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健達ねっと>マガジン>「噛む・飲む・笑う」をいつまでも~ハッピー・オーラル・ライフ~>5月9日は口腔ケアの日

5月9日は口腔ケアの日

皆さん、「口腔ケアの日」をご存じですか?

5月9日は、5(こう)・9(くう)の語呂合わせから、日本口腔ケア学会が制定した記念日です。
6月の「歯と口の健康週間(旧・虫歯予防デー)」の方が馴染み深いかもしれません。
こちらは虫歯予防が中心で、子どもを対象とした取り組みが多いのが特徴です。
保育園や幼稚園、小学校で歯みがき指導やポスターづくりを経験された方も多いのではないでしょうか。

一方で「口腔ケアの日」は、歯磨きだけでなく、「食べる」「話す」「表情をつくる」といったお口の機能全体を守ることを目的としており、成人や高齢者にも深く関わるテーマです。

お口は「身体の入り口」です。
正しく口腔ケアを行うことは、歯を守るだけでなく、「噛めない」「話しにくい」といったトラブルの予防、さらには全身の健康維持にもつながります。
特に高齢者においては、口腔機能の低下が食事量の減少や低栄養、さらには体力低下へとつながるため、非常に重要なケアの一つです。

では、お口と関係する全身の病気にはどのようなものがあるでしょうか。
例えば――

  • 歯周病の炎症が血液中に広がり、インスリンの働きを悪くすることで悪化する糖尿病
  • 口腔内の汚れが気管から肺に入り込むことで起こる誤嚥性肺炎

これらは比較的よく知られています。
さらに、あまり知られていないものとして、重度の歯周病を持つ妊婦は、そうでない方に比べて低体重児出産のリスクが高まることも報告されています。

妊娠中はホルモンの影響で歯肉炎になりやすく、つわりによって歯磨きが不十分になりがちです。
その結果、歯周病が悪化しやすくなります。
歯周病菌が血管を通じて体内に入り、炎症物質が子宮に影響を及ぼすことで、早産や低体重児出産のリスクが高まると考えられています。

さらに歯周病は、動脈硬化とも関係しています。
血管内に入り込んだ細菌が炎症を引き起こし、血管の内側に蓄積することで、脳血管疾患や心疾患のリスクを高める可能性があります。

口腔ケアと全身の健康

「歯周病は歯が抜けるだけの病気」そのように思われがちですが、実際には全身と深く関わる病気なのです。
いわば、お口の中の問題にとどまらない”全身疾患の入口”とも言える存在です。

では、「歯が抜ける」という点にも目を向けてみましょう。
歯を失った場合、入れ歯やインプラントで噛む機能の回復を図ります。
しかし、入れ歯を入れたからといって、元の状態に完全に戻るわけではありません。

自分の歯は、歯槽骨に支えられ、歯根膜というクッションの役割を持つ組織によって守られています。
この構造により、しっかり噛むことができ、食べ物の硬さや違和感も感じ取ることができます。

また、歯は神経ともつながっており、噛む刺激が脳に伝わることで、脳の活性化にもつながります。
こうした刺激は、認知症予防の観点でも重要です。

もちろん、入れ歯でも「噛むこと」は可能です。
何も入れていない状態に比べれば、入れ歯を使って噛める方が、認知症のリスクは低くなると考えられています。
ただし、適切に調整された入れ歯を使うことや、継続的なケアが重要になります。

「口腔ケアの日」をきっかけに、口腔ケアを見直してみませんか。
虫歯や歯周病を予防すること。
そして、「食べる・話す・表情をつくる」という機能を維持すること。
それは、糖尿病、誤嚥性肺炎、早産・低体重児出産、動脈硬化、脳血管疾患、心疾患、認知症など、さまざまな疾患の予防にもつながります

ご自身のためにも、そして利用者様やご家族のためにも。
口腔ケアは、これからの人生の質(QOL)を支える大切なケアです。
日々のケアの積み重ねが、将来の健康を守る大きな力になることを、ぜひ意識していただければと思います。

■著者:豊福 毅 (とよふく たけし)

福岡県久留米市出身。
一般社団法人 口腔機能向上推進協会代表理事、株式会社エスプリアル代表取締役社長。
訪問歯科診療の課題と可能性に触れ、2010年より訪問歯科サポート事業を開始。
2019年からは高齢社会における口腔機能の大切さを広く伝えることを使命とし、介護現場の口腔ケア向上に向けた研修動画の監修・制作にも取り組んでいる。

■監修者:五十嵐 伸江(いがらし のぶえ)

一般社団法人 口腔機能向上推進協会 歯科衛生士/認定心理士