【老人性うつ】認知症との違いや治療方法について徹底解説!

高齢の方に原因不明の体調不良や意欲の低下がみられる場合、老人性うつが疑われます。

老人性うつには、どのような特徴があるのでしょうか。
また、老人性うつが疑われる場合、何科を受診すればよいのでしょうか。

本記事では、老人性うつについて、以下の点を中心にご紹介します。

  • 老人性うつの特徴
  • 老人性うつの原因
  • 老人性うつは何科を受診すべきか
  • 老人性うつを予防するには

老人性うつについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までご覧ください。

目次

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老人性うつとは

老人性うつとは、65歳以上の方がかかるうつ病です。
正式な病名ではありませんが、若年者のうつ病と区別するために、老人性うつと呼ばれています。

うつ病は、気分障害の1種です。
原因の1つとして、脳の働きの悪化が指摘されています。

具体的には、脳の神経伝達物質の異常が原因です。
神経伝達物質とは、脳の指令を各器官に伝える物質です。

神経伝達物質に異常が起こると、脳の指令が正確に行き渡らなくなるため、心身にさまざまな不調があらわれやすくなります。

うつ病の症状で代表的なものは、以下などがあります。

  • 憂鬱
  • 意欲の低下
  • 頭痛

つまりうつ病とは、心の病気ではなく、脳の病気です。

出典:厚生労働省【うつ病|こころの病気を知る

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老人性うつの特徴

老人性うつ病は、65歳以下の若年者のうつ病と、若干異なる点があります。
両者で異なるのは、うつ病に至る過程です。

若年者のうつ病は、多くの場合、

  • 対人関係
  • 仕事によるストレス
  • 経済的困窮

などを原因とします。

一方、老人性うつは、生きがいをなくすことで発症するケースが目立ちます。
あるいは、老後への漠然とした不安感などに起因することもあります。

具体的なケースを紹介していきます。

仕事からの引退

退職を機に老人性うつを発症するケースは、少なくありません。退職すると、それまで長年続けてきた生活リズムが大きく変化します。

たとえば、朝は決まった時間に起床し、朝食を食べ、電車に乗って通勤する…などのリズムが崩れやすくなります。

いわば、やるべきことが分からなくなるのです。
結果、自分が何のために存在しているのか分からなくなってしまい、孤独感や孤立感を味わうようになります。

子供の独立

子供の独立も、老人性うつのキッカケになりやすいです。
特に、女性に目立ちます。
たとえば、子供が就職して、遠方に引っ越したとしましょう。
すると、今まで子供の世話に費やしていた時間が宙に浮いてしまいます。

空いた時間をうまく活用できず、ただボンヤリ過ごすというケースは少なくありません。
これからなにを楽しみに生きていけばよいか分からなくなり、孤独感や不安感にさいなまれやすくなるのです。

病気や健康状態の悪化

病気・ケガも老人性うつの代表的な原因です。

たとえば、足を骨折したとします。
年を重ねるほど骨折の治りは遅くなります。
治療が長引けば、そのぶん「もう歩けないかもしれない」などの不安に襲われやすくなります。

