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2060年に有病率17.7%へ。加速する認知症の重症化と受入先の不足

2026年現在、私たちは認知症患者が急増するフェーズの渦中にいます。
日慢協が示した推計によると、認知症および軽度認知障害(MCI)の患者数は今後数十年でさらに拡大します。
- 将来推計: 2022年に約443万人だった認知症患者は、2060年には645万人に達すると予測されています。
- 有病率の上昇: 65歳以上の認知症有病率は、2022年の12.3%から2060年には17.7%へと上昇する見込みです。
- 自然経過の課題: アルツハイマー型認知症はFAST(Functional Assessment Staging)尺度に基づき、軽度から高度へと数年かけて進行します。
これに伴い、従来の精神病床だけでは対応が困難になっています。
精神病床全体が減少傾向にある一方で、認知症治療病床は増加していますが、平均在院日数は約328日〜368日と非常に長く、新たな受け皿の確保が喫緊の課題となっています。
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「認知症治療は精神科だけで完結しない」3つの必須機能
橋本会長が会見で最も強調したのは、認知症治療を「精神科の課題」としてのみ捉えることの危うさです。
認知症患者の約9割は75歳以上の高齢者であり、その多くは「多病(マルチモービディティ)」の状態にあります。
日慢協は、以下の「3つの機能」を併せ持つ体制整備を提言しています。
① 精神症状治療(BPSDの軽減)
徘徊、暴言、興奮、妄想といった行動・心理症状(BPSD)に対し、精神保健指定医を中心とした適切な薬物療法や環境調整を行う機能です。
② 内科的症状治療(身体合併症の管理)
高齢の認知症患者は、脳梗塞、糖尿病、慢性心不全、腎不全などを併発しやすく、また誤嚥(ごえん)性肺炎や脱水、低栄養に陥りやすい特性があります。
総合診療医による全身管理と慢性疾患の治療が不可欠です。
③ 尊厳を守るケア(生活リズムの再構築)
「寝たきり防止」「身体拘束ゼロ」「否定しないケア」を徹底し、患者の正の感情を醸成する機能です。
これには専門的なリハビリテーションも含まれます。
療養病床が「認知症ケアのハブ」となる理由
会見では、すでに多くの認知症患者を受け入れている「療養病床」が、今後の体制整備において中心的な役割を担うべきであると示されました。
- 実態としての受け皿: 療養病棟の入院患者の約60%がすでに認知症を患っており、28%がBPSD、10%がせん妄を伴っています。
- 拘束ゼロへの取り組み: 調査によると、点滴などのデバイスがない認知症患者において、身体的拘束を「0%」としている療養病棟は52%に達しています。
- 体制の最適性: 内科的管理とリハビリテーションに強い療養病床は、日慢協が掲げる「3機能」を満たす潜在能力が非常に高いと言えます。
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2026年度(令和8年度)同時改定との相乗効果
2026年度の診療報酬・介護報酬同時改定は、日慢協の提言を制度面で強力にバックアップしています。
賃上げと人手不足への対応
本体改定率+3.09%の大幅なプラスは、医療・介護従事者の3.2%〜5.7%のベースアップを目的としています。
これにより、手間のかかる認知症ケアに携わるスタッフの処遇を改善し、離職を防止する原資が確保されました。
医療DXによる情報のシームレスな共有
新設された「電子的診療情報連携体制整備加算」により、電子カルテ情報共有サービスへの参加が加速します。
本人が病状を説明することが難しい認知症患者において、救急搬送時や転院時に正確な内科的データが共有されることは、適切な「内科的治療」に直結します。
包括的ケアの評価
「包括期充実体制加算」の新設などは、在宅や介護施設と病院の連携を評価するものであり、日慢協が目指す「地域全体で認知症を支える」仕組みそのものです。
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まとめ:今こそ「寝たきりゼロ」の認知症ケアへ
日本慢性期医療協会は、「良質な慢性期医療がなければ日本の医療は成り立たない」と断言しています。
2026年、認知症はもはや特殊な疾患ではなく、高齢者医療の中心です。
精神科領域、内科的領域、そして尊厳を守るケア。
これらが三位一体となった「認知症治療のあり方」を確立し、療養病床などの機能を最大限に活用すること。
そして、2026年度改定で得られた賃上げやDXの成果を現場に還元すること。
私たちは今、「寝たきりゼロ作戦」を合言葉に、認知症になっても自分らしく、身体の健康も守られながら過ごせる社会を築いていかなければなりません。


