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トップページ>専門家から学ぶ>ドクターズコラム>“認知症の早期発見”を自分事として捉えよう

“認知症の早期発見”を自分事として捉えよう

NTT東日本関東病院 脳神経内科

吉澤利弘 先生

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「認知症」は一つの症状名。その背景には、多くの疾患が存在する

我が国において少子化が叫ばれている今日、年齢を重ねても健康に生活し、可能な限り生産性を発揮し続けられることは、社会にとって重要な命題です。
なかでも「認知症」は、一人の患者さんを支えていくのに必要な医療保険、介護保険などの公の負担に加えて、家族による介護など私的な負担も大きく、今後の我が国の将来を考える上でさまざまな問題を提起しています。

また、ひと口に認知症と言っても、その約半数を占める「アルツハイマー型認知症」のほかに、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症などの「変性性認知症」といわれるもの、さらには、いずれも頻度は少ないものの、治療可能な認知症と称される一群の疾患(「正常圧水頭症」、「甲状腺機能低下症」など多数あり)があります。
つまり、「認知症」というのは一つの症状名であって、その背景には多くの疾患が存在しているのです。

その人がどの認知症にあたるのかを正しく診断されなければ、適切な治療は始められません。
このことを、まずはきちんと理解することが大切です。

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認知症の原因となる疾患によって、治療の選択肢が異なる

ここ15年来、「認知症は早期発見が重要」ということが声高に叫ばれてきました。
その最大の理由は、現在も臨床の場で頻用されている、アルツハイマー型認知症の治療薬と関係しています。

これらの薬剤は、アルツハイマー型認知症の病態そのものを改善させることはできませんが、早期に服用することによって、一時的に認知機能を改善させ、その後の症状の進行を遅らせる効果が示されています。
そのため、認知機能の低下が気になったら、なるべく早期に認知症専門医などを受診し、適応がある場合には服用を開始することが大切です。

一方で、われわれは認知症というとすぐにアルツハイマー型認知症を考えがちですが、すでに述べたように、頻度は少ないものの「治療可能な認知症」が存在します。
それらを正しく鑑別し治療に導くことが、認知症診療の第一歩です。

実際に、長年にわたりアルツハイマー型認知症として抗認知症薬を服薬していた患者さんが、実は「正常圧水頭症」という病態で、脳脊髄液のシャント手術を受けることで認知機能の回復をみた、というような症例も散見されます。

すなわち“認知症の早期発見”には、早期に「治療可能な認知症」を見出し、根本的な治療に繋げるという目的もあるのです。
このためには、まずかかりつけ医に相談し、早期に専門医を紹介受診することが大切です。

認知症を早期発見できれば、介護者の負担軽減にもつながる

アルツハイマー型認知症をはじめとする認知症が早期の段階で発見された場合には、介護保険の申請などを行えば、行政、地域包括支援センターなどにその情報が共有され、早い段階から介護者の負担軽減の対策をとることができます。
特に認知症診療は、かかりつけ医と患者さんのみで完結することはなく、専門医、介護者、ケアマネージャー、訪問看護師、介護ヘルパー、薬剤師など、多職種の皆さんが関わって、初めて有効に成立するものです。

また、アルツハイマー型認知症など、根本的な治療が難しい疾患においては、患者さんが住み慣れた場所で、できるだけ長く安心して生活していけることが診療の目標といえます。
早期に患者さんを支える多職種チームを作り上げることができるかどうかが、介護者を含めた患者さんの幸福のための鍵となるのです。

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現在開発中の新薬は、早期のアルツハイマー型認知症に最も効果を発揮する

皆さんもすでにニュースなどでお聞きになられたかも知れませんが、アルツハイマー型認知症を、その病態機序の面から根本的に治療しようとする薬剤の開発が加速しています。

アルツハイマー型認知症の人の脳内には、アミロイドβ(ベータ)タンパク(Aβ)というタンパクが異常に蓄積しており、この蓄積は、患者さんにおいては認知症症状が顕在化する20年も前から始まっているといわれています。
現在、このAβに対するモノクローナル抗体(特定の抗原だけを認識する抗体)を投与することで、脳内に異常に蓄積したAβを一掃し、さらなる蓄積も防ぐという新規アルツハイマー型認知症治療薬が国に申請され、認可の判断を待っています。

このAβ抗体投与は、認知症のごく早期ないしその前段階で最も効果が発揮されるとされています。
もしこの治療が施行可能になった場合には、アルツハイマー型認知症をできるだけ早期に、正しく診断することが必須となります。

このような点からも、「認知症の早期発見」の重要性はますます高まっていると言っても過言ではないでしょう。

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自治体の認知症健診を積極的に利用しよう

従来、「認知症の早期発見」は、本人、家族や職場の人の気づきをきっかけに医療機関を受診することでなされてきました。
しかし、早期の段階で受診に結びつく頻度は、必ずしも高くはありませんでした。

近年、自治体によっては高齢者に対する認知症検診が施行されるようになり、早期の段階の認知症をより多く見出せる可能性が高まっています。
残念ながら、まだ各地の検診の受診率は低く、一ケタ台のようですが、皆さんのお住まいの地域で認知症検診が施行される場合には、ぜひ受検を考慮されてはいかがでしょうか。

自治体によっては、認知機能の低下が軽度の方のための、運動をはじめとしたさまざまなプログラムを用意しているところもあります。
検診で多少なりとも問題が指摘された場合には、このような資源を積極的に利用することもよいと思います。

また、地域ごとに認知症対策の内容はさまざまですが、それぞれの事情に即した「認知症ガイドブック」や「認知症ケアパス」といった情報資料が、各自治体で作成されています。
患者さん本人や介護者の方に限らず、健康な方も、ぜひ一度ご覧になると役に立つと思います。

「認知症の早期発見」は、発見にとどまらず、その後の早期対策に繋がらなければ意味がありません。
社会の認知症に対する認識の高まりとともに、とることができる対策も、多くのものが用意されています。

これからは「認知症の早期発見」をぜひご自分の問題として認識しつつ、楽しく活動的な日常生活を送っていただきたいと思います。

薬の使い方

NTT東日本関東病院 脳神経内科

吉澤 利弘よしざわ としひろ先生

日本神経学会神経内科専門医
日本神経学会神経内科指導医
日本内科学会認定内科医

  • 日本神経学会神経内科専門医
  • 日本神経学会神経内科指導医
  • 日本内科学会認定内科医

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