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車椅子への乗り移りは最短距離で

ワンポイントケア その8

車椅子の使用は、多くの方にとっては病気や怪我など何らかのエピソードがあったときに初めて体験するものだと思います。同様に介護に携わる者にとっても、実際に車椅子を扱うのは仕事を通してか、家族などに要介護者が出た場合がほとんどでしょう。

車椅子を使用する方が車椅子から他の場所へ乗り移る(移乗動作と言います)場面は、トイレやベッド、食卓椅子やソファーなど一日に何度も訪れます。したがって、移乗動作は車椅子を使用する本人が安全に動作するのはもちろん、介助者にとってもその技術を身につけたい動作介助の一つです。

しかし、移乗動作介助をあまりに技術化してしまうと良いことはありません。介護が必要な人に限らず、人の体はそもそもが千差万別の特徴があります。そこへ持ってきて疾患ごとに、障害ごとに、あるいは障害の軽重によって、さらに車椅子のタイプによってなどなど身につけなければならない項目が膨れ上がると、単純な動作をわざわざ複雑なものに変えてしまいます。

例えば、3人がけの公園のベンチの真ん中に座って日向ぼっこをしているときに、隣に誰か別の方が座ろうとしているのを見れば、自分は端の位置にずれると思います。ベンチの真ん中の席から端の席にずれるのも移乗動作です。

そのとき、おそらくほとんどの人は中腰くらいにお尻を浮かせる程度の体勢で端の位置へずれます。一度しっかりと立ち上がってから、横にカニ歩きして端に移動する人はほとんどいません。それは、単純に効率が悪いからです。

車椅子を使用したことがない方に対して、「腰掛け椅子から車椅子へ(逆でも良いのですが)乗り移って下さい」と求めると、主観ですが9割くらいの方はしっかりと立ち上がることはせずに中腰の体勢まま乗り移ります。

つまりこれは、腰掛け椅子と車椅子の間を最短距離で動作することを意味します。何も指示しなくても多くの方がそうするというのは、移乗動作は最短距離で行われることが無意識に体に染み付いたものであるということです。

トイレやベッド、食卓椅子やソファーなどに座るのは、何も車椅子を使用する方だけに限ったものではありません。ある場所に乗り移って座るという動作は誰でも毎日何度も繰り返しています。その度ごとに無駄な動きがあれば疲れてしまいますから、私たちの生活動作は繰り返すことで無駄を省き、効率よく動くよう体が覚えていったのでしょう。

このことは介護が必要になった方も同じです、技術という名のもとに、のです。単純に最短距離で移乗動作の介助をしてみましょう。