ゆっくり座る

大堀 具視
大堀 具視作業療法士 / 株式会社Start movement代表

 

ワンポイントリハビリ その1

高齢者の足腰の筋力の衰えは、気づかないうちに徐々に忍び寄ってくるものです。病気などしない限りは、食事やトイレはもちろん、家事や外出などを含めいつもの生活が送られますから、体の衰えには気づかないものです。

もちろん、いちいちわずかな体の衰えを気にして生活するのは楽しくありませんから、気づかない、あるいは気づかないフリをして日々いつもどおり過ごすことのほうが健康的と言えるのかも知れません。

 

しかし、人間の体は正直なもので、本人が意識しなくても衰えを補うように、あるいは少しでも楽に動作できるように自然と動作のやり方が変化していきます。例えば、テーブルや膝に手をついて立ち上がる機会が増えるのは、体は弱いところや、痛いところをなるべく使わないように適応するからです。

そうした微妙な動作のやり方が変化していく中で、体の強いところと弱いところ、さらには得意な動作と不得意な動作の差が少しずつ開いていきます。さらに、弱いところを使う不得意な動作は“やらない動作”へと、そして、やらなくなった動作は“できない動作”へと変わっていくのです。

 

手をついて立ち上がる、壁に伝って歩く、それで本人が楽に安全に動けるのであれ何も悪いことではありません。しかし、手の力にたよる分だけどうしても足腰は衰えてしまいやすいです。足腰の筋力を衰えさせない一つオススメがあります。

それは“ゆっくり座る”ただそれだけです。

足腰の筋力の衰えで分かりやすいのが、椅子などに腰かける際に途中でスコンと力が抜けてしまい尻もちをつくように座ってしまうという現象です。立つは重力に勝とうする動きです、一方、座るは重力に負けていく動きですが、重力に対して早々に降参してしまうのが尻もちをつくような座り方です。

生活する中で重力に勝つ、あるいはゆっくりと負けることをとおして私たちの筋力は維持されているとも言えます。つまり、重力に簡単に負けることは、立つ、歩くなどの動作ができないことにもつながってしまうのです。

“ゆっくり座る”がオススメなのは、一つに、立つ、歩くと違ってこれから危険に向かってスタートする動作ではなく、座位姿勢という安全が保証されているゴールまであと少しの動きだからです。

最後のひと頑張りとして動機づけしやすいのと、ゆっくり座ろうとすると自然に体をかがめていく動きになりやすいので、筋力を使うと同時に体の柔軟性にも良い影響があります。体の柔軟性があることで、弱い筋力でも動作がしやすいという良い循環ができあがります。“ゆっくり座る”はちょっとしたリハビリだと思って習慣にしてみて下さい。

 

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筆者プロフィール

やさしい在宅介護
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
やさしい在宅介護
北海道出身。株式会社Start movement代表、作業療法士。著書に「お互いが歩み寄る介護実践45のヒント」「利用者の"動き出し"を引き出すコミュニケーション」などがある。
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大堀 具視
大堀 具視
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
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