妊娠中は食事や生活習慣など多くのことに気を付ける必要があります。
妊娠中はビタミンの摂取量にも気を使うことが大切です。
ビタミンAと妊娠にはどのような関係があるのでしょうか?
本記事はビタミンAと妊娠の関係について以下の点を中心にご紹介します。
- 妊娠中にビタミンAが及ぼす影響
- ビタミンAを多く含む食品
- 妊娠中に摂取しても問題ないビタミンAの量
ビタミンAと妊娠の関係について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読み下さい。
ビタミンAとは?
ビタミンには、水に溶けやすい水溶性ビタミンと油に溶けやすい脂溶性ビタミンがあります。
ビタミンAは脂溶性ビタミンの一種です。
ビタミンAは、皮膚や粘膜の状態を保つ機能や目の機能を正常に保つ役割を担っています。
また、植物に含まれるβカロテンは、体内でプロビタミンAというビタミンAに変換されます。
プロビタミンAもビタミンAの仲間に分類されます。
ビタミンAは、不足した場合も過剰摂取した場合も体に悪影響を及ぼす可能性があります。
妊娠中は胎児にも影響があるため、特に注意が必要な栄養素の1つとなっています。
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妊娠中はビタミンAに注意する理由
妊娠中にビタミンAの摂取に注意が必要な理由は、母子の体に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
母体に起こるリスクと胎児に起こるリスクをそれぞれ説明します。
母体に起こるリスク
ビタミンAを過剰摂取すると、体に下記のような症状が出現する可能性があります。
頭痛 | 脳脊髄液圧(のうせきずいえきあつ)の上昇 |
頭蓋内圧亢進症(ずがいないあつこうしんしょう) | 口唇炎 |
脱毛症 | 食欲不振 |
筋肉痛 | – |
ビタミンAの過剰摂取では、特に頭痛の症状が起きやすく特徴的な症状とされます。
一方、ビタミンAが不足すると「暗順応障害」が起こる可能性があります。
「暗順応障害」では明るい場所から暗い場所に移動した際、明るさに順応する機能に障害が出ます。
また、皮膚や粘膜が乾燥・角質化します。
角質化とは、皮膚の角質層が厚くなって硬くなるという意味です。
妊娠中は特に体調の変化には注意しなければいけません。
必要量のビタミンAを摂取しつつも、過剰摂取に注意しながら体調管理をする事が大切です。
胎児に起こるリスク
ビタミンAを過剰摂取すると、胎児の形態的な異常が増加すると言われています。
また、ビタミンAが不足した場合も、同様に形態的な異常が起きたり体の成長が止まったりする可能性があります。
特に内耳(耳の奥の方)の発達に悪影響があると言われています。
適正量のビタミンAを摂取することで難聴になるリスクを減らすことができます。
ビタミンAは胎児の
- 眼の健康維持
- 免疫機能のシステム
- 骨格の促進と維持
などに必要不可欠です。
妊娠中の母体や胎児どちらにも大切な栄養素なので、適正量を摂取することが重要です。
妊娠中摂取しても良いビタミンAの摂取上限
18歳以上の方のビタミンAの摂取上限は、2700(㎍RAE/日)です。
参考までに、にんじんの100g当たりのビタミンAの含有量は720㎍RAEです。
しかし、植物性食品にはビタミンA自体は含まれておらず、体内でビタミンAに変換されるカロテンが含まれています。
そしてこのうちのβ-カロテンは体内でビタミンAが不足している場合にのみ変換されます。
そのため、植物性食品を推奨量以上食べたとしても、必ずしもビタミンAの過剰摂取になるというわけではありません。
「推奨量」は年齢や妊娠時期によって違います。
各年齢と妊娠時期の推奨量をご紹介します。
妊娠初期
妊娠初期は、16週未満の時期を指します。
妊娠初期は年齢別の推奨量と同量のビタミンAを摂っても問題ありません。
年齢 | 推奨量(㎍RAE/日) | 妊娠初期 |
18~29(歳) | 650 | +0 |
30~49(歳) | 700 | +0 |
50~69(歳) | 700 | +0 |
出典:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』
にんじんの100g当たりのビタミンAの含有量は720㎍RAEです。
摂取上限量は超えませんが、毎日100g以上摂取すると推奨量は超えてしまいます。
妊娠中期
妊娠中期は16~28週未満の時期を指します。
妊娠中期の推奨量も初期と同様に年齢別の摂取推奨量と同じ量です。
年齢 | 推奨量(㎍RAE/日) | 妊娠中期 |
18~29(歳) | 650 | +0 |
30~49(歳) | 700 | +0 |
