生活の歯車を回す 〜布団は自分でめくる〜

大堀 具視
大堀 具視作業療法士 / 株式会社Start movement代表

一日の生活は食事やトイレに着替え、仕事や遊びにコミュニケーションなどなど、多くの活動、そしてその活動を構成する無数の小さな心身の働きで成り立っています。それぞれの活動を行っている状態とは、一枚の歯車が単独に回っているのではなく、何か別の活動の歯車が回ったことで別の歯車(活動)が回り出している、そう考えると良いと思います。

つまり、何枚か前の歯車(活動)が回ったことによって、思わぬ歯車(活動)が回り始めるのです。ということは、活動は何でも良いので、まず活動の歯車を回してしまえば、少なくとも次の歯車が回り出す可能性は高くなるわけです。

例えば介助が必要な方にとって眠りから覚めた朝は、ベッドから起き上がるにも本人の能力は発揮しきれず介助量が多くなりやすい場面です。体にまとった布団も何気なく介助者によってはがされます。“ちょっと待った!”一日の歯車の最初の一枚は布団をめくる活動ではないでしょうか。

布団を身にまとったまま食事や外出をしている人はもちろんいません。そこで、生活という歯車を回すために、本人に布団をめくってもらう、本人に一枚目の歯車を回してもらうのです。布団を足下までめくるのは意外に大変な作業です、したがって胸元少しだけめくりはじめてくれさえすれば良いです。歯車は一周せずとも、少しでも回れば次の歯車に何らかの力は及ぼします。

1分でも眠りをむさぼろうとしていた子どもの頃を思い出してみて下さい。「起きなさい!」と親から剥がされた布団は、一瞬に奪い返して布団にくるまった経験があるはずです。

誰かに歯車を回される、つまり介助の手を出されることは、歯車が逆向きに回ってしまい(介助に抵抗する)生活がスタートしない、流れていかない原因にもなってしまいます。逆に渋々とでも、自分で布団をめくりはじめたら“しょうがない、起きるか”と覚悟が決まり生活がスタートします。

介助が必要な方も同じです。一人では起きられないからといって布団までもさっさと介助者が剥いでしまうのはもったいないです。胸元だけでも、あるいは自分でめくろうとするだけでも良いです。「布団を自分でめくってもらえますか」から始めてみて下さい。

布団をめくる最初の歯車を回した人は、ベッドから起き上がるという次の歯車が少しだけ軽くなっています。きっといつもより自分で動き出す様子に驚かれると思います。

さあ、一日の始まりです。

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筆者プロフィール

その他
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
その他
北海道出身。株式会社Start movement代表、作業療法士。著書に「お互いが歩み寄る介護実践45のヒント」「利用者の"動き出し"を引き出すコミュニケーション」などがある。
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大堀 具視
大堀 具視
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
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