結果、自分の健康状態や未来に悲観的になり、うつ状態に至ることがあります。

身近な人との死別

身近な人との死別は、うつ病発症のキッカケになりやすいです。
代表的なのは、パートナーとの死別です。

長年連れ添ったパートナーを失うと、生きる意欲が低下しやすくなります。
すると何事にも興味が持てなくなり、うつ状態に陥ることがあります。

高齢離婚

近年は、高齢者同士の離婚が増えています。
結果、どちらかが老人性うつを発症するケースは少なくありません。

うつ病リスクが高いのは夫の方です。
なぜ離婚されたのかが分からず、孤独感や焦り、絶望感に襲われやすくなるのです。

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老人性うつの原因とは

老人性うつの原因は、大きく分けて以下の2種類に分けられます。

  • 環境的要因
  • 心理的要因

両方の要因が重なって老人性うつを発症するケースも少なくありません。

それぞれの内容をご紹介します。

環境的要因

老人性うつの環境的要因な原因は、以下の通りです。

  • 定年退職
  • 子供の独立
  • 引っ越し
  • 親戚・友人などの親しい人と会う機会が減った

たとえば、遠方に引っ越したとしましょう。
今まで頼りにしてきた近所の方との付き合いが途絶えるため、不安・さみしさを感じやすくなります。

引っ越し先や新しい職場では、人間関係を新しく作らなければなりません。
人付き合いが苦手な方であれば、一から始める人間関係に大きな不安を抱くものです。

また、慣れない土地では買い物・通院に苦労することもあります。

  • 別離
  • 人間関係のストレス
  • 不安

といったさまざまな要因が重なると、老人性うつのリスクが高まります。

心理的要因

老人性うつの心理的要因には、以下があります。

  • 長年飼っていたペットが亡くなった
  • パートナーとの死別・離婚
  • 病気・ケガ
  • パートナーの介護
  • 近所・対人関係のトラブル

たとえば、パートナーが認知症になり、介護が始まったとします。
介護は、身体的な負担が大きく、腰痛・肩こりなどの原因となります。

身体面だけでなく、精神的な負担もとても大きくなります。
たとえば、認知症が進行すると、パートナーが暴力や暴言を吐くことがあります。

あるいは、自分を他人と誤解するケースも少なくありません。
変わっていくパートナーを見守るのは、精神的に辛いものがあります。

さらに介護をしている方は社会的に孤立しやすい傾向があります。
介護の悩み・不安を「家庭の問題」として捉え、他人に話すのを恥ずかしいと感じるためです。

結果、「相談したいけれど、相談する相手がいない」という孤独を抱えやすくなります。
たとえ「誰かに相談しよう」と決意したとしても、介護のために、相談する時間を作れないこともあります。

身体的・精神的なストレスが積み重なると、介護者はやがて限界を迎えます。
結果として、老人性うつを発症するケースは少なくありません。

根本的要因

老人性うつの根本的要因な原因は、

  • 定年退職
  • パートナーとの死別

などさまざまです。
しかし、退職や死別はあくまでキッカケに過ぎません。

うつ病を発症する原因は、心の奥深い場所に眠っていることが多いです。
具体的には、ネガティブな感情の記憶がうつ病の根本的な原因となります。

たとえば、過去にいじめを受けたとしましょう。
いじめを受けたときに感じたネガティブな感情は、記憶の奥底に刻まれます。

すると年を重ねて似たような体験をしたときに、ネガティブな記憶がよみがえることがあります。

似たような体験とは、たとえば「近所の方が自分の悪口を言っていた」などがあります。
たとえ、長い間いじめのことを忘れていたとしても、ささいな悪口をキッカケに、悲しい記憶が一気によみがえることはよくあります。

結果、心や脳が大きなダメージを受けてしまい、老人性うつに至ることがあるのです。

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老人性うつと認知症の違いについて

老人性うつの症状は、認知症の症状とよく似ています。
そのため、認知症と間違われることは少なくありません。

認知症とは、認知機能が著しく低下した状態です。
代表的な症状として、記憶障害が挙げられます。

一方、老人性うつでも記憶障害・物忘れなどの症状が生じる可能性があります。
しかし、認知症と老人性うつでは、記憶障害の性質が若干異なります。

認知症の記憶障害は、軽微なものから始まり、徐々に進行していきます。
また、つい数分前の出来事を忘れたり、忘れたことを忘れたりする点も特徴です。

たとえば、夕食後に、食事したことを忘れて「お腹がすいた」というケースがみられます。
たとえ家族に「いま食べたでしょ」といわれても、食事したという事実を思い出せません。

忘れたこと自体を忘れるため、自身の記憶障害を自覚したり、不安に思ったりすることも少ないです。

老人性うつによる記憶障害は、なにかをきっかけに突然発症する場合がほとんどです。
きっかけになりやすいのは、

  • 定年退職
  • パートナーとの死別

など、環境が大きく変化するような出来事です。

老人性うつによる記憶障害は、多くの場合、進行はしません。
失われる記憶は、数日前の出来事などのような、すこし過去の記憶であることが多いです。

また、老人性うつの場合、記憶障害の自覚はあることが多いです。
自覚があるぶん、記憶がないことに不安を抱くケースも少なくありません。

認知症と老人性うつは、あらわれる症状はよく似ているものの、若干性質が異なります。
ただし、なかには見分けがつきにくい症状もあります。

たとえば、以下のような症状は、認知症・老人性うつの見分けが難しいです。

  • 思考力の低下
  • 注意力の低下
  • 憂鬱
  • 頭痛
  • 疲れやすい
  • 食欲不振

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高齢者の認知機能検査

75歳以上の方が運転免許証の更新をする際には、必ず認知機能検査を受けなければなりません。

認知機能検査とは、記憶力や判断力を判定するための検査です。公安委員会や教習所で受験でき、検査時間は30分程度です。

認知機能検査の内容には、以下があります。

時間の見当識:検査時の日付・曜日・時間を答える
手がかり再生:イラストを記憶し、そのイラストに関する問題を説く
時計描写:時計の文字盤を書き、指定された時間通りに針を描く

