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認知症への理解を深め、当事者に寄り添おう〜穏やかで平和な時間をともに過ごすために〜

女優、歌手、准看護師、介護士

北原 佐和子(きたはら さわこ)さん

創作アートが得意な利用者さん。デイでは穏やかな時間を過ごしていた

 

デイサービスを利用していた方が、あるとき近所のコンビニエンスストアで万引きをしてしまいました。

住まいはデイから直線で300mの距離で、コンビニはその中間地点にありました。生活環境は、家族と同居していて、玄関を入るとすぐ正面がその方のお部屋。ご家族は2階に住まわれていて、受診が必要なときは家族が対応してくれます。

私たちには、家族とのそれ以外の交流はほとんどないように見えました。デイサービス送迎時の様子では、その方のお部屋はお世辞にもきれいに片付けられているとは言えず、衛生的にもよくない環境のようでした。家族のどなたかがいらっしゃる様子でも、対面することは一度もなかったと記憶しています。

脳梗塞を患い、後遺症で歩行に少し障害があるものの、デイにおいてはとても穏やかに過ごされる方で、趣味の創作絵画(創作アート)をするための道具を持参してデイにお越しでした。

自分で絵を描き、そこに新聞広告から金閣寺の写真を切り取って貼り付け、または自分で芸者を描いたりして、オリジナルの創作アートを仕上げていきます。自分の中でイメージが描けている様子で、そばで見ていて日に日に変化していく様を、私たちもワクワクして見させてもらっていました。

 

利用者さんの言動が急変。店で万引きまでしてしまう

 

ところがある日を境に、その方からきわどいハレンチな話が急に増えました。話すときの表情は普段とは違い少し興奮気味で、こちらがリアクションに困るほどの内容でした。ときには写真を見せられることも……。「そのような写真はしまっておいてください」とお伝えしても、来るたびに見せてくれるので、困るな……と私なりに感じつつ、対応していました。

 

また、買い物などは「そのたびに必要金額を家族からもらい、コンビニでビールやつまみを購入している」と話していました。

しかし「お酒を飲むことを家族がよく思っていない」とぼそっと話し、「そうなのですね。では控えたほうがいいのかな……」などと言うと、「そうなんだよ……」と複雑な表情を見せることがあり、そのときの寂しげな表情は、今でも印象に残っています。送迎時の様子や、ご本人の話、または家族の話からも、関係性がうまくいっていないことは容易にうかがえました。

 

それでも、まさか万引きなどは想像もしていませんでした。本人の言い分は「生意気なスタッフがいたので、頭にきてやった」ということでしたが、残念なことに、コンビニ、ご自宅、デイすべてが近隣ということもあり、直後にこの方の利用が終了となってしまいました。

 

しかし実はその数日後、テレビ番組で認知症特集があり、それを見た私は、この方の症状が「前頭側頭葉型認知症」の症状に似ていると思いました。

 

性格の変化や、社会的ルールを無視した言動を起こしてしまう認知症がある

 

「前頭側頭葉型認知症」とは、次のような認知症のことです。

 

「神経変性」による認知症の一つで、脳の一部である「前頭葉」や「側頭葉前方」の委縮がみられ、他の認知症にはみられにくい、特徴的な症状を示します。

神経変性による認知症は、脳の中身である神経細胞が徐々に減ってしまったり、一部に本来みられない細胞ができ、脳が委縮することで発症することがわかっています。

 

脳の中で、前頭葉は「人格・社会性・言語」を、側頭葉は「記憶・聴覚・言語」を主につかさどっています。

そのため、前頭側頭葉型認知症を発症すると、これらが正常に機能しなくなることにより、下記のような特徴的な症状が表れます。

 

【社会性の欠如】

万引きのような軽犯罪を起こす、身だしなみに無頓着になるなど、社会性が欠如します。

【抑制が効かなくなる】

相手に対して遠慮ができない、相手に対して暴力をふるう、度を越したふざけをするなど、自分に対して抑制が効かなくなります。

【同じことを繰り返す】

いつも同じ道順を歩き続ける、同じような動作を取り続けるといった、同じ行動を繰り返すようになります。

【感情の鈍麻(どんま)】

感情がにぶくなる、他人に共感できない、感情移入ができないといった、感情の鈍麻(どんま:感覚がにぶくなる)が起こります。

【自発性な言葉の低下】

相手に言われたことをオウム返しする、いつも同じ言葉を言い続けるといった、自発的な言葉が出にくくなります。

 

(公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット」から抜粋し引用)

 

