「私の手を離しても良いですか?」

大堀 具視
大堀 具視作業療法士 / 株式会社Start movement代表
ワンポイントコミュニケーション その18

 

介護と一口に言っても、介護を必要とする本人の生活や心身の状況によって、必要とする内容はさまざまです。

中でも身体介護は本人の体に直接触れて行う介助行為です。他人の体に触れる、本人にとっては他人に触れられるというのは、お互いに緊張感のある営みです。

特に介護者は、例えば本人に起きていただく、立っていただくというなどの介助一つとっても、ベッドからの転落や転倒の危険がないよう、本人が不安や恐怖を感じないよう慎重にも慎重を重ねて介助します。

本人の体に添えられた介護者の手は、安全が確保されるまでは離すわけにはいきません。

誰かの手が常に添えられているということを、本人の側から考えてみますと守られていると感じられるのは確かだと思いますが、一方で介護者がいなければ一人ではその行為をできない、あるいはできないと思われているという自己評価を無意識に抱いてしまっているかもしれません。

一人ではできないという思いは、ますます介助への依存心を高めてしまいますから、本人にとっても介護者にとっても良い事態とは言えません。

 

本人の体に添えられた手を少しでも離してみる、そんな瞬間があるだけで本人に対する認識が変わりますし、本人にとっても自信や更なる動きを取り戻すきっかけになります。

例えば、ベッドから起き上がるための介助をしていると、本人も頑張って起きようと努力されることはよく見られます。そんな時に「私の手を離しても良いですか?」です。

起き上がって本人が座られた後に「私の手を離しても良いですか?」です。

手を添え続けている時には、その手には起き上がれない、座っていられないという感触を感じています。

しかし、「私の手を離しても良いですか?」と本人に声かけして、「いいよ」、「大丈夫」などという返答を確認して手を離してみると、意外にもその手が常に必要ではなかったのだと気づくことができるはずです。

 

本人にとっても、自分で少し起き上がれた、一人で座れたという経験が、次の動作にチャレンジするモチベーションにもなります。

また、介護者も本人に対して、まだできることがあるのではないかと介助のやり方や介助の量を変更するきっかけにもなります。

「私の手を離しても良いですか?」と本人を信用してみて下さい。

 

「私の手を離しても良いですか?」(座位で利用者に肩に回した介助の手)、できるんだと認識を改める介護者(信用されていると感じモチベーションが上がる本人)

 

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筆者プロフィール

やさしい在宅介護
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
やさしい在宅介護
北海道出身。株式会社Start movement代表、作業療法士。著書に「お互いが歩み寄る介護実践45のヒント」「利用者の"動き出し"を引き出すコミュニケーション」などがある。
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大堀 具視
大堀 具視
作業療法士 / 株式会社Start movement代表
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