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本人にとって心地の良い体位交換を

 

ワンポイントケア その5

介護量が増えてベッド上での生活時間が長くなってしまった高齢者の日常のケアにおいて、特に注意しておきたいことの一つに褥瘡(床ずれ)の予防があります。褥瘡が作られる要因にはいくつかありますが、体の一部に外力(圧やズレ)が持続的に働くことが発端となる場合が多いです。

つまり、同じ姿勢で居続けることで褥瘡のリスクが高まります。そこで、一定時間おきに姿勢を変える、体位交換という介助が必要になります。

 

体位交換のコツを考える上で、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALSとします)という病気からヒントをいただくことができます。ALSは全身の筋肉が麻痺していく病気で、原因不明の難病に指定されています。全身の筋肉が麻痺するということは、同じ姿勢で居続けるという褥瘡のリスクは高いように思われます。

しかし、ALSには褥瘡ができにくいという特徴があります。それは、筋肉は麻痺しますが皮膚や関節運動などの感覚機能は失われないため、姿勢の快・不快がはっきりと分かるからです。ALSの方は不快な姿勢を回避するため、介護者に姿勢の微調整を詳細に指示ができます。

したがって、その都度、小さく体の位置を調整してもらえますから褥瘡のリスクは軽減します。

 

ひるがえって、私たちが普段の生活で褥瘡ができないのは、不快を体が感覚的に察知し、少しだけ体の位置を調整することで回避しているのでしょう。不快の回避にはそれほど大きな姿勢変換は必要としていません。

もちろん、一定時間おきに体位交換を行う介護体制がしっかりと整っていれば良いと思いますが、特に自宅で家族が介護する場合には、家族にかかる負担も大きく、自宅介護の継続にも影響します。

 

そこで、本人が体の位置を調整することを大切にした体位交換をオススメします。

例えば体を左右どちらかに向けて体位交換したときに、上になる方の足(左むきでは右足)の裏に枕などを設置して、足でその枕を踏めるようにしておくと良いです。足で踏むことで、本人が体を小さく動かす余地が生まれます。足の裏は大地を踏み締めて自分の体を支える基盤になる場所です。つまり、足の裏で踏む感覚があるだけでも安心感にもつながるのです。

 

一定時間おきに体位交換をしても、もしその姿勢が本人にとって不快で、その後数時間も身動きが取れないのであれば、むしろ褥瘡予防に逆行しますし、かえって余計な体の緊張を作り関節の拘縮(関節が硬くなってしまう)を引き起こす要因にもなってしまいます。

 

体位交換で大切なのは体の向きが変わるという見た目の変化ではなく、本人が安心した姿勢でいられるかどうかです。また快・不快を察知し少しでも自分で体の位置を調整できる、それが保証されるように枕などの配置を工夫すると良いです。