった」と返されてしまうような状況を指します。

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意味記憶の障害

意味記憶に障害が生じると、物の名前がわからなくなるため、「あれ」や「それ」といった指示語での表現が増えます。
そのため、他者との意思疎通が困難になります。

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やめる

記憶障害の初期症状

記憶障害の初期症状について知る医者と看護師

記憶障害は認知症の中核症状の一つであることが多いため、記憶障害が認知症の合図になることもあります。
ここからは、記憶障害の警戒すべき初期症状について解説します。

注意力の低下

記憶障害の初期症状として、注意力、集中力、作業能力の低下が見られ始めることがあります。

例えば、テレビを見ていても話の筋が理解できなくなってしまう、信号が赤になりそうな時に渡ろうとしてしまう、鍵や財布をなくしてしまうなどの症状が見られます。

意欲や関心の低下

物事に対して、意欲や関心の低下が見られることもあります。
例えば、趣味や好きなことを放棄してしまう、人付き合いを避けるようになってしまうなどの症状が見られます。

食欲の低下

記憶障害はうつ病が原因で発症する場合もあります。
そのため、うつ病による症状として、食欲の低下が見られることもあります。

記憶障害の予防策

記憶障害は、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
しかし、適切な生活習慣や活動を通じて、そのリスクを軽減することが可能です。
以下では、記憶障害の予防策について詳しく解説します。

知的トレーニング

知的トレーニングは、脳を活性化し、記憶力を向上させる効果的な手段です。
パズルや計算、暗記などの活動は、脳の異なる部分を刺激し、記憶力を強化します。

また、スマートフォンやタブレット用の脳トレーニングアプリを利用することで、日常生活の中で簡単にトレーニングを行うことができます。

筋力トレーニング

筋力トレーニングもまた、記憶障害の予防に役立つとされています。
週3回、30分以上の運動を行うことで、認知症発症のリスクを40~50%下げることが可能です。
散歩やストレッチなどの軽い運動から始め、徐々に運動量を増やしていくことが推奨されます。

デュアルタスク

デュアルタスクは、同時に2つの動作を行うトレーニング方法です。
これにより、脳の前頭葉の血流が活発になり、脳機能の低下を予防することができます。
例えば、「テレビを観ながら洗濯物をたたむ」などの日常生活の中で実践できる動作がデュアルタスクにあたります。

五感を刺激する

五感(触覚、嗅覚、視覚、味覚、聴覚)を刺激することも、記憶障害の予防に有効です。
例えば、アロマセラピーは心身をリラックスさせるだけでなく、脳細胞を刺激し、記憶力を向上させる効果があります。
また、触覚を利用したハンドセラピーも、安心感を提供し、記憶力を強化する効果があります。

食生活の見直し

健康的な食生活は、記憶障害の予防に重要な役割を果たします。
特に、脂分の多い食材は血栓や動脈硬化の原因となり、脳血管性認知症のリスクを高めます。
そのため、ビタミンEを豊富に含むオリーブ油や、血液をサラサラにする効果がある青魚などを食生活に取り入れることが推奨されます。

回想法

回想法は、過去の記憶を呼び戻す手法として用いられます。
これにより、記憶障害になった人でも過去の記憶を思い出し、人とのコミュニケーションを図る意欲が生まれるとされています。
この方法は、認知症予防のプログラムとしても実践されています。

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記憶障害の簡単チェックリスト

記憶障害の簡単チェックリストを受ける高齢者

単なる物忘れと記憶障害は見分けがつかないことがあります。
以下のような症状がある場合は、記憶障害が疑われます。

【記憶障害のチェックリスト】

  • 数分前、数時間前の出来事をすぐ忘れる
  • 同じことを何度も言う・聞く
  • しまい忘れや置き忘れが増えて、いつも探し物をしている
  • 約束を忘れる
  • 昔から知っているものや人の名前が出てこない
  • 同じものを何個も買ってくる

