交信不通は不安です

大堀 具視
大堀 具視作業療法士 / 株式会社Start movement代表

 

街で外国人に声をかけられたら、よほど語学が堪能でない限りちょっと不安で緊張するという人は多いと思います。言っている意味がわからないかも知れない、うまく返答できなかったらどうしよう。
実際に話しかけられていないにもかかわらず、外国人がそばにいるだけで勝手にいたたまれなくなってしまったという経験はないでしょうか。
一方で親しい友人や家族との間では、言葉を交わさずとも不安なくその場を共有し続けられます。それは、必要とあらば言葉による交信が可能というだけではなく、言葉はなくても他者との交信は可能であることを証明しています。

脳卒中の後遺症による言語障害や認知症などによって、言葉でうまく自分の意思を表現することができない場合があります。
他者と交信不通、しかも体の不自由もあって、その場から逃げ出すことすら許されないとしたら、不安や苦痛は外国人に話しかけられるどころではないと想像できます。
また、交信不通の状態は周波数の合わないラジオのごとく、相手の言葉や体に触れるやさしいタッチも、ノイズとしてしか受け止められなくなってしまう可能性すらあると思います。
そのような一方的なコミュニケーションの状態は、ますますその人の言葉や動きを抑え込んでしまうのです。

言語障害のある人や認知症の人が、強ばった表情や、困り顔をされているという印象があります。それは、呆けた顔でも何でもありません、もし、他者との交信を感じられていないのであれば、誰だってそういう顔になってしまうはずです。
そのような方とのコミュニケーションで大切なのは、言葉を何とか引き出そうとするのではなく、話したいことがある、話したい気持ちがあることは伝わっていると認めて差し上げる態度です。
つまり、あなたは決して交信不能な人ではありませんと安心していただくのです。

そのために、〇〇しませんか?〇〇はいかがですか?など、投げかけるコミュニケーションが大切です。なぜなら、。それは、あなたは交信可能ですよと暗に伝えられるからです。
もし、言葉での返答がうまくできなかったとしても、投げかけた者は返答を期待しているわけですから、表情の変化や何か言葉にしようとする変化を受け止めることができます。
それが、話したいことがある、話したい気持ちがあることは伝わっていると認めて差し上げる態度となって現れるはずです。強ばった顔や困り顔は、決して呆けた顔ではないと分かるでしょう。

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筆者プロフィール

その他
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
その他
北海道出身。株式会社Start movement代表、作業療法士。著書に「お互いが歩み寄る介護実践45のヒント」「利用者の"動き出し"を引き出すコミュニケーション」などがある。
WRITTEN BY
大堀 具視
大堀 具視
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
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