認知機能検査の結果は以下の3段階であらわされます。

  • 記憶力・判断力が低くなっている(認知症のおそれがある)
  • 記憶力・判断力が少し低くなっている(認知機能の低下のおそれがある)
  • 記憶力・判断力に心配がない(認知機能の低下のおそれがない)

認知症のおそれがあると判断された場合、医師の診断を受けます。
医師によって認知症と診断されると、運転免許証は取り消し・停止となります。

出典:警察庁【認知機能検査について

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老人性うつの診断基準

うつ病の診断基準をご紹介します。
以下に当てはまる場合、うつ病の可能性が高いです。

  • 症状が最初にあらわれた時期・キッカケが特定できる
  • 症状は徐々に進行したのではなく、短期間に突然あらわれた
  • 「自分のせいで周囲に迷惑をかけている」という自責の念がある
  • 自身が不調だという自覚がある
  • 数日前の出来事を思い出せず、思い出せないことを不安に感じている
  • なにか質問をされると、熟考するものの、答えられないことが多い

上記の症状は、若い方のうつ病であらわれることもあります。

老人性うつの症状

老人性うつの症状の例をご紹介します。

  • 何をしても気分が晴れない
  • 趣味・好きなことに興味を示さなくなった
  • 疲れやすい・全身がだるい
  • 体重の増加・減少
  • 食欲不振
  • わがまま
  • 暴力・暴言
  • 幻覚・幻聴・妄想・被害妄想
  • 頭痛
  • 立ちくらみ
  • 肩こり
  • 吐き気・食欲不振
  • 感情の浮き沈みが激しい
  • 記憶力・意欲の低下
  • 朝、ベッドから起きられない
  • 夜、寝付けない

上記の症状は、老人性うつに限らず、若年者のうつ病でもあらわれます。

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老人性うつの家庭環境について

老人性うつは、家庭環境によって経過などが異なることがあります。

  • 同居する家族がいる場合
  • 一人暮らしの場合

に、分けて老人性うつの特徴をご紹介します。

同居する家族がいる場合

老人性うつは、短期間に複数の症状が次々あらわれることが多いです。
つまり急激に発症しやすいため、周囲が本人の変化に気づきやすいのです。

特に、変化に気づきやすいのは、身近にいる家族です。
もし本人に急激な変化がある場合は、老人性うつを疑い、病院を受診させましょう。

老人性うつは、治療が可能です。
うつ病の治療に特に重要なのは、周囲の環境作りです。

たとえば積極的に声をかけたり、外に連れ出したりして、本人が孤立しないような環境作りを工夫しましょう。

一人暮らしの場合

一人暮らしの方は、同居家族がいる方に比べて、老人性うつが悪化しやすい傾向があります。

本人に変化があっても、周囲が気づきにくいためです。
病院の受診が遅れやすいため、その間にうつ病が重くなることがあります。

一人暮らしの方が老人性うつを予防・改善するには、自ら積極的に社会と関わりを持つことが大切です。

親しい交流相手を作っておくことで、万が一、自分に異変が起きても、周囲が気づいてくれる可能性が高くなります。

社会交流とは、たとえばご近所付き合いや地域の老人会への参加などが代表的です。
趣味を持ったり、散歩したりして、外出の機会を増やすのもうつ病予防に効果的です。

もっともよくないことは、家に1人で閉じこもることです。
孤立すると、自身に異変が起きたとき、誰も気づけなくなるためです。

うつ病の予防・早期発見のためにも、一人暮らしの方は、自ら外に出て行く機会を増やしましょう。
家族の方も、本人をなるべく孤立させないように配慮してください。
できるだけ顔を見せにいくなどして、本人がさびしくないような環境を整えましょう。

