(前編より)
スタッフとの文化の違い、インフラの問題、制度の壁…。次々と起こるトラブルに振り回されていた僕を、さらに追い詰めた出来事。
それは、入居者さんの激減でした。
最大の試練:為す術なし…施設が空っぽに
僕がチェンライに来た2月末には5人いた入居者さんが、あれよあれよという間に減っていき、2週間後にはたったの2人に。
これは、さすがの僕も生きた心地がしませんでした。
来たばかりで地域のことも分からない。為す術がない。これには本気で参りました。
でも、じっとしていても始まらない。
僕は、村長さんの家を訪ねて「何でもやります!」と頭を下げ、地域のお寺や教会の行事に飛び込み、必死で顔と名前を覚えてもらうことから始めました。
どう考えても、いきなり現れた怪しい外国人ですよね。
だけど、地域の人たちはすごく協力的で、温かかったんです。
タイ語がまったく通じない僕に、村のおばあちゃんがジェスチャーで「ご飯食べていけ!」と手招きしてくれたり。
炊き立てのもち米を手のひらに乗せてもらった時、ああ、こういう小さな交流が信頼に繋がっていくんだなあって、心から実感しました。
「日本人が介護施設を始めたらしいよ」
そんな口コミが、人の温かさとともに、少しずつ地域に広がっていきました。
その結果、2週間で入居者さんは4人に、1か月後には6人まで増えたんです。
「地域に飛び込むしかない」——その直感だけは、正しかったのかもしれません。
根拠のない自信だけを武器に
こうして、僕の嵐のような1か月は過ぎていきました。
ワークパーミット、水、銀行、スタッフ、おばけ、入居者さん…。
解決しても、また次の問題がやってくる毎日。
正直、介護の仕事をする以前の、“働く”とか“暮らす”っていう土台すらグラグラでした。
「本当にここで、介護を続けられるんだろうか?」
一瞬、そんな弱気が頭をよぎることもありました。
でも、なんでだろう。
「絶対、うまくいく」っていう、全く根拠のない自信だけはずっとあったんですよね。
微笑みの国・タイで見つけた、僕の新しい挑戦。
まだまだ旅は始まったばかりです!