動作はナビゲーションシステム

大堀 具視
大堀 具視作業療法士 / 株式会社Start movement代表

 

楽しいドライブ、最近は自家用車に標準装備されていることも珍しくないナビゲーションシステム(以下、ナビ)をセットします。あとはナビから発せられる声の主にお任せしておけば迷わずに目的地へ導かれます。
一方、日常生活で私たちは、家の中で迷うなんてことはもちろんありませんし、行き慣れた場所であれば、少し遠出であっても地図を見ることなくたどり着けます。おそらく私たちの脳にも、ナビのようなシステムが働いているのでしょう。

さて、ナビの声にお任せして鼻唄混じりに快適に運転していたところ、あれ?これは目的地に向かっていないぞ、という経験をした人も多いのではないかと思います。
モニターの地図上では、道なき道の上に自分の車が存在していて驚かされることもあります。
なぜそのようなことが起こるのか、その原因はナビが認識する現在地のズレだと言われています。現在地のズレによって思わぬ場所に導かれる、しかもナビを信用しているので、いよいよ景色が怪しくなってきて初めて気づき不安になります。

認知症の方が道に迷って家に戻れなくなった、というエピソードはよく耳にされると思います。ときには、家のトイレの場所がわからなくなるということさえあります。それは脳のナビがうまく働いてくれていないと理解してみるとどうでしょうか。
スタート地点で、あるいは立ち寄った要所要所の現在地で、“自分がどの場所にいて体はどちらを向いているのか”(見当識と言います)、それがもしうまく認識できていなかったとしたら…。
本人は自分のナビにしたがい、自信満々に歩みを進めて行きますから、気づいたときにはとんでもない場所に来てしまったと、不安や混乱に突然襲われるとしても不思議ではないように思います。

道に迷わないために目的地までのルートを入念にしっかりと確認する、屋内の場合は何か目印をつけるなどという対策を目にします。もちろん、それはそれで有効な場合もあるでしょう。
しかし、そもそも自分の体の位置や向きをしっかりと知覚していなかったとしたら、ルートの確認や目印は根本的な解決にはなりません。

私たちが、いつでも不安なく速やかに動けるのは、常に自分の体の現在地、体の向きや手足の位置を無意識に知覚しているからです。そのような体の知覚は、大層なものではなく、自らのちょっとした体の動きによって得られるものです。
それは生活に安心をもたらし、安心するから、動く動機につながるのです。多くの動作に介助が必要であったとしても、ベッドの上でモゾモゾと動かれる、それは自分の現在地を失わないためにも大切なものと理解していただけると良いと思います。

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筆者プロフィール

その他
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
その他
北海道出身。株式会社Start movement代表、作業療法士。著書に「お互いが歩み寄る介護実践45のヒント」「利用者の"動き出し"を引き出すコミュニケーション」などがある。
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大堀 具視
大堀 具視
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
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