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老人性うつで病院を受診する場合

老人性うつは、治療できます。
治療は、可能であれば医師の指導の下で行いましょう。

セルフケアでは、限界があるためです。
老人性うつの病院の受診の仕方などを解説します。

何科を受診するのか

老人性うつの診療科は、

  • 精神科
  • 心療内科

が適当です。
いきなり精神科・診療科に行くのに抵抗がある場合は、かかりつけ医に相談するのも1つの方法です。

どのように判断するのか

病院では、医師による問診や、チェックシートを使ったテストを受けることが一般的です。
いずれも、うつ病の症状の有無・程度を調べるための方法です。

うつ病の症状がある場合は、うつ病の可能性が高いと判断されます。
なお、うつ症状は、うつ病以外の病気であらわれる場合もあります。

たとえば、以下の病気が代表的です。

  • 認知症
  • 脳梗塞
  • 心疾患
  • 内分泌系の疾患

不調の原因がうつ病であると断定するには、うつ病以外の疾患がないことを確かめる必要があります。

そのため、うつ病の診断の際には、CT・MRI検査や血液検査を受けることが多いです。
検査で身体的な異常がみつからなければ、うつ病と診断されます。

治療期間について

うつ病の治療期間は、個人差が大きいです。
数ヶ月で治る場合もあれば、数年治療しても改善がみられない場合もあります。

うつ病は「いつまでに治る」と思い込むのは危険です。
治療期間を決めてしまうと、「早く治さなければ」という焦りが生まれやすいためです。

自身にプレッシャーをかけることになるため、かえってうつ病が悪化しやすくなります。
よけいなストレスを減らすためにも、治療には気長に取り組むことが大切です。

うつ病の治療では、薬物療法が選択されることが一般的です。
代表的な治療薬は、抗うつ剤などです。

効果が出るまでに4~6週間ほどかかるため、処方された薬は、必ず飲みきりましょう。
自己判断で服用を中止したり、量を減らしたりすると、薬の効果が出ない場合があります。

なお、正しく服用したとしても、十分な効果が得られないこともあります。
たとえば、体質に合わないなどのケースが代表的です。

薬の適性を見極めるためにも、うつ病の治療中は定期的に医師の診察を受けましょう。
通院の頻度は、個人によって異なりますが、1〜2週に1回程度が目安です。

もし、主治医と相性が合わなかったり、信頼できないと感じたりする場合は、別の医師の診察を受けてもかまいません。

病院を嫌がる場合

老人性うつの方が、病院の受診を嫌がるケースがあります。
嫌がる方を無理矢理病院に連れて行くと、信頼関係が壊れる可能性があります。
良好な関係を維持するためにも、嫌がる本人を無理に病院に連れて行くのはやめましょう。

病院の受診を拒む理由として、恐怖心が挙げられます。
「いつもの自分ではない」ということを受け入れるのがこわいのです。
あるいは、強制的な入院や、薬によって自分が変わってしまうことを恐れているケースもあります。

本人を納得させて病院に連れて行くには、「こわくない」と伝えることが大切です。
無理に入院させたり、薬を飲ませたりすることはないと伝えましょう。

また、「あなたの様子がおかしいから病院にいこう」という伝え方はNGです。
本人の自尊心を傷つけてしまい、結果、ますます病院を拒否される可能性があります。

おすすめなのは、「(私が)心配しているから、病院を受診しよう」のような言い方です。
「あなたを心配している」という心情を伝えることで、スムーズな受診につなげやすくなります。

