自分の体を上書き保存

大堀 具視
大堀 具視作業療法士 / 株式会社Start movement代表

 

昨年度は夏期、冬季オリンピックで各国アスリートの皆さんの鍛えられたパワーやスピード、磨きあげられたテクニックを堪能させていただきました。中でも体操やスノーボードの選手が当たり前のように離れ技を繰り出す様子を見るにつけ、どう考えても常人には不可能のように感じるものでした。

 

しかし、アスリート達も元を辿れば皆常人だったわけで、一般の人があのようなテクニックを獲得する必要はもちろんありませんが、何かの動作を当たり前のように行うためのヒントはたくさんあるはずです。

 

スノーボードの平野歩夢選手が「トリプルコーク1440」という技を成功させて金メダルに輝きましたが、競技前のコメント「ここに来る前からずっと異常なくらい1人で練習していた」という言葉が印象的です。“異常なくらい”“一人で”練習した結果の技なのですが、その過程には何があるのでしょうか。

 

赤ちゃんがつかまり立ちから歩けるようなった瞬間から、その体は歩ける体として上書きされ生涯の動作となります。階段を登る、走る、スキップするなど高い次元の体が次々と上書きされていきます。
平野選手の技はこのことの延長線上にあると言えます。あの技を獲得するためには少しずつ、少しずつ体を上書きしなければなりません、だから“異常なくらい”“一人で”練習が必要だったのです。

 

大人になれば、高い次元の体が上書きされることはなくなっていきます。その代わり、衰えた体でも毎日の動作を何とか行なっていくことをとおして、毎日の動作に適応すべく体は上書きされます。上書きの繰り返し、それがアスリートにとっての技の習得ですし、高齢者にとっての変わらぬ日常、つまり介護予防です。

 

平野選手のような世界的なアスリートでさえ、毎日練習しなければその技は維持されません。高齢者がたったの数日寝込むだけで、多くの動作が困難になるのと同じことです。体が上書きされず、古いバージョンのままのイメージで動作をしようとするから上手く動けなくなるのです。

 

ある作家の方が、何も原稿の依頼がないときでも毎日原稿用紙10枚(詳細忘れました)は書く、何故なら“毎日書いていないと書けなくなるから”と言っていました。介護予防も同じです。毎日当たり前の生活を繰り返していないと動けなくなってしまうかも、と気づけることが大切です。
しかし、気づける体とは、やはり毎日少しでも動いて体が常に最新に上書き保存されている体のことなのです。介護予防のヒントになれば幸いです。

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筆者プロフィール

その他
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
その他
北海道出身。株式会社Start movement代表、作業療法士。著書に「お互いが歩み寄る介護実践45のヒント」「利用者の"動き出し"を引き出すコミュニケーション」などがある。
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大堀 具視
大堀 具視
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
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