ワンポイントケア その18
介護施設では、利用者の日々の様子や体調などの変化を記録に残す義務があります。
職員は1日の業務を終えて、その日の関わりを振り返りながらパソコンなどを用いて、文字にして入力し保存します。血圧や体温などのデータはメモを残しておけば、後から正確に入力可能です。
しかし、言葉や感情のやりとりなどのエピソードについては、その日のこととはいえ正確に思い出して、さらに文字に置き換えるのは大変な作業です。事実と文字に起こした記録にはいささかの乖離は生じてしまっているのが現実だと思います。
記録を残すことには、職員間で情報を共有するという大切な意味があります。勤務のない日や夜間の様子を把握するには、口頭での申し送りの他、日々の記録も重要な情報となります。
しかし口頭での申し送りにしても文字の記録にしても、話す人、書いた人の主観が少なからず入り込んでしまいますから、伝言ゲームではありませんが、事実は人づてに歪曲したものになってしまう恐れもあります。
実際に利用者と直接お会いすると記録とは異なるイメージを持つことも少なくありません。伝聞や文字の危うさが浮き彫りとなる瞬間です。
そこで、映像で記録することが役立ちます。子供の成長を記録したホームビデオは、見返すとその時のありのままが再現されるばかりではなく、会話や感情までをも思い起こさせてくれます。
ありのままの再現ですから、主観が入り込む余地はありませんし、そのありのままをどう解釈するかは各々の職員の利用者との関係性や経験に委ねれば良いのです。
何より、利用者を誤って理解するのは避けられると思います。
「なるほど昨日そんなことがあったのですね、では私なりに関わり方を考えてみます」という普段の仕事が、映像で確認することによって、事実に基づいた無駄のないものとなります。
また、映像に映る他の職員による関わりの様子は、そのままコミュニケーション技術や介護技術の伝承にも活かされます。
感染症の流行などで今後も面会が叶わない事態は起こり得ます。映像はオンライン面会以上に本人の生活の様子を醸し出してくれることでしょう。
スマートフォンで手軽に映像を残せる時代、介護施設も記録についての考え方や手段も変化していって良いのではないでしょうか。