家族が説得できない場合は、第三者の力を借りるのも1つの方法です。
たとえば、本人が信頼している相手に、説得を依頼してみましょう。

あるいは、かかりつけ医を頼るのも1つの方法です。
まずは、家族がかかりつけ医に本人の状況を伝えましょう。

かかりつけ医から直接「早めに受診したほうがいい」と促されると、本人は納得して病院を受診することがあります。

かかりつけ医がいない場合は、最寄りの病院などに電話で相談してみましょう。
病院によっては、電話口で医師・看護師が本人を説得してくれる場合もあります。

うつ病は、放置すると悪化することが多いです。
悪化を防ぐためにも、なるべく早めに病院を受診するのがおすすめです。

本人が病院を嫌がる場合は、進んでいきたくなるような工夫を考えてみましょう。

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老人性うつの専門医

老人性うつの専門医は、日本老年精神医学会専門医と呼ばれます。
日本老年精神医学会専門医とは、日本老年精神医学会によって認定を受けた医師です。

日本老年精神医学会専門医は、主に老年精神科に在籍します。
老人性うつの専門的な治療を希望する場合は、老年精神科がある病院を探すのもよいでしょう。

ただし、老年精神科は通常の精神科などに比べると数が少ないです。
もし近くに老年精神科がある病院がなければ、ひとまず身近な精神科・心療内科を受診しましょう。

老人性うつで入院が必要な場合

老人性うつ病では、入院が必要となるケースがあります。
入院が必要なのは、緊急性が高いケースです。

たとえば、自殺願望が強い場合などが該当します。
目を離すと自殺する可能性が高い場合、入院して24時間体制のケアを受ける必要があります。

あるいは、

  • 症状・衰弱が激しい場合
  • 外来治療で思うような効果が得られない方

なども入院が検討されます。

うつ病による入院は、「任意入院」が望ましいです。
任意入院とは、本人が納得・同意した上で入院することです。

本人が入院を拒否し、かつ緊急での入院が必要な場合、「医療保護入院」が選択されます。
医療保護入院とは、本人に代わって家族などが入院に同意することです。

家族・身内がいない場合は、市町村長の同意で入院させることもあります。

出典:厚生労働省【精神科の入院制度について|治療や生活へのサポート

入院費用

うつ病の入院費用は、

  • 入院期間
  • 治療の内容
  • 部屋タイプ

などによって大きく異なります。
ちなみに、1ヶ月の入院費用は総額10〜40万円が平均的です。

入院費用の主な内訳は、以下の通りです。

  • 食事代
  • 医療費
  • 部屋代(差額ベッド代)

その他、病院によってはクリーニング代や冷蔵庫使用料などがかかる場合もあります。

入院費用を大きく左右するのが部屋代です。
4人部屋が1日800円程度であるのに対し、個室の利用料金は1日3000〜5000円ほどです。

簡単にいえば、部屋のグレードが高いほど、入院費用も高額になります。
なお、入院費用の約40万円とは、公的保険適用前の金額です。

公的保険に加入している場合、実際の支払金額は自己負担割合に応じて異なります。
たとえば、自己負担割合3割の方の場合、支払金額は「約40万円÷3割=約13万円」です。

入院費用の負担を軽くしたい場合は、

  • 高額療養費支給制度
  • 委任支払制度

の利用を検討しましょう。

高額療養費支給制度・委任支払制度は、原則として長期入院を対象とした制度です。
1ヶ月あたりの医療費の自己負担額が大きくなった場合、一定額を超える金額が払い戻されます。

ただし、差額ベッド代や先進医療費は給付対象外です。
また、自己負担限度額は、年齢・収入によって異なります。

高額療養費支給制度を利用する際には、「限度額適用認定証」の提示が求められます。
入院前に加入保険団体に申請しておきましょう。

入院ではなく通院で治療を受ける場合は、自立医療支援を検討してください。
自立医療支援は、通院治療を受ける方を対象に医療費の支給を行う制度です。

具体的には、1ヶ月あたりの医療費の限度額を超える金額が給付されます。
退院後に通院で老人性うつの治療を受ける場合、利用を検討するのもよいでしょう。

自立医療支援は、収入が一定額を超える方は利用できません。
利用できる医療機関が限定されていることや、有効期限がある点にも留意してください。

老人性うつの治療を受ける場合、さまざまな医療費制度を活用できます。
ただし、利用できる医療費制度などは、個人の年齢・収入によって異なります。

実際にかかる入院費用も個人差が大きいため、一概に「いくら」とはいえません。
詳しい金額を知りたい場合は、まず入院を希望している病院に相談するのがおすすめです。

出典:厚生労働省【心の病気への支援や助成など

入院期間

うつ病による入院期間は、個人差があるものの、3ヶ月〜半年程度が目安です。
平成29年の厚生労働省の調査によると、うつ病による入院日数は平均113.9日でした。

退院目安は、症状がある程度回復した段階です。
退院後は、通院治療に切り替えることが一般的です。

出典:厚生労働省【– 11 – 3 退院患者の平均在院日数等

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老人性うつで使う薬の種類は?

