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和田流 ケンカの仲裁法

遅刻して申し訳ありません
和田行男

 

よくある質問に「利用者・入居者同士がケンカとなった時に、どのように対応するのが良いでしょうか」があります。

毎回、書かせていただいている「高校生からの質問」でもあげられていましたので、これについて書かせていただきます。

質問者が描く「利用者の状態」にもより、一概に言えないのですが、それも含んでお読みください。

 

人の行動から考察すると

介護業界に転職する前、20歳代のときに京都の祇園に後輩と一緒に繰り出しました。

祇園の交差点で信号待ちする人たちがたくさんいたので後輩に「やるでぇ」と告げて「あること」をしました。

あとから後輩に聞くと「和田やんが何をやるかはわからんかったけど、いつも通り出たとこ勝負だと思ってたワ」と言っていましたが、
信号待ちしている人の輪の中にいる僕が空を見上げて大きな声で「ワァーッ」と手で空を指して叫ぶと、僕の周りにいた人たちのほとんどの人が空を見上げていたそうです。

それと同じですね。

 

ケンカの根はステキな意思表示

まず、利用者・入居者同士の「ケンカ」をどう考えるかですが、僕はケンカは「ステキな意思表示」と捉えています。

もちろん「ケンカ」にもいろいろありますが、「いきなり手を出し合う」というより、まずは言葉を使って「言い争い」となることが多いのではないでしょうか。

言い争いは、自分が思うことを出し合うことに端を発し、相手が自分の言うコトと違う時に起こると思いますが、
根は「思うことを相手にぶつけられる」ということですから悪いコトではないですね。

又、「あなた、こうこう・こうしなさいよ」といったように利用者・入居者が利用者・入居者に対して一方的に言い放つという場合もありますが、
これは「言い合う」とは違うので「ケンカ」とは切り離して考えます。

 

人は誰もが「ここは、こうしよう」といったように「状況や場」を判断して行動しますが、
脳が病気にり患すると、こうしたことにまで影響を与えてもおかしくはありません。

又、介護保険事業所では、そこを利用・入居するまで、ほとんどの方が、会ったこともない人同士であり、しかも生きてきた中で経験したことも違う者同士が集まりますので、
思いもかけない事態が起こっても不思議ではなく、「思いもかけないことが起こり得る可能性がある」と考えておくことも必要です。

しかも「集まる」のではなく「集められる」なら、ベースが違いますからね。

 

逆に、認知症の状態にあったとしても「人と人の関係性」を積み上げられなくなるわけではなく、
「利用者・入居者同士が互いに助け合えるように」を意識して関係性構築への支援をしていくことが大事です。

 

気になるコトが起こるとそちらに気が向くのは普通にあること

人は、今自分がしていることよりも気になることが起こると、そちらに気を向けてしまうのではないかと思いますが、皆さんはどうですか?

 

僕と職員さんが大事な話をしているときに、他者が何かを床に落として大きな音がすると、一瞬でもそっちを向いてしまう人がいます。

緊張感の高い採用面接のときでさえ、音がした方向を向かれる応募者がいます。

もちろん、自分にとって大事な話であればあるほど、話をしてくれている目の前の人の話を聞き続ける人もいますが、
僕が対話してきた方の中では音がした方向を気にされる方が多かったです。

子どもと真剣な話をしているときだと「ちゃんと話を聞け」と言ってしまいますもんね。

 

つまり、僕がよく言っている「人は、自分にとって意味や目的の大きい方に行動する」という話と同じですが、
ケンカしている二人にとって「目の前の人とケンカしている場合じゃないコト」が起こるとケンカは中断されることでしょう。

そういう事象は、人の社会ではあちこちで起こっていることで特別なことではないはずで、
読んでくださっている方にも経験あることではないでしょうか。

つまり、人にとっては「普通にある行動」だということです。

 

どちらかに加勢しやすい仲介

もうひとつ思うのは、利用者同士のいがみ合い等が起こると職員さんは仲介しようとする言葉や行動をとる方が多いように思いますが、
多くの場合、どちらか片側に加勢されます。

