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「人生のラストに笑いと生きがいを」介護エンターテイナー石田竜生が贈る”笑いの力”

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「介護エンターテイナー」の原点と“笑いの力”

私は現在、「介護エンターテイナー」として、作業療法士の専門性と芸人として培った“伝える力”を掛け合わせながら、介護予防・健康づくり・コミュニケーションをテーマに、全国で講演や実践活動を行っています。
活動拠点は大阪・東大阪の地域拠点「おふとんハウス」です。

高齢者が自然と集まり、笑って、話して、ちょっと体を動かせる。
そんな場所を目指して、カフェを中心に多世代交流や地域活動を続けています。
私がこの道に進んだ原点は、介護施設で作業療法士として現場に立っていた日々にあります。

高齢者の方々の生活は、外から見れば平穏に見えるかもしれません。
けれど実際は、「小さなピンチ」が毎日のように起こります。
転びそうになる、物の名前が出てこない、財布や眼鏡が見当たらない、冷暖房を間違える、薬を飲んだか分からなくなる、家族に同じ話を繰り返してしまい、気まずくなるなど。
どれも、年を重ねると誰にでも起きる“あるある”です。

けれど当事者にとっては、とても深刻です。
なぜならそれは、単なる失敗ではなく、「できていたことが、できなくなった」という実感と結びつくからです。

老いは誰にとっても初めての体験です。
できないことや物忘れが出てきて不安になったり、悲観してしまったりするのは当然のことです。
けれど、そこで自分を責めたり、周囲から責められたりすると、心が閉じてしまいます。
さらに、心が閉じると人は動かなくなります。
注意されても反発する、危ないと分かっていても同じことを繰り返してしまう
私は現場で、その“悪循環”を何度も見てきました。

その中で、ひとつわかったことがあります。
それは、高齢者ご本人が「自分のピンチ」を笑いに変えられた瞬間、場の空気が一変するということです。

「これ、私のことやなあ」
「笑ってる場合ちゃうけど、でも笑えるわ」
そんな一言が出たとたん、表情が明るくなり、周囲も笑い、会話が生まれる。
会話が生まれると、「じゃあ、どうしたらええかな?」と次の工夫が自然に出てくる。
私はこの流れこそが、介護予防の大事なポイントだと確信するようになりました。

介護予防というと体操や脳トレ、健康教育などが先に来がちです。
しかし、いくら正しい方法を伝えても、本人の気持ちが追いつかなければ続きません。
人は「わかっている」だけでは動けない。
動くためには、“やってみよう”と思える入口が必要です。
私にとってそれが、「笑い」でした。

笑いは軽く見られがちですが、現場ではむしろ真逆です。
笑いは、人の心を開き、行動のハードルを下げる“非常に実用的な力”です。

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“現場の声”を集めて、“場をつくる”一冊に

本書『解決! 高齢者のピンチ』は、介護施設や地域活動の中で生まれた“現場の声”が土台になっています。
日々の何気ない出来事、利用者さんの一言、家族の困りごと、現場の職員の「これあるあるですよね」という声など。
それらを、川柳という短い言葉に落とし込んだところ、反応が驚くほどよかったのです。

川柳は、説明がいりません。
短い言葉の中に状況が立ち上がる。
だから、読み慣れていない方でも理解しやすく、そして何より「自分ごと」になりやすい。

読む前は無表情だった方が、一行読んでふっと口元が緩み、「昨日の私やん」と笑い出す。
ひとりで読んでもクスッと笑えるし、みんなで読むと共感の笑いが広がります。
私はその様子を見て、「これは“読む本”ではなく、“場をつくる本”になる」と感じました。

ただし、笑って終わりでは意味がありません。
高齢者のピンチの中には、本当に生命にかかわるものもあります。
転倒、誤嚥、熱中症、詐欺被害など、軽く流せないことはたくさんあります。
だからこそ本書では、“笑いを入口にする”と同時に、必ず「回避の工夫」や「今日からできる対策」につなげることを徹底しました。

具体的には、川柳とイラストで“あるある”を示し、そのあとに
・なぜそのピンチが起こるのか(身体・認知・環境の視点)
・どうすれば回避できるのか(暮らしの工夫)
・簡単な体操・脳トレ(介護予防の視点)
を見開きでまとめています。

