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【専門家インタビュー】iPS細胞技術の活用に関する研究

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研究内容について

編集部:赤松先生は神経疾患について研究されています。まず、IPS細胞を用いた神経疾患モデリング・病態及び創薬研究について』の内容とその研究成果について教えてください。

赤松様:私たちはパーキンソン病患者由来のiPS細胞から作製したドーパミン神経細胞を用いた病態検出方法をイメージング装置を用いて自動化することに成功しました。
このシステムを用いて遺伝性のパーキンソン病であるPARK2とPARK6患者由来のiPS細胞から作製したドーパミン神経細胞を用いて薬剤スクリーニングを行い、iPS細胞の病態を改善させる4種類の化合物を同定しました。
さらに、これらの薬剤がパーキンソン病モデル動物のショウジョウバエと一部の孤発性パーキンソン病患者由来細胞に対しても病態改善効果を持つことを確認しました。
パーキンソン病のうち、原因遺伝子と細胞での表現型が明らかである遺伝性症例の細胞を用いて同定した化合物が、原因不明で症例の大部分を占める孤発性症例由来の細胞でも効果があるという結果は、パーキンソン病に対するiPS細胞を用いた創薬の有用性を示しています。

編集部:先生が上記の研究を行った経緯を教えてください。

赤松様:患者さんの体の中にある神経細胞を直接見ることは難しくどのような経過を辿って患者さんの神経細胞が変化していくかを捉えることはできませんでした。
iPS細胞技術の開発により、神経疾患の患者さんの体細胞からiPS細胞を樹立して病変部位の細胞に分化誘導することによって、その病気の細胞レベルでの早期の変化を捉えることができるようになりました。
私たちはこれまでの研究で家族性パーキンソン病の中でもPARK2とPARK6と呼ばれるタイプでは、神経細胞で古くなったミトコンドリアを除去する働きに異常があることを患者由来のiPS細胞を用いて明らかにしていました。
しかしながらそれまでのiPS細胞における病態解析は、その表現型を研究者が自身で観察して評価していたため時間がかかり、そのままの方法では同時に沢山の薬剤の効果を検証する薬剤スクリーニングなどを行うのは非現実的でした。

編集部:「再生医療を目指したiPS細胞技術の活用」についての研究成果について教えてください。

赤松様:マウスのiPS細胞を作製する際の通常の条件に加えて、培養液に「3i」と呼ばれるMEK阻害剤(PD184352)、GSK3β阻害剤(CHIR99021)、FGF受容体阻害剤(SU5402)の3つの化合物を添加することによって、樹立したiPS細胞が、分化の速度が従来よりも速く、発生初期段階に見られる遺伝子を強く発現していることを発見しました。また、通常の条件でいったんiPS細胞を樹立した後に3iを添加しても分化成熟能力は高まらないため、iPS細胞を樹立した時の培養条件が、樹立したiPS細胞の性質に大きく影響することも明らかになりました。

編集部:赤松先生が考える本研究の意義を教えてください。

赤松様:iPS細胞はさまざまな種類の細胞に分化誘導することが可能であるため、再生医療や治療薬開発、疾患メカニズム研究などに応用されています。
しかし、iPS細胞から誘導した細胞は成熟するために成熟するには時間を要し、さらに、iPS細胞の細胞株ごとに分化成熟能力は大きく異なることから、再生医療に応用するための安全な細胞を作り出すためには、時間的・経済的負担は非常に大きいのが現状の問題点です。この研究の成果は、今後ヒトiPS細胞にも応用されることにより、再生医療分野での臨床応用や疾患研究においても大きく寄与できると期待されます。

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今後の目標について

編集部:赤松先生の研究室での最終的な目標を教えてください。

赤松様:現在行われているパーキンソン病の標準治療は脳内で不足しているドーパミンを補充することが主流となっていますが、それはあくまでも対症療法であり、パーキンソン病を根本から治療していることにはなっていません。
私たちはパーキンソン病という病気を細胞レベルから見た発症原因によって細かく分類して、それぞれのタイプの孤発性・家族性パーキンソン病を、発症原因に応じて根本的に治療する薬剤を開発することです。

編集部:今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?

赤松様:現在はその発症原因・原因遺伝子も不明である孤発性パーキンソン病患者さん(パーキンソン病患者全体の90%以上を占める)からご協力頂いて、多くの数のiPS細胞を作り、それを解析することによって、孤発性パーキンソン病の多様性を解明していきたいと思っています

健達ねっとのユーザー様へ一言

編集部:最後に健達ねっとのユーザー様に何かメッセージをお願いいたします。

赤松様:認知症やパーキンソン病など神経の病気を根本的に治療する薬はこれまでほとんどありませんでしたが、iPS細胞など新しい技術を用いて、その発症を予防したり進行を遅らせたりする薬剤が登場することが期待されます。

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薬の使い方

順天堂大学ゲノム・再生医療センター 教授

赤松 和土あかまつ わど

医師
日本医師会認定産業医
日本再生医療学会

  • 医師
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