出典:「認知症|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省

上記の症状にあてはまるからといって、必ずしも記憶障害とは限りません。
単なる物忘れの可能性も十分あります。

ただし、物忘れの自覚がない場合や、記憶が広範囲にわたって抜け落ちている場合は記憶障害の疑いがあります。

たとえば人と会う約束をしたとしましょう。
通常の物忘れは、うっかり約束を忘れたとしても、誰かに指摘されれば思い出せます。

あるいは、約束の時間は忘れたものの、約束自体は覚えているのも通常の物忘れです。
対して記憶障害の場合は、約束したこと自体を忘れてしまいます。

約束を指摘されても思い出せず、認識の違いから会話が食い違うこともしばしばです。
記憶障害と物忘れを見分ける場合は、症状だけでなく、本人の自覚の有無なども考慮しましょう。

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記憶障害の診断方法

記憶障害の診断方法について知る病院の医者と看護師
記憶障害がみられる場合は、医療機関の受診が望ましいです。
医療機関の受診を検討すべきタイミングや、検査方法をみていきましょう。

受診するタイミング

受診を検討すべきタイミングは、記憶障害によって日常生活に支障が出ているときです。
たとえば以下のような症状があてはまります。

  • 注意力・集中力が著しく低下している
  • 何事にも無気力・無関心・無感情
  • 気分が沈んでいる
  • 自分を傷つけたい衝動がある
  • 会話できない・ろれつが回らない
  • 頭痛・めまい

上記の症状がなくとも、記憶に不安がある場合は、念のため医療機関を受診しましょう。
受診すべきか迷ったときは、まず電話などで医師に相談するのも良い方法です。

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検査の流れ

記憶障害の検査方法を紹介します。
一般的には、記憶障害は問診と精神状態・神経心理学的検査の3つから成り立ちます。

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問診

医師から患者・患者の家族へ、現在の状態などの聞き取りが行われます。
主な聞き取り項目は以下の通りです。

  • なにを思い出せないのか
  • いつ頃から症状があるのか
  • 症状が悪化していると感じるか
  • 症状によって日常生活・仕事などに支障が出ているか

あわせて、患者の病歴なども尋ねられます。
記憶障害は、脳卒中などの疾患を原因とすることも多いためです。

生活状況や仕事内容、体調・気分、環境の変化に関する質問も行われます。
大きな環境の変化やストレスがあった場合、記憶障害の原因は心理的なものが疑われます。

精神状態の検査

患者の精神状態を客観的に検査します。
具体的には思考力・注意力・記憶力・集中力などを測定します。

簡単な書き取り・描画・図形などの課題を解く検査が一般的です。
現在の居場所・時間などに関する質疑応答も行われます。

また、記憶障害への自覚や気分・体調に関する質問も、精神状態を知るうえで大切な検査項目です。

神経心理学的検査

神経心理学的検査は、脳機能の状態を詳細に調べる検査です。
精神科医や心理士などが行うのが特徴です。

具体的には、知能検査・記憶検査・注意力検査などを行います。
検査結果がかんばしくない場合は、脳の損傷や認知症などが疑われます。

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年代別の記憶障害リスク

年代別の記憶障害リスクについて話し合う一家
記憶障害=認知症というイメージをお持ちの方は少なくありません。
その結果、記憶障害は高齢者特有の症状と思われがちです。

しかし、記憶障害は若い世代でも発症します。
年齢別の記憶障害の原因やリスクをみていきましょう。

子供の記憶障害

子供の記憶障害は、高次脳機能障害の一種として現れることが多いです。
高次脳機能障害とは、病気や事故・ケガなどの後遺症が現れている状態です。

原因は、病気・ケガによって脳が損傷を受けることです。
病気やケガとは、たとえば急性脳症・交通事故・転倒が代表的となっています。

以下のような症状がある場合は高次脳機能障害による記憶障害の可能性があります。

  • 今日の授業で何をしたか思い出すことができない
  • 毎日会う友だちや担任の名前、日付を覚えられない
  • 何度も同じことを聞く
  • 少し前に言われたことを覚えていない
  • 友だちとの約束を忘れたり、重複したりする

