ジェットコースターと介護

大堀 具視
大堀 具視作業療法士 / 株式会社Start movement代表

 

さあ、次はジェットコースターに乗ろう。遊園地で一番人気のアトラクションは、いつも行列ができています。そこに並んでいると、「ちょっと待って、やっぱりやめておくかな」と直前で行列から外れる人、すでに行列の外で「いってらっしゃい」と見送る人など、ジェットコースターに乗るのが苦手な人が多いことを印象づける光景です。

 

「絶叫系」などとスリルをあおる評判はあるにせよ、安全は保証されています。誰しも、危険な乗り物ではないと分かっているはずです。でも苦手な人にとっては、恐ろしい乗り物なのです。

 

これって、少し介護に似ている話のように思います。介護も介助者が教育を受けた技術というレールに乗っかり、しっかりと体を支えることによって、利用者の安全を保証しながら実施されます。しかし、介助中に恐ろしさを訴えられる方や、恐ろしくて介助者に対して抵抗される方もおられます。

また、ちょうど「やっぱりやめておくかな」とジェットコースターの順番待ちの列から外れるのと同じように、介助者が近づくだけで「ちょっと待って」と、言葉や身振り手振りで介助を拒む 意思を示される場合もあります。

 

安全が保証されているジェットコースターや介護、それを恐ろしく感じられるのはどうしてなのでしょうか。それは、自分以外の物や人に身を委ねることへの不安や恐ろしさです。私たちは自分の意思で行動のブレーキを踏んだり、ハンドルを切って方向や方針を変えられるとわかっているから安心して生活を送れます。

しかし、ジェットコースターに乗り込んでしまったら、そこにはブレーキもハンドルもありません。介護も同じです、どんなに信頼関係のある人に介助されていても、完全に身を委ねてしまってはブレーキもハンドルも手離してしまうのと同様なのです。

 

スリルと引き換えにブレーキ付きのジェットコースターが開発されたら、きっと乗る人はいなくなってしまうでしょう。でも、介護にスリルは必要ありませんから、本当の意味で利用者の安全を保証するには、利用者自身がアクセルとブレーキの加減をし、ハンドルを切れる状況にあることが大切です。

 

どの道をどれくらいのスピードで走行するのか、それを本人に任せるつもりで介助すると良いのです。同じジェットコースターに乗り、かたや両手万歳、隣では目を固く閉じ、歯を食いしばり絶叫なんてことがあるように、本人が感じるものは本人にしか分かりません。

 

だからこそ、どうぞ好きに動いて下さいという姿勢が介護者に求められます。

 

 

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筆者プロフィール

その他
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
その他
北海道出身。株式会社Start movement代表、作業療法士。著書に「お互いが歩み寄る介護実践45のヒント」「利用者の"動き出し"を引き出すコミュニケーション」などがある。
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大堀 具視
大堀 具視
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
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