年齢を重ねるにつれて、筋肉は少しずつ衰え、柔軟性や視覚や聴覚といった諸感覚の機能も低下するのは、誰にも避けられないものです。
これらの体に起こる変化によって、人によって様々な生活動作に影響が出始めます。うまく起き上がれない、立ち上がれない、歩きにくい、風呂で体がうまく洗えないなどです。
例えば気に入って買った洋服も、何となく脱ぎ着しにくいと感じるだけでも、気がつけばタンスの肥やしになってしまっていることがあるように、人の動作も、本人がやりにくいと感じていると、徐々に行う頻度が減っていくものです。
タンスの中で日の目を見ない洋服のごとく、生活動作も行う機会が徐々に減り、ついには体の中にしまわれて、行っていないだけで本当はできる動作なのか、あるいはできなくなってしまった動作なのか本人にすらわからなくなってしまいます。
できる動作を体にしまったままにしておくことは勿体無いですし、“できる動作”も行わなければ、そのうち本当に機能が衰えて“できない動作”へと転落してしまいます。
とはいえ、やりにくい動作はどうしても消極的になるものです。
しかも、本人ができないと思ってしまっている動作を、あえて本人に行ってもらうのはなかなか大変で、介護現場などでは対応に苦慮するものです。
しかし、消極的になる、できないと思ってしまっている背景に不安、自信の無さが隠れていることが多いように思います。
介護者など本人とかかわる人は、本人の行う、あるいは行おうとするその動きに対して「うまくできてますよ」と声をかけて差し上げると良いです。
なぜなら、体で覚えている動きは忘れません、しかし体の衰えとともに動作のやり方はその時の体の状態とともに常に変化するものです。
でも一つだけ揺るがない事実は、“本人の動きは全て正解”ということです。
だから「うまくできてますよ」は、決してお世辞でも、おべっかでもありません。
不安や自信の無い中で、何か生活動作を行おうとするその動きを後押しするのは、本人のチャレンジを認めるコミュニケーションにあります。
赤ちゃんの愛らしい動きに未来を期待するように、介護が必要な方がなんとか動こうとされるその姿を認めて、期待してみてはいかがでしょうか。
改めて、“本人の動きは全て正解”なのです。