出典:福祉保健局「もしかしたらお子さんは高次脳機能障害かもしれません

20代〜30代の記憶障害

20代・30代の記憶障害は、若年性健忘症や若年性認知症が疑われます。
とくに注意したいのは若年性認知症です。

若年性認知症は65歳未満の方が発症する認知症です。
高齢者の認知症と同様、記憶障害などがあらわれます。

2017~2019年度の調査では、全国の若年性認知症発症者は3.57万人と推計されており、人口10万人当たり、50.9人の計算です。

一方、若い世代の記憶障害は若年性健忘症の可能性もあります。
若年性健忘症はストレスや脳のケガ・病気などで起こります。

いずれも重症化を防ぐには、脳の訓練や生活環境の調整などが必要です。
医師の指導を仰ぐためにも、心当たりがある場合は速やかに医療機関を受診しましょう。

出典:東京都健康長寿医療センター研究所「プレスリリース>「わが国の若年性認知症の有病率と有病者数」

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40代以降の記憶障害

40代以降になると、記憶障害のリスクは高まります。
理由は、40歳以前の若者と比べると、若年性認知症・高次脳機能障害などのリスクが高くなるためです。

認知症の前段階として軽度の記憶障害があらわれることもあります。
たとえばアルツハイマー型認知症は進行が遅く、40代頃から症状が現れ始めているケースは少なくありません。

記憶障害は更年期障害の一種として現れることもあります。
男女ともにみられる症状で、原因は男性・女性ホルモンの分泌量が減少することです。

40代以降の記憶障害はあらゆる原因が考えられるため、気になる症状がある場合は医師の診察を受けましょう。

記憶障害の治療方法・リハビリ

記憶障害の治療方法・看護計画について解説する医療従事者

記憶障害の治療には、認知症の方本人による対応と、家族が支援する内容の両方が必要となります。
ここからは、記憶障害の治療方法について解説していきます。

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本人ができること

本人ができる対策として、まず健康的な生活を送ることがあげられます。
具体的な内容については、後述する一般的な処置で解説します。

また、頭を使った作業も記憶障害の治療に有効な場合があります。
新しいことの学習やクロスワードなどの頭の体操、読書、コンピューターを使った作業、編み物などの手を使った作業が挙げられます。

一般的な処置

記憶障害の治療には、一般的に健康対策が推奨されます。
以下が健康対策の具体例です。

  • 定期的な運動
  • 果物、野菜を多く摂取するような食事
  • 十分な睡眠
  • 禁煙、飲酒の制限
  • 社会活動への参加
  • 定期検診、ストレス管理、頭部外傷の予防

また、血圧、コレステロール値、血糖値のコントロールを図ることで、心血管リスクの低減に繋がり、結果的に認知症リスクが低減する可能性もあります。

薬物治療

中枢神経系作用を有する錠剤の中止、制限によって、記憶障害の改善につながる事があります。
なお、中枢神経系とは、脳や脊髄など神経細胞が集まっている領域のことを指します。

具体的には、鎮静薬、抗コリン薬は認知症を悪化させる傾向があるため、避けるべきと考えられています。
また、コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンは軽度、中度のアルツハイマー病や、レビー小体型認知症の方の認知機能改善に効果があると考えられています。

そのため、記憶障害の治療にも有用であると考えられていますが、効力は時間経過によって減弱していきます。
なお、軽度認知障害の方に対しては、ドネペジルを使用することで記憶力の一時的な改善が見られますが、有用性は高くありません。

家族の接し方

記憶障害の治療にとって、家族の接し方はとても重要です。
ここからは、記憶障害の方に対する家族の接し方について解説します。

環境を整える

記憶障害の方が生活しやすい環境を整える事が大切です。
具体例は以下の通りです。

  • 日常生活の行動をパターン化する
  • 重要な物やよく使うものの保管場所は決めておく
  • 必要なものは最小限に留め、見つけやすい配置にする

記憶障害の方の生活環境がシンプルなものになるように心がけることが重要です。
また、記憶障害の方が、記憶を思い出すための機会を増やすような環境づくりも大切です。
具体例は以下の通りです。

  • カレンダーやホワイトボードを使用し、日程や予定を確認しやすくする
  • 文字だけではなく絵、図、写真などを活用する
  • 収納棚には何が入っているのか分かるように表示しておく
  • アラームやタイマーを使い、すべきことに気づきやすい環境を作る
  • 困った時の相談先を決めて書いておく