老人性うつの治療では、薬物療法が選択されることが一般的です。
代表的な薬剤は、以下の通りです。

  • 抗うつ剤
  • 非安定型抗精神病薬
  • 抗不安薬
  • 気分安定薬
  • 睡眠導入薬

高齢者が上記の薬品を利用する場合、量や服用方法に注意する必要があります。
副作用などのおそれがあるためです。

副作用として代表的なのは、

  • 腎臓
  • 肝臓
  • 心臓

の障害です。
認知症を誘発する恐れも指摘されています。

認知症のリスクは、処方薬の数に比例します。
つまり、複数のうつ病治療薬を併用している方は、認知症になりやすいのです。

また、睡眠導入薬は、依存性が指摘されています。
依存性とは、睡眠導入薬がなければ安心できなくなることです。

無理に服用を中止させると、禁断症状などがあらわれることもあります。
依存を避けるためにも、睡眠導入薬の導入は慎重に検討する必要があります。

もしうつ病の治療薬の服用によって、「おかしい」と感じる症状が出た場合は、すぐに医師・薬剤師に相談しましょう。

出典:日本うつ病学会【高齢者のうつ病治療ガイドライン

出典:厚生労働省【高齢者に対する向精神薬の 安全な薬物療法

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老人性うつの介護認定

老人性うつは、介護認定の対象となります。
介護認定されれば、介護保険サービスを利用できるようになります。

介護保険サービスには、たとえば

  • ホームヘルパー
  • デイサービス

などがあります。
介護保険サービスを利用することは、家族の介護負担を軽減できるだけでなく、本人にとってもメリットがあります。

たとえば、本人にとっては、プロの介護職の介護を受けられるチャンスです。
また、家族以外の方と交流を持つことは、多少なりとも本人の刺激・モチベーションの向上につながります。

一方で、本人が介護認定を望まないケースも少なくありません。
理由としては、金銭的な心配や、家族以外に自分の世話をされたくないといったものが代表的です。

あるいは、自尊心から介護認定を受けたくないというケースもあります。
本人が望んでいないにもかかわらず、無理に介護認定を受けさせようとすると、家族との信頼関係が崩れる可能性があります。

そんなときにおすすめなのが、地域包括支援センターへの相談です。
地域包括支援センターとは、

  • 介護
  • 福祉
  • 保健

などの面から高齢者の暮らしをサポートする施設です。

地域包括支援センターには、

  • ケアマネージャー
  • 看護師
  • 保健師
  • 社会福祉士

などの保健福祉のプロが多数在籍しています。

介護の悩みをどこに相談すればよいか分からない場合は、とりあえず相談してみましょう。
適切な介護サービスの紹介や、受診すべき医療機関へ誘導してもらえることがあります。

あるいは、介護認定を拒否する方の説得方法について、有益なアドバイスをもらえる可能性もあります。

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老人性うつの訪問介護について

老人性うつの方は、周囲との交流を避けたがる傾向がみられます。
周囲との接触を避ける方には、通所型の介護サービスは向いていません。

具体的には、通所リハビリテーション・病院での機能訓練などが該当します。
もし外出を拒む場合は無理に連れ出す必要はありません。

訪問型の介護サービスを利用しながら、経過観察を行いましょう。
うつ病が改善されれば、本人が自然と外出を希望する場合もあります。

外出に限らず、本人が嫌がることはすべて無理強いしてはいけません。
無理強いすると、本人はますます心を閉ざす可能性があるためです。

精神的に追い詰められると、自殺を選ぶこともあります。
老人性うつの方を介護する場合は、まず第1に本人の意思を尊重する姿勢をみせましょう。

自宅でもできるうつ状態軽減方法

うつ病は、自宅で行うセルフケアが可能です。
代表的なセルフケアには、以下のようなものがあります。

  • 栄養バランスのよい食事
  • 適度な運動
  • 生活リズムを整える
  • 就寝前のパソコン・スマホの利用は止める
  • 禁酒・禁煙
  • 漢方薬の利用
  • アロマテラピー・マッサージなどによるストレス発散
  • 他人と積極的にコミュニケーションをとる
  • 小さな目標を立てて実行する

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老人性うつ患者の家族が出来ること

老人性うつの予防・改善には周囲のサポートが重要になります。
具体的なポイントをご紹介します。

出典:厚生労働省【資料8-1 高齢者のうつについて 1.高齢者のうつの基礎知識

変化に気づくには

うつ病は、放置すると重症化する可能性があります。
重症化を防ぐには、うつ病に気づいた時点で適切な治療を受けさせることが大切です。

うつ病のサインには、たとえば以下のようなものがあります。

  • 以前より口数が少なくなった
  • 朝や休日明けに調子が悪そうな様子をみせる
  • 遅刻・早退・欠勤が増える
  • 食欲が落ちた
  • 趣味・好きだったことに興味を示さなくなった
  • だるさ・体調不良を訴える

