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トップページ>専門家から学ぶ>達人インタビュー>【専門家インタビュー】高齢者へのフットケアに関する研究

【専門家インタビュー】高齢者へのフットケアに関する研究

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研究内容について

編集部:「在宅療養高齢者に対する訪問看護師による フットケアの阻害要因と推進要因」の研究内容と研究成果について教えてください。

平尾様:在宅療養高齢者に対して訪問看護師が実施しているフットケアの内容や、フットケアに対する意識を把握するため、245人からの回答を集計した結果、実施しているフットケア内容の最多は「足の状態の観察」で、なんと96%の看護師が実施していました。足に問題のある対象者に限らず、高齢者に対しては足病変のリスクを念頭におき足の観察を意識的に行えていることが分かり、この事実そのものが促進要因であると考えました。一方、「専門医との連携」はあまり実施されておらず、「ケア内容や方法がわからない」、「技術が難しい」、「ケア時間が確保できない」など、フットケアで困っている内容が多数寄せられ、これらがフットケアの阻害要因であることが分かりました。この結果から、「看護師は足の観察の必要性は理解しているが、実施に際して技術面や連携面での困難を抱えている」ことが明らかとなり、在宅でのフットケアを推進するための足掛かりを得ました。

 

編集部:その研究を行った経緯を教えてください。

平尾様:訪問看護師として働いていた20年ほど前、慢性関節リウマチで足の変形があり、家の中を伝い歩きするのが精いっぱいだった高齢の女性に出会いました。変形や痛みで足を十分に洗えなかったためか、角質の増殖が著しく、まるで角質の中に足が埋もれているような状態でした。週1回の訪問での入浴介助の際、足を丁寧に洗い、角質をヤスリで手入れをし、爪切り、クリームで保湿というごく基本的なケアで、2か月後には見違えるほどきれいな足に変化していました。同時に歩行状態の改善がみられ、表情が明るくなり積極的な言動が目立つようになりました。この経験からフットケアの効果を実感したと共に、在宅療養者に個別的なフットケアができる立場にある訪問看護師が、もっとフットケアを実践出来たら良いのでは、と考えたことが本調査に繋がりました。

 

編集部:「在宅療養高齢者への訪問看護師によるフットケアプロトコールの開発」の研究内容と研究成果について教えてください。

平尾様:前述の研究成果などから、療養者宅で問題のある足を認知した際の判断基準や行動指針を示す「フットケアプロトコール」の作成に着手しました。高齢者に多い足病変として、乾燥、浮腫、胼胝・鶏眼、爪の異常、創、水虫の6つをピックアップし、其々についてプロトコールを作成しました。症状の発見から開始し、観察項目に従ってイエス、ノーで進んでいくフローチャート形式で問題領域を特定し、それに応じた看護計画を提示し、初期判断・行動が取れるよう考慮したものです。作成に当たっては、フットケアに携わる専門家で検討を重ねました。現在は、そのプロトコールの原案を実際訪問看護師にみてもらい、また実践に活用してもらい、実用化についての意見をいただいているところです。

 

編集部:平尾様が考える本研究の意義を教えてください。

平尾様:訪問看護は、基本的には一人で利用者宅を訪問し、医師が不在の中で看護ケアを行いますので、リアルタイムで誰かに相談することは出来ない環境にあります。足の異常があることはわかるけれど、一体どのような状態と判断されるのか、対応の緊急性は高いのか、どのようなケアが必要なのかをまず示してくれるプロトコールがあれば、フットケアの実施が促進されると考えており、それが本研究の一番の意義であると思います。

 

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今後の目標について

編集部:平尾様の研究における最終的な目標を教えてください。

平尾様:フットケアは、足の状態の改善だけではなく、心身全体の状態改善の効果があることがわかってきています。足病変のリスクの高い糖尿病等の方を含めた全ての高齢者が、フットケアによって自立した生活を長く続けられるようになることが理想です。フットケアの効果を様々な形で実証し、フットケアが実施しやすい環境をつくり、実践者を増やしていければと思います。

 

編集部:今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?

平尾様:高齢者のフットケアについては、開発中のプロトコールの実用効果、その信頼性を証明する研究を進めていきたいと思います。また、在宅療養高齢者への看護のフロントラインに立つ訪問看護師が、より質の高い看護を実践できるよう、その教育・研修や労働環境改善についての研究を実施していきたいと考えています。

健達ねっとのユーザー様へ一言

足をみれば、その方の健康状態や健康への意識、生活ぶりまでも把握できると思います。適切なフットケアは、高齢者の自立に繋がるため、ぜひ関わった患者さんや利用者さんの足を意識的にみていただければと思います。

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薬の使い方

仙台赤門短期大学看護学科 教授

平尾 由美子ひらお ゆみこ

看護師
保健師
養護教諭一種

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