認知症という状態にある人たちが暮らすグループホームで「ケンカ」は起こりやすいのではないかと思いますが、
わかりやすく簡単に「強い入居者」「弱い入居者」と言わせていただくと、多くの職員は「より弱い入居者」の側に加勢してしまうのではないでしょうか。

つまり、コトの内容はどうあれ「強い入居者」に対して「引き離す」「たしなめる」といった行動をとるということです。

そうすると「いつも、あの人のことをかばうんだから」というような言葉に代表されるように「二次被害」を招きかねません。

 

どちらかに加勢するのではなく場を転換できるように且つ笑いで終わるように

僕は、ケンカしているどちらの側にも加勢しない方法で且つ、一瞬にしてその場の空気感を転換できる振る舞いを瞬間に考えて実行に移してきました。

もちろん、うまくいかないときもありましたが、それも想定して「次の手」も同時に思考しておきます。

又、もう一つ大事なことは「ケンカという出来事」は忘れたとしても「イヤな人がいる」「イヤなことがあった」という感情記憶を打ち消す一手になるようにすることです。

 

例えば、ケンカしている二人の前で、職員であるあなたが、コミカルに声を出して躍り始めたら、その二人はどうされるでしょうか。

コミカルな踊りは、「ケンカしている場合じゃないコト、一瞬して場を転換できるコト、笑えるコト」を充たせていませんか。

しかも、それを職員という「普段から見ている人・知っている人が踊る」のですから「あなた、なにやってるの、バカね」といった冷めた反応まで含めて、まず「気」はあなたに向くことでしょうし、
その上で、そこで止まらずに笑えるところまでもっていく「一手」を打つということで感情記憶のてっぺんに「快」をおくようにするということです。

 

追伸

2025年は、介護福祉士の資格をとれる大学や専門学校に入学する人の数が前年度を上回り、
それも2年連続増加したようで定員に対する充足率も8ポイントほど増え67%ほどになったと報道されていました。

ただし、増加した要因は「海外からの留学生の増加」で且つ、初めて日本人数を上回ったとのことです。

過去3年間でみると
2023年入学者数 6,197名中 留学生 1,802名 日本人 4,395名
2024年入学者数 6,546名中 留学生 3,054名 日本人 3,492名
2025年入学者数 7,356名中 留学生 4,047名 日本人 3,282名
だそうで、これをどう考えるかです。

例えば、ある法人の状況を聞くと、海外人材は総数25名だそうですが、
その数をグループホームで例えるなら「グループホーム2事業所4ユニット分の職員数」となりますし、
単純に利用者3名に対して職員1名の「3:1基準」で考えると、特養だと「定員75名分」に相当します。

だとしたら、この25名の海外人材がいないとなると、
グループホーム入居者36名、特養入居者75名が住居を失うということになります。

これを全国規模で考えると恐ろしい事態で「日本人のことは日本人の手で」を強調されていた政党の党首がいましたが、「どうすることで解消しようと考えているのか」をお尋ねしたいものです。

僕が、海外から介護福祉士を目指す入学者数が増え入学者総数が増えたことを良かったと単純に思えないのは、
まだ自分の思考を煮詰めてはいませんが「日本が移民を受け入れない国」なのに、日本人がやらなくなった社会的に必要な職業を「海外人材活用策」で補っているとしか思えない現状に「?」を感じているからなのかもしれません。

 

キラキラと光る水面の上、アスレチックの浮き島を元気にジャンプして飛び移る女の子
春になってきました。建屋にこもって携帯電話やゲーム機に支配されていたであろう子供たちが外に出て、自然を浴びた遊び(自然な学び)に還ることを願うばかりです。

 

和田 行男 さん

1987年、日本国有鉄道から介護業界へ転身。1999年には、東京都初となる認知症高齢者グループホーム「こもれび」の施設長に就任した。淑徳大学客員教授。