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【専門家インタビュー】障がいのある生徒・学生への教育的な支援に関する研究

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研究内容について

編集部:「「特別支援学校教諭を目指す学生の教育実践力向上のためのICTを活用した模擬授業の試行-知的障害及び肢体不自由・病弱にかかわる教育実践に焦点をあてて-」」についての研究内容とその研究成果について教えてください。

山口様:この研究では、特別支援学校教諭を目指す学生が、実際に自身の模擬授業において、ICTツールとして、動画共有やGoogleクラスルーム、その他のアプリケーションを用いることによって、どのような授業実践が可能になるのかを自らの学習体験を通じて体感することで、実際に障がいのある子ども達への授業づくりにおいて、複数のICTを活用することによって障がいのある子どものもつ力をさらに「引き出し」、「拡張させる」ことができることに気づくことが目的でした。

実際に学生自身が、これまでの紙と筆記用具を中心とする学習から、ICTツールを複数組み合わせて、より即時的にそれぞれの意見を視覚化したり、それを基にディスカッションや成果物を作成することで、従来の授業形態とは異なる効果を個々の学生が感じました。こうした体験を通じて、より障がいのある子どもの「できない」を何のICTツールを用いて、やり方を工夫することで「できる」へ変換させてることができる実践力の育成を行いました。

編集部:その研究を行った経緯を教えてください。

山口様:タブレット端末やアプリケーションなどを含め様々なICTツールが日常的に活用できるようになり、障がいのある子どもの学習環境を作り上げる教員には、柔軟な思考力と多様なツールを活用できる経験が必要になります。学生には、日頃使っているツールに加えて新たなアプリケーションなどのICTツールを模擬授業の中で体験させることによる実践力向上に着目をして実施しました。Society5.0時代では、こうした一人ひとりの学び方の違いにより個別最適に対応できる様々なツールが沢山生まれてきます。こうしたツールをトライアンドエラーの精神で「試してみて考える」、「うまくいかなくても諦めずに試行錯誤をして最適な状態を生み出す」ことが、一人ひとりの子どもの学びや成長を支える教員には求められます。そういった意味では、Society5.0時代を生きる子ども達の未来を創る教員は、冒険者になることが求められているのかもしれません。

編集部:「高等教育機関と職業リハビリテーション機関とのれ寧において障害学生支援担当者に求めらえる実践」についての研究内容とその研究成果について教えてください。

山口様:この研究では、近年増加している高等教育機関に在籍する障害学生のキャリア形成支援において、大学の障害学生支援の担当者としての実践から、いかに障害学生の在学中から職業リハビリテーション機関と連携しながら、卒業後のキャリア形成を見越した支援をしていくことが重要であるか、そのポイントまとめたものになります。障害学生支援においては、障害学生自身の自己理解をいかに深め、自分に必要な配慮と工夫を在学中に体験し、その体験を踏まえて、卒業後に自ら周囲へ提案できる力の形成になるように意識して、関係機関と連携し、様々な機会を創出していくことが重要になります。大学の障害学生支援の担当者には、こうした障害学生が卒業後に社会で活躍するためにも必要な「心の揺れ」や悩みに寄り添い、様々な選択肢を提案しながら、未来づくりのお手伝いをすることが大切になることを提案しています。

編集部:山口様が考える本研究の意義を教えてください。

山口様:高等教育機関に在籍する障害学生は今後も増加することが見込まれており、教育機関としては、人生の中で最後となる場所であることも多いことから、社会への参加や職業自立をいかに充実させていくかということを伴走しながら考えてくれる支援者がいる環境になると思われます。こうした点からも障害のある学生が、卒業後に社会の構成員として職業的能力を発揮しながら、社会を支える人材となることをいかに後押しできるのか、その為のポイントを障害学生担当者で実践知を共有していくことは、支援の質の向上に貢献できる意義があるのではないかと思います。

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今後の目標について

編集部:山口様の研究における最終的な目標を教えてください。

これまで障害のある生徒や学生の高等教育への進学や職業的自立を実現するためのキャリア形成支援やその支援者の専門性向上に関わる研究に着手してきています。最近は障害のある方のテレワーク就労に関する研究なども実施してり、これまでよりも多様な働き方による職業的自立をどう実現できるか、その為に支援者や企業、教育機関は何をしなければならないのかなどに着目しながら、社会全体で障害のある方の働く力への期待と多様な選択肢を高めることが最終的な目標になります。具体的には、Society5.0時代における障がいのある方々の社会での「働く」を考えたときに、どのような準備が必要になるのか、どのようなリスキリングが必要になるのか、彼らを支える職業リハビリテーション領域の支援者はどのように支援をアップデートしていかなければならないのか、学校教育のなかでは、どんなことを準備していく必要があるかといった問いを中心に研究を進めています。

編集部:今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?

山口様:今後は障害のある生徒や学生がSociety5.0時代における多様な職業的選択を行えるように、リスキリングの視点から既存の教育アプローチの見直しや支援者の専門性向上などに関する研究に着手していきたいと考えています。

現在、障がいのある生徒や学生の日本語版Self-determination(自己決定)尺度の開発も行っていますが、自らのことを自分で選び、前に進むことができる自己決定力をより高めることができるように、どう学校現場や職業リハビリテーション現場で日本版自己決定尺度を用いた、自己決定力向上プログラムを開発していきたいなと思っています。(271)

健達ねっとのユーザー様へ一言

編集部:健達ねっとのユーザー様(医療従事者のかた、医療関係の仕事に関心がある方)に何かメッセージをお願いいたします。

山口様:Society5.0では、障がいのある方の活躍する場面はこれまで以上に拡がり、身体的な障害の重度さに関係なく「働く」や社会で活躍するが可能になっています。重度の障がいのある方々もこれまで以上に日常の中で、医療ケアを受けることと社会で活躍することの境界線はぼやけていくと思います。是非、職業リハビリテーション領域や教育機関とも密にコミュニケーションを図りながら一人ひとりが「学ぶ」や「働く」を通じて「自分らしさ」を感じることのできる日々の手助けを一緒に担っていただけると嬉しいなと思います。 

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高松大学 発達科学部 子ども発達学科 教授

山口 明日香(明乙香)やまぐち あすか(あすか)

社会福祉士・公認心理師・保育士・特別支援学校教諭専修免許状(知・肢・病)
日本職業リハビリテーション学会(運営理事)
日本発達障害学会(常任編集委員)

  • 社会福祉士・公認心理師・保育士・特別支援学校教諭専修免許状(知・肢・病)
  • 日本職業リハビリテーション学会(運営理事)
  • 日本発達障害学会(常任編集委員)

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