ほかにも代表的な認知症といえば、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などがあり、原因や症状に違いがあります。

 

あとになり、私はテレビ番組を通じて、デイに通っていたこの方の症状は認知症によるものだったのではないかと思えましたが、専門医を受診して適切な診断を受けていたならば、家族も症状を理解できて、ご本人との関係もスムーズだったように思います。

そしてフォーマルケアでかかわる私たちも、問題が起こる前に何かしらのサポートがあったのではないか……と、残念に思うばかりです。

認知症への理解を深めることは、本人や家族の穏やかな日々につながる

認知症の症状を理解して、早くに専門医を受診したうえで適切な治療を開始することが、本人、そしてご家族や地域の人々にとって大切なことと、この件で学びました。これからの高齢化社会では、このような問題も頻発してくるのではないでしょうか。今後は、インフォーマルな地域や家族のかかわり方も課題になってきます。

 

私の知るデイサービスの利用者さんの話では、デイに行かない日の夕方には、必ず近所のスーパーへ買い物に行っていました。

財布も持たずに行きながらも、買い物かごに夕食の食材を入れて、レジで支払いをせずに自宅へ帰ってきてしまうのです。あとからお嫁さんが支払いに行っていたと、このことはご本人が亡くなったあとにお聞きしました。

「専業主婦をしていたお義母さんにとって、夕方の買い物は習慣化されたことで、必要なことと理解しサポートしていました」と、お嫁さんはおっしゃっていました。

 

また、私の友人は10年以上前に反社会的な行動から受診を促され、前頭側頭葉型認知症と診断されました。直後は、本人もそのご家族も、長くつらい時間を過ごしていたとうかがいました。現在は、同じ趣味を持つ友人と出かけるなど、充実した日々を過ごしています。これもインフォーマルな家族、地域や友人のサポートがあるからで、このコロナ禍でも、SNSなどで多くの方と交流しながら幸せに暮らしています。

 

現実的には、私の両親も80代半ばです。受け入れたくなくとも日々変化しています。

必要なときに適切な診断が専門医によってなされるように、常に情報収集しておくことが大切だと思います。それは介護や医療に従事する立場の人間だからではなく、愛する家族のために必要なことだと思っています。

 

北原 佐和子(きはたら さわこ)さん

1964年3月19日生まれ 女優、元歌手、准看護師、介護士

埼玉県入間郡福岡町(のち上福岡市、現・ふじみ野市)出身。デビュー時の所属事務所オスカープロモーション、現在はプレシャスライフ オフィスSawako。朗読会主催はプレシャスライフ 心の朗読会。芸能活動の傍らでホームヘルパー2級及び介護福祉士の資格を取得し、介護士として現場で働く。2016年ケアマネージャー取得。

来歴

読者モデルとして掲載された女性ファッション誌『mcシスター』を見たマネージャーによってスカウトされた。高校在学中にミス・ヤングジャンプに選ばれグラビアデビュー。同じ事務所の所属であった真鍋ちえみ三井比佐子とともに、1981年にアイドルユニット「パンジー」を結成。

自身の18歳の誕生日である1982年3月19日にシングル「マイ・ボーイフレンド」で歌手としてソロデビューすると、1985年にかけてシングル10作品、アルバム6作品をリリースした。俗に言う「花の82年デビュー組」の一人であり、当時のキャッチフレーズは「さわやか恋人一年生」。

女優に転身後はテレビドラマ・映画・舞台など数々の作品に出演。

川上麻衣子らと並ぶ「昼ドラの常連」として知られ、『牡丹と薔薇』は大ヒットとなった。

またレポーターとして旅番組などにも多く出演する。

一方で、障害者との交流をきっかけに20代の頃より介護やボランティアに関心を持っており、2005年ホームヘルパー2級の資格を取得すると、芸能活動の傍ら介護士として東京都内の施設で介護実務に携わる。

2014年には介護福祉士の国家資格を取得。同年12月には、介護現場での自らの体験を元に書籍『女優が実践した介護が変わる魔法の声かけ』を執筆。「介護はじめの一歩」と題して講演活動も行っている。2018年にケアマネージャー資格取得。2020年3月准看護師資格取得し現在は、特別養護老人福祉施設にて看護師従事。

またボランティア活動として、2011年よりワンライフプロジェクト東京支部代表としてワンライフプロジェクト『たったひとつの命だから』の朗読会を各地で開催。2013年には新たに自ら代表を務めるボランティア団体「プレシャスライフ 心の朗読会」を立ち上げて、「いのちと心の朗読会」を各地の小中学校や病院などで開催している。

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