上記以外でも、「おかしい」と感じる変化があれば、かかりつけ医などに相談しましょう。

どのように接すればよいのか

うつ病の方への接し方のポイントは、以下の通りです。

  • 腫れ物に触るような態度は控え、いつもどおり接する
  • 「頑張れ」は本人を追い詰めるため、いわない
  • うつ病になった原因を深く追求しない
  • 退職などの重大な決定を焦らない
  • 本人をゆっくり休養させる
  • 薬を上手に活用する
  • 必要があれば距離を置いて見守る

大切なのは、過剰なサポートをしないことです。
周囲が心配しすぎると、本人は「家族に迷惑をかけている」と思い、余計に落ち込む傾向がみられます。

本人へのプレッシャーを避けるためにも、ちょうどよい距離を保つことを心がけてください。

また、重大な決定は、先延ばしにしてかまいません。
「うつ病になったから」と焦った状態では、正常な判断はできないためです。

たとえば退職は、経済状況やその後の人生を大きく左右する決定となります。
すこしでも迷いがある場合は、すこし時間をおき、冷静になってから改めて考えましょう。

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老人性うつにならないためには

うつ病は、ショッキングな出来事が原因で起こる「心の病気」と考えられていました。
しかしうつ病は、心ではなく、脳の病気です。

具体的には、脳の不活性化により、神経伝達物質の働きが低下することで起こります。
つまり老人性うつを予防するには、脳の不活性化を防ぐことが大切です。

脳を活性化させるには、以下のような方法がおすすめです。

  • 新しいことに興味を持ち、チャレンジする
  • 趣味・好きなことに取り組む
  • 他人と積極的にコミュニケーションをとる
  • 適度な運動
  • 栄養バランスのよい食事
  • 不調がある場合は、早めに病院にいく

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うつをひとりで抱え込まないために

うつは苦しく、辛いものです。
1人で抱え込むと、ますます苦しみは強くなります。

なにか不安・悲しみがある場合は、誰かに相談するのがおすすめです。
悩みを口にするだけでも、意外に気分がスッキリすることは多いです。

不安・悩みは、できれば信頼できる方に打ち明けましょう。
もし打ち明ける相手がいない場合は、公的機関の相談窓口に相談するのもおすすめです。

機関によっては、匿名での電話相談を受け付けています。
うまく話せなくてもかまいません。

まずは、他人にSOSを出すことが大切です。
主な相談先には、以下があります。

機関名 電話番号 受付時間
保健所・保健センター・精神保健福祉センター 自治体・機関によって異なる 自治体・機関によって異なる
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556 自治体によって異なる
#いのちSOS(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク)
0120-061-338 月曜日・木曜日00:00~24:00
火曜日~水曜日・金曜日~日曜日8:00~24:00
チャイルドライン(特定非営利活動法人(NPO法人) チャイルドライン支援センター)
0120-99-7777(18歳以下限定)
午後4時から午後9時
子供(こども)のSOSの相談窓口(そうだんまどぐち)(文部科学省)
0120-0-78310 24時間対応
子どもの人権110番(法務省) 0120-007-110 平日午前8時30分から午後5時15分まで
よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター) 0120-279-338
(岩手県・宮城県・福島県)0120-279-226
24時間対応
いのちの電話(一般社団法人 日本いのちの電話連盟)
0570-783-556(ナビダイヤル)
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午前10時から午後10時(ナビダイヤル)/毎日16時から21時まで(フリーダイヤル)

出典:厚生労働省【電話相談|自殺対策|厚生労働省

出典:厚生労働省【相談先について|相談する・支えあう|治療や生活へのサポート|メンタルヘルス

老人性うつのまとめ

ここまで、老人性うつについてお伝えしてきました。
老人性うつをまとめると以下の通りです。

  • 老人性うつは、定年退職・パートナーの死など、大きな環境の変化をキッカケに発症することが多い
  • 老人性うつの原因は、退職・引っ越しなどの環境的要因と、病気・ケガ・死別などの心理的要因がある
  • 老人性うつの診療科は精神科・心療内科が適当だが、まずはかかりつけ医に相談してもよい
  • 老人性うつを予防するには、前向きな思考・規則正しい生活を心がけることが大切

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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