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あらすじ
夫婦殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木慶一が脱獄する。
日本各地を逃走しながら潜伏する鏑木は、大阪の建設現場で働く野々村、長野の介護施設で出会った酒井舞など、様々な人々と接触する。
一方、事件の被害者夫婦の母親・井尾由子は若年性認知症を患い、介護施設で療養している。
鏑木は凶悪犯なのか、それとも無実の青年なのか。
彼の本当の「正体」とは何なのか、謎が深まっていく。
特徴・見どころ
もし、あなたの身近に現れた心優しい人が、世間で「凶悪な殺人犯」として指名手配されていたらどうしますか。
あなたはその人を、信じることができますか。
本作『正体』は、観る者すべてに強烈な問いを突きつける、緊迫のヒューマンサスペンスです。
主演を務めるのは、亀梨和也。
彼がWOWOW連続ドラマ初主演で挑むのは、ある夫婦の殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑を宣告されたものの、移送中に脱走する「鏑木慶一」という難役です。
原作は、染井為人のベストセラー小説「正体」。
全国に指名手配されながらも、その「正体」を隠し、行く先々で様々な人物と出会っていく鏑木の逃亡劇が描かれます。
この物語が観る者の心を揺さぶるのは、彼が出会う人々が皆、鏑木によって窮地を救われていくからです。
「本当に彼は、あの残忍な殺人犯なのだろうか」。
鏑木の誠実さや優しさに触れた人々は、報道される「正体」と目の前にいる「彼」との間で、激しく葛藤し始めます。
そして、このサスペンスに圧倒的なリアリティと深みを与えているのが、物語の重要な舞台となる「介護施設」です。
「介護の現場」で描かれる、逃亡犯の知られざる顔
主人公・鏑木が、自身の「正体」を偽り、潜伏先として選ぶ場所の一つが介護施設です。
彼は介護福祉士として働き始め、そこで入居者や同僚たちと深く関わっていくことになります。
本作の大きな見どころは、この介護シーンの徹底したリアリズムにあります。
撮影には、特別養護老人ホームの施設長が介護監修として参加。
そのため、現場の息遣いが伝わるような、非常に生々しい描写が随所に散りばめられています。
例えば、以下のようなシーンです。
- 切迫した状況下での入居者の見守りや介助
- スタッフ間の連携と、時に生じる意見の対立
- 認知症の方への向き合い方における葛藤と模索
- 多忙な業務の中で見失われがちな、一人ひとりへの尊厳
これらは、まさに介護の現場が日々直面している課題そのものです。
鏑木は、逃亡犯という極限の緊張感の中で、介護という「命」と向き合う仕事に真摯に取り組みます。
彼の丁寧な仕事ぶりや、入居者に寄り添う姿勢は、次第に周囲のスタッフの信頼を勝ち得ていきます。
しかし、彼は指名手配中の殺人犯かもしれないのです。
非日常的な「逃亡犯のサスペンス」と、日常的な「介護のリアル」が交錯することで、物語は一層の緊迫感を増していきます。
「介護あるある」が浮き彫りにする、人の「正体」
本作では、介護現場で働く人々が思わず頷いてしまうような、介護の「あるある」も巧みに描かれています。
人手不足の焦り、入居者家族との関係、理想と現実のギャップ。
そうした過酷ながらも尊い日常の中で、主人公・鏑木はどのように振る舞うのか。
彼の行動は、図らずも周囲の人々が抱える問題や、心の奥底にある本音を浮き彫りにしていきます。
私たちはニュースや噂といった「情報」で、簡単に人を判断してしまいがちです。
しかし、その人の「正体」とは、一体何なのでしょうか。
肩書きや過去、世間の評価でしょうか。
それとも、今、目の前で行っている「行動」や「優しさ」でしょうか。
鏑木と出会った人々は、社会的な「正しさ」と、自らが信じたい「真実」との狭間で、重大な選択を迫られます。
信じることの難しさを問う、圧巻のヒューマンドラマ
『正体』は、単なる犯人探しのミステリーではありません。
介護という、私たちにとっても非常に身近な舞台設定を通じて、「人は何を信じるのか」という普遍的かつ根源的なテーマを問いかけます。
亀梨和也が、逃亡犯として追われる緊迫感と、介護士として見せる優しさという両極端な顔をどのように演じ分けるのか、その圧巻の演技からも目が離せません。
もし、社会全体が「悪」だと断罪する人物が、自分にとっては「善」であったなら。
あなたなら、何を信じ、どう行動しますか。
ぜひ、この深く心に突き刺さるヒューマンサスペンスを通じて、ご自身の目で「正体」を見極めてください。