ここまで紹介した対策法を、家族で相談、決定、共有し、記憶障害の方に対する対応を統一化することも大切です。

専門家に相談する

記憶障害の方に接する場合、本人の状況を受け入れ安心させることが大切です。
しかし、家族だけの対策では、記憶障害の方に適した対応を施すことができない場合もあると考えられます。
そういう時は専門家に相談し、アドバイスを受けることも大切です。

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記憶障害の薬物治療と副作用

記憶障害は、様々な原因で発生する可能性があり、その治療法も多岐にわたります。
特に、薬物治療はその一つであり、効果的な結果をもたらすことが期待されています。

しかし、薬物治療には副作用が伴う可能性もあり、その管理と対策が重要となります。
この章では、記憶障害の薬物治療とその副作用について詳しく解説します。

認知症の薬物療法

認知症の薬物療法には、コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル[アリセプト]など)とNMDA受容体拮抗薬(メマンチン[メマリー])があります。
これらの薬物は認知機能低下の抑制効果に加えて、「元気にする」作用や「穏やかにする」作用があるとされています。

また、これらの薬物の使用のタイミングは認知症の軽症のうちから、つまり早くに使うことが推奨されています。
しかもコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬との併用がよいとのことでした。

薬物治療の副作用とその対策

どの薬にも副作用がありますので、十分注意しなければなりませんが、必要量をきちんと使うことが重要だと強調されています。
認知症の症状には中核症状と周辺症状があり、それぞれに対する薬物治療が存在します。

しかし、その一方で、認知症の薬物治療は、今のためではなく将来のためにあるという視点を持つことが重要です。
また、認知症の薬が効くことに医師は自信を持つのがよいとされています。

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記憶障害の方のサポート体制

記憶障害の方のサポート体制を築く一家
現在は、記憶障害の方の社会復帰を目的としたサポート体制が築かれています。
主な取り組みを紹介します。

取り組みの背景

平成20年に東京都で行われた調査を参照します。
高次脳機能障害のうち、最も顕著な症状は記憶障害でした。

同じく、高次脳機能障害の方が社会復帰するうえで壁を感じやすいのも、職場での記憶に関する事柄です。

「高次脳機能障害者の作業遂行上の問題点」

出典:NIVR「記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介

たとえば仕事・作業の手順やルールが覚えられないというケースが代表的です。
記憶障害の方はたとえメモを取っても、メモを取ったこと自体を忘れてしまいます。

結果、メモを見返すことができず、注意を受けるケースが少なくありません。
その他、打ち合わせの日程を忘れるケースや、自分のロッカーの場所を覚えられないというケースもみられます。

高次脳機能障害の方がスムーズに社会復帰するには、特に記憶障害に対する支援が重要であることが分かります。

国内のサポート事例

記憶障害の方に対し、具体的にどのようなサポートが行われているのでしょうか?
日本国内の事例を2つご紹介します。

東京都リハビリテーション病院

東京都リハビリテーション病院では、以下のようなカリキュラムが行われました。

  1. 病態への意識づけ
  2. 注意力訓練1(無意味図形課題)
  3. 注意力訓練2(抹消課題)
  4. 1週間をふりかえって発表する
  5. お茶会の準備(5回目のみ)
  6. 服薬と金銭の管理

出典:NIVR「記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介

まず行われたのは、自身の記憶障害を意識づけることです。
その後、記憶障害があるという前提を踏まえたうえで、注意力を養う訓練を行います。

結果、自身の記憶障害に注意しながら、なるべく記憶を保つ姿勢が養われました。
たとえば金銭管理に関しては、預金通帳などを利用しながら記憶を補完できるようになりました。

熊本県の精神科病院

熊本県の精神科病院で行われた全10回のカリキュラムは以下の通りです。
カリキュラムは週に1回、各1時間30分程度で実施されました。

  1. 病態への意識づけ
  2. 注意訓練(抹消課題、無意味図形課 題)
  3. 単文記憶訓練
  4. 伝言訓練
  5. 1週間の出来事の報告訓練
  6. 家族参観(9回目のみ)
  7. 家族教室(10回目の訓練終了後)

