1. なぜ1月20日が「血栓予防の日」なのか?
1月20日は、二十四節気の「大寒(だいかん)」にあたることが多く、一年で最も寒さが厳しい時期です。 気温が下がると、私たちの体は体温を逃がさないように血管を収縮させます。また、冬場は夏に比べて汗をかかないため水分補給がおろそかになりがちですが、乾燥した空気によって皮膚や呼気から水分は失われています。
「寒さによる血管収縮」と「冬のかくれ脱水」。この2つの要因が重なり、血液がドロドロになりやすいことから、脳梗塞や心筋梗塞、深部静脈血栓症などの「血栓症」への注意喚起のために制定されたのが「血栓予防の日」です。
2. そもそも「血栓症」とはどんな病気?
血栓症とは、血管の中に「血の塊(血栓)」ができ、血管をふさいでしまう病気のことです。 血栓ができる場所によって、大きく2つのタイプに分けられます。
- 動脈血栓症:血液の流れが速い動脈にできる血栓。動脈硬化などが原因で、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすこと。
- 静脈血栓症:血液の流れが遅い静脈にできる血栓。長時間足を動かさないことなどが原因で、深部静脈血栓症などを引き起こすこと。
今回は、特に高齢者やデスクワークの方にリスクが高い「静脈血栓症」について詳しく見ていきましょう。
3. 足がむくんで痛い…それは「深部静脈血栓症」かも?
深部静脈血栓症(DVT)とは
足の静脈にある「深部静脈」という太い血管に血栓ができる病気です。 一般的には「エコノミークラス症候群」という名前で知られていますが、飛行機だけでなく、長時間のデスクワークや、避難所生活、そして寝たきりの状態でも発症します。
命に関わる「肺塞栓症」のリスク
深部静脈血栓症の最大のリスクは、足にできた血栓が血流に乗って剥がれ落ち、心臓を通って肺の血管に詰まってしまうことです。 これを「肺塞栓症(はいそくせんしょう)」と呼びます。
肺の血管が詰まると、突然の呼吸困難や胸の痛み、最悪の場合は心肺停止を引き起こし、死に至ることもあります。「たかが足のむくみ」と放置するのは非常に危険です。
4. 見逃してはいけない「足のサイン」チェックリスト
深部静脈血栓症は、片足だけに症状が出ることが多いのが特徴です。以下の症状がないかチェックしてみましょう。
- 片足だけの急なむくみ
- ふくらはぎの痛みやしびれ(筋肉痛のような痛み)
- 足の皮膚の赤黒い変色
- 触った際の熱感
- 足の甲の血管の浮き出し
これらの症状に加え、もし「息苦しさ」や「胸の痛み」を感じた場合は、すでに肺に血栓が飛んでいる可能性があります。すぐに救急車を呼ぶか、医療機関を受診してください。
5. 高齢者や介護現場は特に注意が必要
深部静脈血栓症は、活動量が低下している高齢者に起こりやすい病気です。
- 車椅子生活や寝たきりの方:足を動かす機会が少なく、血流が滞りやすいこと。
- 手術後の方:人工関節の手術や骨折などで安静にしている期間。
- 水分をあまり摂らない方:トイレの回数を気にして水分を控えることによる血液粘度の上昇。
介護をされているご家族は、高齢者の足の状態(左右差がないか、むくみや変色がないか)を、入浴介助や着替えのタイミングでこまめにチェックすることが大切です。
6. 今日からできる!冬の血栓予防アクション

血栓を作らせないためには、「ふくらはぎを動かすこと」と「水分補給」が鍵となります。
① 「第2の心臓」ふくらはぎを動かす
ふくらはぎの筋肉は、ポンプのように収縮して、下半身の血液を心臓に押し戻す役割をしています。
- 足首の曲げ伸ばし:座ったままでも、寝たままでもOK。つま先を上げ下げする運動を1時間に数回行うこと。
- 足指じゃんけん:末梢の血流改善に効果的な、足の指でグーチョキパーを作る運動。
② 冬こそしっかり水分補給
「喉が渇いた」と感じる前に水を飲むのが鉄則です。 特に、就寝中は水分が失われ血栓ができやすいため、「寝る前」と「起きた直後」のコップ1杯の水を習慣にしましょう。温かい白湯や麦茶がおすすめです(カフェインを含むコーヒーや緑茶、アルコールは利尿作用があるため、水分補給とは別に考えましょう)。
③ 締め付けない服装と弾性ストッキング
体を締め付ける下着や靴下は血流を阻害します。ゆったりとした服装を心がけましょう。 一方で、医師の指導のもとで使用する「医療用弾性ストッキング」は、静脈の還流を助け、血栓予防に有効です。
7. まとめ
1月20日の「血栓予防の日」は、見落としがちな「足の血管」に目を向ける良い機会です。 深部静脈血栓症は、適切な予防を行うことでリスクを大幅に下げることができます。
- こまめな水分補給
- 足首の運動
- 足のむくみチェック
これらを冬の健康習慣に取り入れましょう。 もし、片足だけの急なむくみや痛みを感じたら、マッサージなどはせずに(血栓が飛ぶ恐れがあるため)、早めに循環器内科や血管外科を受診してください。早期発見が、あなたとご家族の命を守ります。










