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あらすじ
能楽の人間国宝である父・寿三郎に反発し、プロレスラーになった観山寿一。
父が脳梗塞で倒れ介護が必要になったことから、長男として実家に戻ることを決意する。
しかし父は突然、全ての遺産を謎の女性・さくらに相続すると告げる。
寿一は弟の踊介や幼馴染のプリティ原、そして正体不明のさくらと共に、父の介護に全力で取り組みながら、家族の絆を取り戻していく。
やがて寿一は、父の跡を継ぐという新たな人生の意味を見出していく。
特徴・見どころ
長瀬智也さん主演、宮藤官九郎さん脚本という強力なタッグが、真正面から「介護」というテーマに挑んだ金曜ドラマ『俺の家の話』を紹介します。
これは、単なるホームドラマの枠を超え、私たちの誰もが直面しうる現実を描いた、笑いあり涙ありの物語です。
元プロレスラーの主人公が、能楽の人間国宝である父の介護のために現役を引退するという、異色の設定が大きな注目を集めました。
「プロレス」という肉体の激突と、「能」という伝統の静寂、そして「介護」という日常の現実。
これら相反するように見える要素が、宮藤官九郎さんならではの巧みな脚本によって、深い感動を生む唯一無二の物語へと昇華されています。
家族とは何か、生きるとは何かを、改めて深く考えさせてくれる作品です。
絶縁状態の父と息子。介護から始まる「家族の再構築」
主人公の観山寿一(長瀬智也)は、かつて人気を博したプロレスラーです。
しかし、度重なる怪我や体力の衰えにより、今は細々と活動を続ける「ピーク過ぎたレスラー」でした。
一方、父の寿三郎(西田敏行)は、重要無形文化財「能楽」の保持者、いわゆる人間国宝です。
寿一は、この偉大すぎる父に反発して20年以上前に家を飛び出し、家族とは絶縁状態にありました。
そんなある日、寿一のもとに「父危篤」の知らせが届きます。
病院に駆けつけた寿一を待っていたのは、奇跡的に一命をとりとめたものの、後遺症により介護が必要となった父の姿でした。
父の口から飛び出した言葉に、寿一はプロレスラーを引退し、父の介護を自ら担うことを宣言します。
ここから、20年以上の空白を抱えた父と子の、壮絶でありながらもコミカルな介護生活がスタートします。
長男としての責任、父への複雑な感情、そして親の介護という避けられない現実が、寿一に重くのしかかります。
家を出た側の人間と、家を守ってきた家族との間にある埋めがたい溝も、リアルに描かれています。
本作は、介護を通じてしか向き合えなかった父と子が、失われた時間を取り戻し、関係を再構築していく姿が最大の見どころです。
「在宅介護」のリアルと、家族をかき乱す謎のヘルパー
寿一が実家に戻ると、そこにはすでに父の介護と称して身の回りの世話をする謎のヘルパー・志田さくら(戸田恵梨香)がいました。
父は「さくらと結婚して、遺産もすべて彼女に譲る」と宣言し、家族は大混乱に陥ります。
さくらは本当に父の財産を狙う「後妻業」なのか、それとも純粋に介護に寄り添う天使なのか。
彼女の存在が、観山家にくすぶっていた相続問題や、家族それぞれの本音を炙り出していきます。
また、本作では在宅介護の現実が、一切の美化なく生々しく描かれます。
食事、排泄、入浴といった身体的な介助はもちろんのこと、認知機能の低下や、それに伴う「老い」のプライドとの向き合い方。
介護する側が直面する肉体的・精神的な疲弊。
「家族だから」という言葉だけでは乗り越えられない、シビアな現実が次々と突きつけられます。
能楽の宗家という特殊な家庭環境でありながら、そこで起こる問題は、多くの家庭が抱える介護の悩みと見事にリンクしています。
家族会議で飛び交う、お金の話や誰が介護を担うのかという押し付け合いも、非常にリアルです。
しかし、それらを描くからこそ、家族が父の介護という一つの目的に向かって再び結束しようとする姿が胸を打ちます。
笑いと涙の先に問いかける、「介護の選択肢」と家族の未来
深刻になりがちな「介護」というテーマを、重くなりすぎずに描き切れたのは、間違いなく宮藤官九郎さんの脚本の力です。
プロレスの技を介護に応用するといった奇想天外な展開や、クセの強い登場人物たちの軽妙な会話劇が、絶妙なバランスで笑いを生み出します。
特に、長瀬智也さんと西田敏行さんの、本物の親子のような息の合った掛け合いは圧巻です。
介護される側のいらだちやもどかしさ、介護する側のやるせなさや愛情が、見事に表現されています。
この物語は、私たちに「親が倒れた時、あなたはどうしますか?」という問いを投げかけます。
施設に入れるのか、在宅でみるのか。
仕事と介護をどう両立させるのか。
観山家の人々もまた、様々な介護の選択肢を前に悩み、ぶつかり合います。
彼らが出した答えは、決して唯一の正解ではありません。
しかし、その選択の過程こそが「家族」なのだと教えてくれます。
笑って泣いているうちに、いつの間にか自分自身の家族や、これからの人生について深く考えさせられる。
そんな、観終わった後に温かいものが心に残る、珠玉のホームドラマです。
介護に直面している方はもちろん、今はまだ実感が湧かないという方にも、ぜひご覧いただきたい感動作です。









