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トップページ>専門家から学ぶ>達人インタビュー>【専門家インタビュー】アミロイドβの特徴に関する新発見!

【専門家インタビュー】アミロイドβの特徴に関する新発見!

医薬保健研究域 医学系 准教授
濱口 毅

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アルツハイマー病の原因の1つである「アミロイドβタンパク質」の新たな特徴を発見

編集部:今回は「アルツハイマー病脳における伝播したアミロイドβタンパク質が脳血管に沈着しやすいことを解明」という発表内容について詳しく伺いたいと思います。
まず、研究結果の概要を教えていただけますでしょうか?

濱口様:認知症の方の半数以上がアルツハイマー病(アルツハイマー病認知症)だと言われています。
まず、アルツハイマー病の大きな特徴の1つとして、アミロイドβタンパク質(Aβ)の脳への沈着があります。最近、このAβ病理変化が個体間を伝播することが動物実験で数多く報告されています。

検証をした結果、個体間伝播したAβは脳血管に沈着しやすいことがわかりました。

編集部:なるほど、なぜAβが個体間伝播するのではないかという仮説が立てられたのでしょうか?

濱口様:もともと、プリオン病という病気は、異常プリオンタンパク質が個体間伝播する特徴があることが知られています。
プリオン病はアルツハイマー病と同じで、脳にタンパク質が溜まることで引き起こされます。
こういったことから、Aβも個体間伝播するのではないかという仮説が立ちました。

編集部:そもそも個体間伝播というのは?

濱口様:動物から動物、動物からヒト、ヒトからヒトのように、個体間を伝播することです。
プリオン病は、硬膜移植や成長ホルモン製剤の注射などの医療行為によってヒトからヒトへ伝播することが知られていました。

これまでに硬膜移植によって個体間伝播したプリオン病は全世界で250例以上報告されていますが、その症例の6割ほどが日本で発見されているという事実もあります。

編集部:なるほど、ありがとうございます。
では、Aβが個体間伝播すると脳血管に沈着しやすいという仮説を立てたあと、どうやって検証を行ったのですか?

濱口様:まずは、4つのグループに分けることから始めました。

  1. 脳そのもの(脳実質)にのみAβが沈着しているグループ
  2. 脳の血管にのみAβが沈着しているグループ
  3. 脳の実質と血管の両方にAβが沈着しているグループ
  4. 脳の実質にも血管にも、Aβがほとんど沈着していないグループ

これらのグループの脳をすりつぶして、抽出物をモデルマウスの脳に摂取するという実験をしました。
要は、医療行為によってAβが個体間を伝播するという状況を、マウスを使って再現したというわけです。

その1年後に、マウスの変化を確かめるという実験です。

少し話が前後してしまうのですが、プリオン病が個体間を伝播する場合、プリオン株という考え方があります。

例えば、プリオン病に罹患したAさんの異常プリオンタンパクをBさんに打つと、Aさんの脳内で見せた異常プリオンタンパクの性質を引き継ぐという考え方です。
つまり、異常プリオンタンパクを個体間伝播させても、その性質はあまり変わらないということです。

そして、最近の動物実験で、Aβも同じような性質があるのではないかと言われており、Aβ株とも言われています。

ですから、先ほど説明した4つのグループの違いは、Aβ株の違いによって生じるのだと我々は考えていました。
したがって、脳実質にのみAβが溜まっているグループの細胞をマウスに打てば、マウスでも同じように、脳実質にのみAβが蓄積されるに違いないと思っていました。

しかし、結果を見てみると、どのグループの細胞を使用しても、マウスではほぼ同じ病理変化、脳血管にAβが沈着するということがわかりました。

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個体間伝播を防ぐ方法はあるのか

編集部:医療行為によってAβが個体間伝播してしまうのは、少し不安に感じてしまうのですが、それを避けることは可能なのでしょうか?

濱口様:そうですよね、それはすごく大切なことだと思いますし、我々も予防法の開発はずっとやってきていることです。

プリオン病の場合ですと、医療機器に対して、オートクレーブという圧力を使った滅菌法を使用しています。
実際に一般の滅菌より強力な条件のオートクレーブを使用すると、プリオンタンパクの伝達性も失われます。

そして、ちょうど先日、Aβに対するオートクレーブの有効性に関する論文を発表したばかりです。

研究を始めたきっかけ

編集部:アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβに関する研究を始めたきっかけをお聞かせください。
もともと認知症研究に興味があったのでしょうか?

濱口様:私は、1998年に金沢大学を卒業するのですが、そのまま脳神経内科(当時は神経内科)に入りました。
当時は脳卒中などのダイナミックに症状が変動する疾患に興味があり、あまり認知症には関心がありませんでした(笑)

その後、金沢大学の前教授の山田正仁先生に認知症をやってみないかと言われたのが、認知症に触れる最初のきっかけです。

実は最初与えて頂いたテーマは、ポリフェノールがアルツハイマー病の治療や予防に使えるかどうかを研究することでした。
それと同時に、山田先生が参加していたプリオン病サーベイランス委員会に参加する機会も頂きました。

ですから、プリオン病の研究とアルツハイマー病の研究を並行してやっているという状態ですね。
そして、せっかく似た病気について研究できているのだから、共通点を探してみようと思いました。

私が国際学会に出席した時に「アルツハイマー病はプリオン病と同じように伝播する」という内容の研究をしていた先生がいたんですね。
さらにその先生が山田先生と知り合いで、その日のうちに挨拶に行き、その後ドイツに留学して研究することになりました。

編集部:なるほど、いろいろな偶然が重なって認知症についての研究をすることになったのですね(笑)

濱口様:そうですね、まさか私が認知症の専門家になるとは思いませんでした(笑)

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健達ねっとをご覧いただいている方へのメッセージ

編集部:最後に健達ねっとのユーザー様に一言お願いします。

濱口様:認知症になると出来ないことが増加する場合があり、そのことに悲観して何もしなくなる人が居られます。でも、どの人も出来ることが多く残っていますので、是非出来ることを見つけてチャレンジして欲しいと思います。

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金沢大学医薬保健研究域 医学系 准教授

濱口 毅はまぐち つよし

日本神経学会 正会員
日本神経感染症学会 評議員
日本認知症学会 正会員

  • 日本神経学会 正会員
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