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立位練習は膝を緩めて

立つ、あるいは立っている状態を維持するのは、二足動物であるヒトにとって大変重要な行為です。

お座りができるようになった子どもは、誰に教えられるともなくつかまり立ちを試み始めます。つかまり立ちによって、視線が高くなれば見える範囲が圧倒的に広くなります。そして、自分の世界が広がるという、この上ない喜びを経験します。

さらに一人で立っていられるようになると、歩行はもちろん、遊びを含めた活動の可能性が量、質とも格段に増えます。そのことは、更なる活動へのモチベーションとなり、さまざまな動作獲得へと導く大切な過程となるのです。

 

立つということが重要なのは、何も子どもに限ったことではありません。

何らかの事情で障害を負った方、身体機能低下によって車椅子に頼る生活になって、立つという機会が減ってしまった高齢者にとっても大切です。視界が開け、活動へのモチベーションにつながるのはもちろん、呼吸器、循環器、消化器など身体の大事な機能を活性化させるという意味で非常に重要です。

しかし、子どものように立つという未知の経験にチャレンジしていくこととは異なり、高齢者の場合、転倒やふらつきなど、立つということに伴うさまざまな恐ろしい事態を容易に想像できてしまいます。したがって、立つことに恐怖を感じたり、過度の緊張をしてしまいやすいです。

 

介護が必要な高齢者の立位は、下肢はもちろんのこと、体幹や上肢にいたるまで全身で頑張って立っているという状況であると知っておくと良いと思います。

せっかく立ったのに、全身の緊張で周囲を見渡す余裕すらなかったり、立った状態でトイレで下着を下げるなどの、生活動作にまで至らない場合も多いのです。

一方で、立つことや歩くことへは意欲的な方が多いのも事実です。立つという動作をリハビリしていく場合、立ち上がる、立っていられるということだけにとらわれるのではなく、その先を見越した練習をすると良いと思います。それには、少しでも緊張を緩めた立位をとれることが大切です。

恐ろしさを感じて立っている方に「リラックスして下さい」と声かけしてリラックスできるほど簡単ではありません。まずは、「少し膝を緩めてみませんか?」と立った状態で軽く膝を曲げてみていただくことを提案してみて下さい。膝を緩めた立位では、立位に少し余裕が出て、下着を下ろすなどの活動につながる可能性も高まります。

ぜひ、試してみて下さい。

 

全身を緊張させて必死で立っている様子(左)/膝を少し曲げて余裕のある様子(右)

 

筆者
大堀 具視(おおほり ともみ)
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