出典:NIVR「記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介

最初のステップは、自身の記憶障害に対して自覚を促すことです。
その後、記憶障害があることを前提に記憶力・注意力を養う訓練を行います。

結果、日常生活において記憶力を補う方法を活用する姿勢が身につきました。
また、回復やリハビリに取り組む意欲の高まりもみられました。

オーストラリアのサポート事例

オーストラリアでは、医療機関を中心に、記憶障害に対する学習カリキュラムが提供されています。
今回は、Epworth Health Careで実施されている「MSG(Memory Skills Group)」というカリキュラムをご紹介します。

MSGは記憶に障害を抱えた方で行うグループディスカッションです。
各カリキュラムの内容は以下の通りです。

 

教育

ストラテジー1

ストラテジー2

生活習慣の課題

第1回

記憶の段階 

「繰り返し」と「関連付け」を使って名前 を覚える 

外的な記憶補助具 の紹介  

自宅/職場環境を 最適化する

第2回

記憶にとって重要 な脳の領域

言われたことを覚えるための道具の使い方 

道順を覚え、記憶 する方法

運動 

第3回

脳損傷が記憶に与 える影響 

言われたことを覚えるための道具の使 い方 

過去の出来事を思 い出すための方法や、道具の使い方 

栄養 

第4回

ストレスや気分が 記憶に与える影響  

コミュニケーションを向上させる 

電子機器(スマホ、iPad)の使い方

ストレスの管理  

第5回

記憶における睡眠 と休養の重要性 

「繰り返し」「関連付け」「精緻化を使 って名前を覚え、思い出す 

複雑なタスクの手 順を記憶するための方法や、道具の 使い方 

睡眠を改善し疲労 を管理するには 

第6回

第1~5回の復習

出典:NIVR「記憶障害に対する学習カリキュラムの紹介

最初に進行役が「教育」「ストラテジー」「生活習慣の課題」について解説を行い、その後グループディスカッションに移ります。

6回のカリキュラム終了後、受講者には記憶力の改善や物忘れの減少が見られました。
また、記憶補完のためにメモなどの代替手段を使う頻度も上昇しました。

一方、カリキュラム終了後から約6週間経過後は、記憶能力にやや低下がみられます。
代替手段の使用頻度も同様に減少しています。

カリキュラムの効果を長く保つには、カリキュラム終了後も何らかのフォローが必要であることが分かります。

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記憶障害に関するよくある質問|Q&A

記憶障害とは具体的に何を指しますか?

記憶障害は、新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を思い出したりする能力が損なわれる状態を指します。
これは一時的か永続的なもので、軽度から重度までの範囲があります。

記憶障害の一般的な原因は何ですか?

記憶障害の原因は多岐にわたり、脳損傷、神経変性疾患(例えばアルツハイマー病)、ストレス関連の疾患、栄養不足、アルコールや薬物の乱用などが含まれます。

記憶障害の兆候や症状は何ですか?

記憶障害の主な症状は短期記憶の問題で、新しい情報を覚えたり、以前の出来事や情報を思い出すのが困難になります。
他の症状には、自分が何をしていたのか、あるいは何をするべきかを忘れる、同じことを何度も繰り返す、日常のルーチンを達成するのに困難を感じるなどがあります。

記憶障害はどのように診断されますか?

記憶障害の診断は、主に医療専門家による詳しい医療評価に基づいています。
これには、物理的な検査、神経心理学的テスト(記憶、注意、問題解決スキルの評価)、そして時には脳のイメージングも含まれます。

記憶障害の治療法は何ですか?

記憶障害の治療法はその原因によります。
一部の症状は薬物療法により改善することが可能です。

また、特定の記憶技術の習得や、生活環境の調整などによるリハビリテーションも効果的です。
深刻な記憶障害の場合は、プロの医療チームが総合的なケア計画を立てることが一般的です。

記憶障害のまとめ

記憶障害についてまとめる高齢者ここまで記憶障害の症状、原因、治療方法などを中心にお伝えしてきました。
ここまで解説してきた内容をまとめると以下のようになります。

  • 記憶障害とは過去の体験の記憶が抜け落ちる、新しい情報を覚えることができない症状
  • 記憶障害の原因として、加齢、認知症、うつ病が挙げられる
  • 記憶障害の治療には、本人の生活環境を簡潔かつ明瞭にする事が大切

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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