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30秒間じっと立つ

ワンポイントリハビリ その6

足腰がふらつく感じがする、転倒しそうで不安がある。本人にしかわからない体に起こる変化によって、気づかないうちに少しずつ歩く量、活動する量が減ってしまいます。

「動かないでいたら、ますます歩けなくなりますよ!」まわりからそう言われますが、本人はそんなこと百も承知なのです。漠然とした不安があるのにリハビリだからと動け、歩けと言われれば、ますます歩きたくなくなってしまいます。

不安があるのなら歩かなくたっていいんです。そんな時に歩いても恐ろしさばかりが体にきざみこまれ、体にとって良いことはないでしょう。また、体操や筋トレをして足腰に筋力が戻れば不安が払拭されるかと言えば、日常の生活では筋力の変化をそこまで自覚することはありません。

大切なのは「ちょっと歩いてみたいな」、「今日は少し歩けそうな感じがするな」と本人が思える状況です。

転倒の危険があれば誰かがそばで寄り添っている必要がありますので“まずは立ち上がって、じっと立っていましょう”そこから始めると良いです。

私たちの生活は、じっと立っているという場面はほとんど無いため気づき難いのですが、実はこの「じっと立っている」状態でさえ、普段あまり歩かなくなっている人にとっては、結構大変なのです。

じっと立っているときには、体は前後左右常に細かく揺れています。そして、その揺れを感じながら無意識に足の裏でうまくバランスをとっているのが感じられます。少し目線が動いただけでもふらっとして体を立て直す必要があります。

顔の向きを変えるには、立位の維持と体の動きが同時に成立している必要があります。したがって、じっと立っていることには、歩くための大切な準備の要素がたくさん詰め込まれています。つまり、しっかりと自分で自分の体をモニターして、不安はあるけれども、自分で自分の体を支えていると実感できる経験が必要です。

たった30秒ですが、じっと立っていられたのであれば、“どうですか、少し歩いてみますか?”に対して「ちょっと歩いてみたいな」、「今日は少し歩けそうな感じがするな」という返答が返ってくるかも知れません。

30秒は一つの例に過ぎませんが、今日は歩けないな、恐ろしいなと言われる方に対して、まずは、5秒、10秒でもじっと立っているだけからお誘いしてみると良いと思います。その後に「やっぱりちょっと歩いてみるか」と、違う展開が待ち受けているでしょう。それが生活というノンフィクションのドラマです。