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未来へつなぐ認知症教育の出前授業

企業情報
2025.06.10

創業以来、認知症ケアに取り組んでいる当社が、2022年より開始した認知症教育の出前授業。今回は、講師と担当者の2名にインタビューを行いました。


認知症教育サムネイル

■プロフィール

杉本 浩司(すぎもと こうじ)
品質向上推進部長 兼 コーポレートコミュニケーション部長

MCSのケアの品質向上部門と広報部門の責任者/2018年入社
・ “日本ーかっこいい介護福祉士”として、延べ1,200回、聴講者数延べ6万人超の講演実績がある
・ 毎月100キロを走るランナーで、2023年の東京マラソンではサブ4を達成。

安國 香苗(やすくに かなえ)
コーポレートコミュニケーション部 主任

広報担当/2015年新卒入社
・ 認知症のイメージを変えたくて広報を希望し、MCSに入社
・ 趣味は、餃子づくり

※部署・役職は掲載時点です

1.認知症教育の誕生秘話


杉本:
認知症教育は、コーポレートコミュニケーション部(CC部)の企画会議の中で生まれました。CC部は、会社のミッション・ビジョンや経営計画に基づき、社内外の広報を担う部門です。
ステイクホルダーとコミュニケーションを取るだけでなく、「社会の価値観の変革や、価値を創造すること」にも挑戦していきたい。そういう思いから、目標達成のためのマンダラートを実施。
マンダラートの中で、2021年当時の部員たちが社内資源や認知症高齢者が増加していくこれからの社会情勢を総合的に考え、生まれた企画です。

当時のマンダラートの抜粋

部員に学校の先生をしている家族を持つ社員もいて、実際に出前授業を開始する前には、先生のニーズやヤングケアラーなどの学生の存在と課題も認識しながら進めました。

その後、まずは本社のある埼玉県さいたま市の小・中・高校から始めてみようと、安國さんに担当になってもらい認知症教育の出前授業がスタートしました。

現在は、さらに規模を拡大し、首都圏を中心に全国で活動を行っています。
2025年5月末時点で41校(団体)、4,113人に実施しました。

授業の様子

2.認知症教育に込めた思い

安國:
活動開始2022年当時の厚生労働省の推計によると、2025年には65歳以上の5人に1人、約700万人が認知症になる(※2)と言われていました。まさに、「自分の大事な人が認知症になる可能性も十分ある時代」に突入しましたが、まだまだ認知症に対する偏見や誤解があり、孤立や孤独を招いているのが実態です。未来を担う子どもたちとともに考え、1人でも多くの人に「認知症」を正しく知ってもらうことで、「認知症のある方も誰もが暮らしやすい社会を創りたい」という思いを込めて、活動をしています。

将来的には、認知症を正しく理解した子どもたちが地域で活躍する介護人材になることや、
その親世代、教師への正しい理解の促進により、当社のビジョンの一つでもある「介護職の存在価値を高め、生涯働き続けられる専門職にする」ことにつなげていきたいと思っています。

(※2)出典「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」2015年3月二宮利治
2024年5月厚生労働省発表の推計では、2025年には、「認知症と軽度認知障害(MCI)の方が1,000万人を超える」とされています

3.実際に認知症教育を始めて、感じたこと

安國:
現在の社会は、子どもたちが高齢者と触れ合う機会が少ないため、認知症が身近な事柄ではなく、そもそも理解するチャンスがない状況です。そのような状況から、認知症が「当事者やそのご家族だけの問題」となっていることが多く、認知症を正しく理解してもらう重要性を強く感じました。

杉本:
講師として子どもたちと接するときに意識していることは、「認知症のことだけでなく、認知は能動的に行うものだ」と伝えることです。
人間は、機械とは異なり、見たもの・聞いたものに対して認知は極めて選択的であり、認知を行う人間にとって必要のない情報は無視される傾向にあります。
「自分事として物事を捉える」ということは、すなわち「認知を能動的に行うこと」です。

自分事として物事を捉えることができると、認知症のある方だけでなく、世の中で困っている人がいたら声をかける、助けるなどの行動につながっていきます。その対象は身近な友達かもしれないし、学校の先生かもしれない。困っている人がいるときに声をかけたいと思ってもらうこと、人のために時間を使える人が一人でも世の中に増えていくことが重要だと考えています。認知症のことだけでなく、他人のために自分の時間を1秒でも使ってほしい。自分以外の人の変化に気が付くこと、行動すること。
それが人を飛び越して街だったり、国だったりの変化につながっていくと感じています。

