あらすじ
元ナンバーワンホストの恩田百太郎は、客の新居正美が認知症になったことで介護の世界へ飛び込む。
大手介護事業者「マンモス・ケア」で働きながら昇進を重ねるが、効率重視の「完全マニュアル介護」に疑問を持つようになる。
デイケア、特別養護老人ホーム、在宅介護の各現場で、仲間たちと共に利用者の希望を叶える「個別ケア」を目指し、「理想の介護」を追求していく。
やがて3人は、地域のつながりを生かした新しい介護サービスで独立を試みる。
特徴・見どころ
介護という重いテーマに、真正面から向き合った作品が登場します。
くさか里樹氏による大ヒット漫画「ヘルプマン！」を原作とした、NHK-FMのラジオドラマシリーズ「ヘルプマン -俺たちの介護物語-」です。
介護に直面している方、これから考える方、そしてすべての人に聴いてほしい、現代社会の縮図とも言える物語が展開されます。
介護現場の「リアル」を全5回で濃密に描く
このラジオドラマの最大の特徴は、介護を取り巻く多様な問題を全5回の連続放送で深く、そして多角的に掘り下げている点です。
単なる人情噺（にんじょうばなし）ではなく、介護の現場が抱えるシビアな現実に焦点を当てています。
物語は、介護の定義という根本的な問いから始まります。
そこから、多くの人が直面する可能性のある「在宅介護」の課題。
「認知症」との向き合い方。
そして、目を背けてはならない「介護虐待」の問題や、介護のキーパーソンである「ケアマネ（介護支援専門員）」の役割に至るまで、非常に幅広いテーマを扱っています。
これほどまでに介護の核心に迫る作品は稀有と言えるでしょう。
聴く人それぞれが、自らの状況と照らし合わせながら、介護の「今」を感じ取れるはずです。
理想と現実の狭間で輝く「人の可能性」
物語の中心となるのは、若き介護福祉士たちです。
彼らは「理想の介護」を胸に現場へと飛び込みますが、そこで待っているのは想像を絶する「現実」の壁です。
人手不足、制度の限界、そして介護される側と介護する側の心のすれ違い。
ドラマでは、介護サービスの種類や在宅介護の実際について深く掘り下げながら、彼らがどのように奮闘し、悩み、そして成長していくのかを丁寧に描きます。
失敗や葛藤を繰り返しながらも、利用者一人ひとりの尊厳を守ろうとする姿は、私たちに大きな勇気を与えてくれます。
本作が問いかけるテーマは、「ひとは最後まで輝き続ける」という、人間の根源的な可能性です。
介護は「お世話」ではなく、その人らしい最期を迎えるための「支援」であること。
このラジオドラマは、暗いニュースも多い介護の分野において、確かな希望の光を示してくれます。
日本の介護の未来を、私たち自身の未来を考えるきっかけとなる、必聴の意欲作です。
