歩行器は便利で安全か?

大堀 具視
大堀 具視作業療法士 / 株式会社Start movement代表

 

ワンポイントリハビリ その3

足腰が弱くなられた方の歩行を支援する福祉用具の一つに歩行器があります。歩行器といっても様々なタイプがありますが、ハンドルのついた手押し車やサークル状(馬蹄形)の肘乗せに寄りかかりながら押し進めることのできるものなど、いずれにしても足腰にかかる負担が軽くなりますし、体重を支えてくれる場所が増えることで、使う本人の安心感は高くなります。

 

しかし、歩行器を使用する上で注意しなければならないことがあります。足腰の負担が軽くなるということは、移動する距離は同じでも足腰の筋肉を使う量は当然少なくなります。その結果、普段どおり生活しているようで少しずつ足腰は衰え、その分だけ歩行器に寄りかかる量が自然と増えていきます。

腕だけで体重を支えるのは困難ですから、気がつくと一人では歩けないという事態に陥ってしまいます。

 

少しでも長く歩行を続けるためのススメがあります。それは、普段は歩行器を使用している方も、家族や介助者がいる時には、手引きや手つなぎでの歩行、短距離であれば何か物につかまりながらの歩行を併用することです。

例えば、立つようになった赤ちゃんはベビー用歩行器で瞳を輝かせ縦横無尽に遊び、自分で移動できる喜び、そして世界が広がる体験は年齢に関係ないと教えてくれます。しかし、ベビー用歩行器を使用し続けても正常に歩くことには繋がりません。歩行器から出て、つかまり立ちをしたり、お母さんに手を引いてもらい歩く経験が歩行という能力を養うからです。

つまり、筋肉やバランス感覚の成長なども、多様な経験をもって果たされているのです。

 

歩行器の使用は、使う本人にとって楽ですし、屋外や長距離の移動には優れている面も多々あります。しかし、私たちはどうしても楽な方に体が慣れてしまいやすいです。歩行器にぶら下がるような体勢で、宙を漕いでいるような使い方は転倒の危険も高くなるため要注意です。

気がついたら歩けなくなったという事態を避けるためにも、屋内や短距離などは、多様な移動手段で行うように心掛けておくと良いと思います。安全で便利な歩行器を使用し、移動することの喜びを生活の中で享受し続けられるためのヒントになれば幸いです。

 

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筆者プロフィール

やさしい在宅介護
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
やさしい在宅介護
北海道出身。株式会社Start movement代表、作業療法士。著書に「お互いが歩み寄る介護実践45のヒント」「利用者の"動き出し"を引き出すコミュニケーション」などがある。
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大堀 具視
大堀 具視
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
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