ポイントは、“説教”にならないことです。
本人を責めず、家族も責めず、現場の職員も疲弊させない。
笑いながら「じゃあ、こうしよか」と言える空気をつくる。
そうすれば、危険なピンチほど対策が広がります。

また、文字やイラストはできる限り大きくし、短時間でも読み切れるように構成しました。
イラストを担当していただいたのは「小林みそ」さんです。
思わず「あるある」と笑ってしまうユーモアがあり、高齢者のピンチ場面を深刻にしすぎず、やさしく受け止められる空気をつくってくれます。

読む人の心をふっと軽くし、「笑って気づく」きっかけになる点がとても好評です。
集中力が続きにくい方や活字が苦手な方でも、“パッと開いて、パッと笑えて、すぐ実践につながる”本にしたかったからです。
読む場所も選びません。
リビングで家族とデイサービスのテーブルや病室での気分転換に、スタッフルームでレクのアイデア出しなど。
いろいろな現場で“そのまま使える”ことを意識してつくりました。

「笑い」が人生の生きがいにつながり、一緒に笑い合える時間を願って

「笑い」が人生の生きがいにつながり、一緒に笑い合える時間を願って

私はこの本を通じて、「老い」をネガティブに隠すのではなく、笑いながら受け止め、行動につなげる社会をつくっていきたいと考えています。
高齢者ご本人にとって大切なのは、できないことを指摘され続けることではなく、「まだできること」「工夫すれば続けられること」を実感できることです。
そして家族にとって大切なのは、注意や心配だけで関係がギスギスするのではなく、「一緒に笑い合える時間」が日常の中にあることだと思っています。

介護や老いの話題は、どうしても重くなりがちです。
しかし私は現場で、「笑いがあるだけで、人は驚くほど前向きになれる」ことを見て、経験してきました。
笑いは現実逃避ではありません。
むしろ、現実を受け止めるための力です。
深刻な問題ほど、正面から言われると心が固まります。
だからこそ、笑いという“やわらかい入口”が必要になる。
これは、介護現場だけでなく、地域社会全体で共有できる考え方だと感じています。

今後は、本書をきっかけに、講演や研修、地域の介護予防教室、施設でのレクリエーションなど、さまざまな形で「笑い×介護予防」の取り組みを広げていきたいと思っています。
とくに、介護施設や地域の集まりで“そのまま使える”という声を多くいただいているので、現場での活用事例をさらに蓄積し、より実践的な形で共有していくことも考えています。

また、私の拠点である「おふとんハウス」のように、地域の中に「高齢者が笑って集まれる場所」を増やしていきたいという思いもあります。
介護は家庭だけの課題ではありません。
地域全体で支える仕組みが必要です。
そして地域で支えるためには、まず“つながり”が必要です。
そのつながりを生む最初のきっかけとして、「笑い」はとても強い。
笑っている人のところには、人が集まるからです。

この本は、どこかの誰かを批判したり、特定の価値観を押しつけたりする本ではありません。
ただ、「老いは怖いもの」だけで終わらせず、「老いは笑いながら向き合えるもの」に変えていきたい。
そのための最初の一歩として作った本です。

ピンチは見方を変えれば、気づきです。
気づきは行動に変わります。
そして行動は、未来を変えます。
その入口に、笑いがある。
私はこの“力”を信じています。

『解決! 高齢者のピンチ』が、高齢者ご本人にとっては“心が軽くなる一冊”に、家族にとっては“会話が生まれる一冊”に、現場の職員にとっては“明日から使える一冊”になれば幸いです。
そして何より、笑いを通じて、「人生のラストに笑いと生きがいを」という私の願いが、少しでも多くの方に届くことを願っています。

解決!高齢者のピンチ どんなピンチも笑いに変えるあるある川柳40選
今日から使える体と脳のトレーニングが満載!
どんなピンチも笑いに変えて乗り越える!

解決!高齢者のピンチ どんなピンチも笑いに変えるあるある川柳40選
定価:1,760円(税込)
2025年12月25日発売
B5変形/128ページ
ISBN:978-4-05-802646-5

一般社団法人介護エンターテイメント協会 代表

石田 竜生いしだ たつき

作業療法士
ケアマネージャー
芸人

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