50~69(歳) | 700 | +0 |
出典:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』
妊娠初期と中期では、ビタミンAの推奨量に違いはありません。
妊娠後期
28週以降の時期が妊娠後期に当たります。
妊娠後期では、胎児の各臓器が完成に近づいていく時期です。
胎児が成長する上でも大事な時期でもあります。
この時期では、ビタミンAの推奨量は年齢別の推奨量よりも少し多くなります。
年齢 | 推奨量(㎍RAE/日) | 妊娠後期 |
18~29(歳) | 650 | +80 |
30~49(歳) | 700 | +80 |
50~69(歳) | 700 | +80 |
出典:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』
18~29歳であれば730㎍RAE/日、30歳以上なら780㎍RAE/日となります。
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ビタミンAを多く含む食品
ビタミンAは鶏肉などの動物性食品とニンジンなどの植物性食品に含まれています。
ビタミンAがどれほど含まれているか知ることで、栄養バランスを考えることができます。
日常的に食べる機会の多い動物性食品と植物性食品のビタミンAの含有量についてご紹介します。
ビタミンAを含む動物性食品
動物性食品でビタミンAを多く含む食品は下記の表の通りです。
※食品100g当たりのビタミンAの含有量 単位:μgRAE(レチノール活性当量)
食品名 | μgRAE/100g |
鶏肉(レバー) | 14000 |
豚肉(レバー) | 13000 |
うなぎ(かば焼) | 1500 |
牛肉(レバー) | 1100 |
鶏肉(ハツ) | 700 |
たまご(卵黄) | 480 |
いくら | 330 |
ほんまぐろ/脂身 | 270 |
いかの塩辛 | 200 |
しゃこ | 180 |
出典:内閣府食品安全委員会『ファクトシート』
レバーにはビタミンAが多く含まれており、妊娠中は食べるのは控えるのが良いでしょう。
この表を見ると肉類に多く含んでいるような印象を持つかもしれません。
しかし、鶏肉の手羽は59μgRAEであり豚肉のバラは10μgRAEとなっています。
部位によってビタミンAの含有量は違います。
普段の食事では部位を選びながらメニューを考えることも大切です。
ビタミンAを含む植物性食品
植物性食品でビタミンAを多く含む食品は下記の表の通りです。単位:μgRAE(レチノール活性当量)
食品名 | μgRAE/100g |
にんじん | 720 |
バジル | 520 |
ほうれん草(ゆで) | 450 |
しゅんぎく(ゆで) | 440 |
かぼちゃ(西洋) | 330 |
ニラ(生) | 290 |
つるむらさき | 250 |
チンゲン菜(ゆで) | 220 |
こねぎ | 190 |
サニーレタス | 170 |
出典:内閣府食品安全委員会『ファクトシート』
動物性食品と比べると全体的にビタミンAの含有量は少なくなっています。
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妊娠中にビタミンA配合の化粧品は大丈夫?
化粧品には「ビタミンA配合」の化粧品が多くあります。
妊娠中は、食べ物以外にも化粧品などに含まれるビタミンAにも気をつけた方がいいのでしょうか?
結論、化粧品に含まれるビタミンAについては特に気にする必要はありません。
なぜなら、化粧品として皮膚に塗布しても体内に取り込まれる量は微量だからです。
皮膚は本来、外気から身を守るバリア機能の役割があります。
つまり、たくさんのビタミンAを配合した化粧品を塗布したとしても、皮膚が体内に入り込むのを防ぐため、体内に大きな影響を与えることはありません。
妊娠中に使用している化粧品がビタミンA配合の物であっても、新しい化粧品に交換する必要はありません。
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妊娠中のビタミンAについてのまとめ
今回は妊娠中のビタミンAについてご紹介しました。
妊娠中のビタミンAについての要点を以下にまとめます。
- ビタミンAを過剰摂取・不足すると胎児に形態的な異常が生じることがある
- ビタミンAを多く含む食品にレバーやうなぎ、にんじんなどがある
- 推奨量は年齢でも違いがあり、妊娠後期は少し多くなる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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