2025年1月16日公表調査結果(https://www.mcsg.co.jp/news/20250116_research/

4.授業の中で「やっていてよかった」と感じる瞬間

安國:
日常生活の中でそもそも認知症に意識が向いてなかった子が、知るきっかけや目を向ける機会になっていると感じた瞬間です。最初は、「認知症」というテーマを斜めに構えている子も多いですが、授業が進むと前向きな姿勢に変わって、ワークのときには大人には思いつかないような意見を言ってくれたりするとうれしいですね。
また、実際にご家族が認知症で困っていた子がいて、「どういう声掛けをすればいいかわかった。学んだことを生かしていきたい。」という感想をもらったときには、その子だけでなく、ご家族の助けになっていることも認知症教育をやってよかったと思います。
先生から「困っている子がヒントを得た」と伺うこともあり、お声や感想をいただく度に、意義ある取り組みだと実感しています。

認知症教育の出前授業のアンケート結果より抜粋①

杉本:
やっていてよかった!という瞬間はいくつもありますね。
一つ目は、子どもたちの真剣な姿を見て、日本の未来は明るいと感じることです。出前授業の中で、「認知症のある人が生活しづらい社会がどうしたらよくなるか」ということを考えてもらうとき、多くの子どもたちは友達と冗談を言いながら話始めるのですが、そのうち本気で考えてくれます。この子どもたちが未来の日本を支えてくれることに希望を見出しています。挨拶も礼儀正しくて、正直大人よりもしっかりしているなと感じます。

二つ目は、アンケート結果で「おばあちゃんおじいちゃんに会いに行きたくなった」や「前回おばあちゃんに会いに行ったときに冷たくしちゃったから、ごめんと言いたくなった」など、まずは身近な家族の関係を見直すきっかけにもなっていることです。

三つ目は、介護福祉士としてのやりがいや楽しさを伝えることで、介護職がかっこいい職業だと見てもらえたとき。介護職の地位向上は、当社のビジョンの一つでもありますが、日常の中で子どもたちに介護職の姿を実際に見てもらえる機会はなかなかないのが現状です。私自身の姿を見てもらうことや実際の介護事業所での介護職とご利用者のやりとりの動画を見てもらうことで、介護という仕事に少しでも興味を持ってもらえたときに、やりがいを感じます。
もっと介護の仕事の面白さ、すばらしさを伝えていきたいです。

認知症教育の出前授業のアンケート結果より抜粋②

5.今後の展開は?

数時間の出前授業で杉本さんの話を聞いて終わりだと、認知症への理解はしてくれるかもしれませんが、納得や実感はできないと思うのです。ある学校では、出前授業のあとに、事後学習として認知症をさらに調べる活動を行ってくれたり、職場体験として当社の介護施設に来て、実際にご利用者とコミュニケーションをとったり、触れ合う機会をつくってくださいました。そうすることで、「授業で聞いたことは、本当だったんだ」「認知症という症状があるだけで、私のおじいちゃんおばあちゃんと一緒だ」と気付いて納得してくれると思います。聞くだけでなく、自分で行動して、目で見て感じることが、より今後の意識や社会の変化につながると感じているので、そういった取り組みも増やしていきたいです。

杉本:
認知症のある高齢者人口が増加する日本では、2024年1月に認知症基本法が施行され、私たちのような業界で働く人や当事者だけでなく、社会全体が自ら理解をしていく姿勢も大事だと思います。
もちろん認知症に限ったことではなく、社会が誤解や偏見をもっている多くの事柄に対して、必要な活動だと思います。

そうしたなかで、子どもたちだけでなく一番理解してほしいのは、“大人”です。一企業の活動として終わるのではなく、より多くの方に協力していただく必要もあると思っています。

そのために企業に向けた社内研修講座や、企業のお客様向けの講座も開始しました。

また、自治体の理解も必須です。
「認知症教育の出前授業」というのは、一つの形であって、さまざまな方の理解と協力を得ながら、認知症への理解が進む活動をしていきたいです。



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