“自分でやった感”を大切に 〜支えて待ってみる〜

大堀 具視
大堀 具視作業療法士 / 株式会社Start movement代表

腹筋の弱い方に腹筋運動を行ってもらうときには、膝下を床に押しつけるように支えてあげると、弱い筋力でも何とか上体を起こしてくることができます。

筋力が弱いからといって、上体を押し上げるのを他の人が手伝ってしまうのでは、トレーニングとして意味がないと分かっているから、「脚を支えておきますから、頑張って上体を起こしましょう」となるのだと思います。

脚を支えられた場合と誰かに背中を押し上げてもらった場合とでは、使う腹筋の力にそれほど大きな違いはないのかも知れません。それでもトレーニングとしては、脚を支えるほうが選択されます。大きな違いがあるとすれば“自分でやった感”なのだと思います。自分でやった感があるから、また次頑張ろうとなり、少しずつ腹筋の回数も増えていくのでしょう。

自分でやった感が運動、つまり動くことへのモチベーションになるのなら、介護にも応用できるはずです。例えばベッドから起き上がる動作は、上体が起き上がって座位になる動きですから、動きとしては腹筋運動とそれほど変わりません。

起き上がり動作を介助するときも上体を起こして差し上げるのではなく、介助者は脚をしっかりと支えて、相手が起き上がってこようと努力する動きを持ってみると良いです。。例えば歩行の際に使う杖が脚の支えを補い、もう一方の脚を出しやすくしているのと同じ原理です。

他にも、立ち上がる前には車椅子の背もたれから上体を起こしてくる必要がありますが、立ち上がるのに介助が必要な人ほど、このようなちょっとした動きも介助されていることが多いようです。さりげなく介助者が膝を床に押しつけて支えを作って差し上げると、意外にも簡単に本人が上体を起こしてくれたります。しかし、この程度でも自分でやった感を味わうことができます。

介護が必要な人にとって少しでも自分でやった感が大事なのは、一つの動作で味わう自分でやった感、その延長にある次の動作へつながっていくからです。先ほどの立ち上がる動作で説明しますと、一人では立ち上がることはできなくても、車椅子の背もたれから自分で上体を起こしてくる、そうすると今度は自分から立ち上がろうという動きにつながりやすくなるのです。

たとえその先が介助であっても、立ち上がろうとする小さい動きの積み重ねは、人生という長い時間で見ると確実にその人の身体機能の維持に貢献しています。

健康長寿の方たちが皆、毎日特別な運動プログラムをこなしているわけはないと思います。いつも通りのことをいつも通り行う、つまり、自分でやった感の延長に生活の維持があります。自分でやった感を大切にする「支えて待つ介護」を心掛けましょう。

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筆者プロフィール

その他
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
その他
北海道出身。株式会社Start movement代表、作業療法士。著書に「お互いが歩み寄る介護実践45のヒント」「利用者の"動き出し"を引き出すコミュニケーション」などがある。
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大堀 具視
大堀 具視
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
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