ホーム

認知症を学ぶ

down compression

介護を学ぶ

down compression

専門家から学ぶ

down compression

書籍から学ぶ

down compression

健康を学ぶ

down compression
トップページ>専門家から学ぶ>達人インタビュー>【専門家インタビュー】食後血糖値上昇に関する研究

【専門家インタビュー】食後血糖値上昇に関する研究

スポンサーリンク

研究内容について

編集部:「白飯と昆布加工品の組み合わせが食後血糖上昇へ与える影響」についての研究内容とその研究成果について教えてください。

大森様:本研究では、米飯と昆布加工品を組み合わせて摂取することが食後の血糖上昇に与える影響を検討しました。被験者は若年女性とし、経口負荷試験を実施しました。試験食には包装米飯と2種類の昆布加工品を用い、白飯(対照)、白飯にきざみ昆布(きざみ)、白飯にとろろ昆布(とろろ)、白飯に二倍量のきざみ昆布(きざみ2倍)、白飯に二倍量のとろろ昆布(とろろ2倍)をそれぞれ添加した5通りとしました。その結果、食後の血糖最高値は白飯のみを摂取するよりも昆布加工品を添加して摂取した方が低値を示し、通常の2倍のとろろ昆布を添加すると有意差が認められました。このことから、昆布加工品の添加は食後の血糖ピーク値と糖の吸収を抑制する可能性が示唆され、富山県でなじみのある昆布加工品を使用した昆布おにぎりには、食後の血糖上昇抑制効果があることが推察されました。

編集部:その研究を行った経緯を教えてください。

大森様:富山県は昆布の消費量が全国トップクラスで、昆布加工品を用いた数多くの昆布グルメが存在します。一般的に、海苔を巻いて食べることが多いおにぎりも、富山県では昆布加工品であるとろろ昆布を巻いたり、きざみ昆布を表面にまぶして食べられることが多く、県内の飲食店やコンビニエンスストアなどで昆布おにぎりが販売されています。昆布などの海藻類には食物繊維が多く含まれており、血糖上昇抑制効果が確認されています。しかしながら、この昆布加工品であるとろろ昆布やきざみ昆布を、おにぎりとして摂取した研究のエビデンスがありませんでした。そこで、本研究では、白飯と昆布加工品を組み合わせて摂取した後の血糖値をモニタリングすることで、昆布おにぎりの食後血糖上昇抑制効果を検討しました。

編集部:「白飯の咀嚼回数の違いが食後血糖上昇に与える影響」についての研究内容とその研究成果について教えてください。

大森様:本研究では、白飯の咀嚼回数の違いが食後血糖上昇に与える影響を検討しました。被験者は若年女性とし、経口負荷試験を行いました。試験食には包装米飯を用い、15等分して摂取しました。実験Ⅰは、一口を60秒間に30回咀嚼、一口を60秒間に60回咀嚼、一口を60秒間に10回咀嚼の3種類、実験Ⅱは、実験Ⅰと咀嚼回数は変えず、一口につき30秒間で嚥下しました。その結果、実験Ⅰ・Ⅱともにほとんどのパラメータに有意な差は認められませんでした。以上のことから、同一量の白飯を咀嚼回数を変えて摂取した場合、嚥下するタイミングに関係なく、咀嚼回数の多寡は食後の血糖上昇に与える影響は少ないことが示唆されました。これらのことから、食後の血糖へ与える要因は咀嚼回数ではなく他の要因が関与している可能性が推察されました。

編集部:大森様が考える本研究の意義を教えてください。

大森様:よく噛んで食べることは健康に良いと言い伝えられてきましたが、近年の疫学調査により速食い習慣と肥満には強い関連が認められることが明らかになりました。一方で、咀嚼回数の増加に伴い、飯の細分化や唾液分泌量の亢進により、口腔内での糖生成量の増加が、食後の急激な血糖上昇を招いたという報告もあります。しかし、咀嚼回数と血糖上昇に関する研究の多くは、試験食における一口あたりの摂取量や時間については詳細に示されていないものが多いです。そこで、本研究では、一口当たりの白飯の量と食事に要した時間を揃え、咀嚼回数のみを変えて試験を実施しました。これにより、「よく噛んで食べること」=「咀嚼回数が多いこと」が良いことなのかを食後の血糖上昇という観点からアプローチしました。

スポンサーリンク

今後の目標について

編集部:大森様の研究における最終的な目標を教えてください。

大森様:1950年ごろには約60歳だった平均寿命も今では80歳を超えています。さらに今後も日本の平均寿命は伸びると予測されており、人生100年時代も現実味を帯びてきました。寿命の延伸自体は喜ばしいことですが、長く生きるということは、いくつかの病気と付き合うことにもなります。最終的には、投薬や手術で病気を取り除くことになるかもしれませんが、できる限り簡単で、費用がかからず、継続可能な食べ方や献立を明らかにして、少しでも病気を封じ込めていければと思っています。

編集部:今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?

大森様:今後も、現在取り組んでいる食後の血糖値の上昇を抑制する食べ方や献立について継続して検討していきたいと思います。効果が抜群であっても継続が難しい場合は、病気の発症を食い止めることができないので、できる限り特殊な食品などを用いず、普段の食事に近い形を意識しています。具体的には、摂取する食品は同じであっても、咀嚼回数や食べる順序、調理方法を変えることで効果が発揮されることを明らかにしていきたいです。

健達ねっとのユーザー様へ一言

近年の健康志向から、世の中には健康・栄養に関する数多くの情報が溢れています。情報量は乏しいよりも多い方が望ましいですが、その中から自分にとって適切で、正しい情報を選択しなくてはなりません。マスメディアとは、「マス=大衆」に対して情報を伝達する「メディア=媒体」のことです。一対一の栄養指導などとは異なり、発信される情報はどこかの誰か(大衆)へ向けたものであり、情報を受け取る実在する人物を見据えているわけではありません。場合によっては、発信された情報と受け取る方のミスマッチが生じ、良かれと思ってとった行動が、マイナス(発病、病気の悪化)へ働くことも珍しくありません。適切で正しい情報を選別する能力を養い、健康長寿へ繋がることを祈念いたします。

健達ねっとECサイト
薬の使い方

富山短期大学 准教授

大森 聡おおもり あきら

富山短期大学 専攻科食物栄養専攻 准教授
管理栄養士
日本栄養改善学会 評議員 北陸支部幹事

  • 富山短期大学 専攻科食物栄養専攻 准教授
  • 管理栄養士
  • 日本栄養改善学会 評議員 北陸支部幹事

スポンサーリンク