ワンポイントケア その21
普段、あまり行う機会はありませんが、後ろ向きに歩くのはとても恐ろしいことです。理由は単純です、見えない方向に体を移動させなければならないからです。
しかし、見えない方向に体を移動させるのは、実は日常の多くの場面に登場します。それが座る動作です。
座面を目で見て確認し、距離感をつかんでおけば何も恐ろしいことはない、そう想像してしまうのはいつでも自由に動ける人の論理です。
体力の衰えとともに、自ら動くことが少なくなった高齢者の中には、座るという動作が恐ろしいものになってしまう方も少なからずおられます。
トイレの便座になかなかうまく座れない、食卓の椅子までは歩いて来られたのに、椅子に座ろうとしてくれない、などというのは介護施設などでしばしば見られることです。
自由に動ける人にとっては、見るだけで距離感を測り、時には大胆に素早く、時には慎重にゆっくりと、状況に応じていかようにも座れます。
しかし、自ら動くことが少なくなった高齢者、ましてや筋力など自身の能力に不安を感じられていると、見るだけでは距離を測り、かつ自身の能力と折り合いをつけて座るというのが難しいものとなるようです。
腰椎圧迫骨折という高齢者に比較的多い骨折では、いつ骨折したのかわからないケースもあります。尻もちをつくなど明らかに転倒をしたわけでもないのに、腰痛で受診したら圧迫骨折が判明したなどということも多いようです。
そのような場合の原因の一つと考えられるのが、椅子などに座る際にスピードを制御できずに勢いよく座ってしまう、いわゆるドスン座りです。
その時は特別痛みは生じないので、あまり座り方を気にすることもないのですが、ドスン座りが積み重なることで弱った骨が少しずつ潰れてしまい、ついには強い痛みとなって症状を表します。
ドスン座りは、ほんの少し最後のひと粘りができずに加速して座ってしまうのですから、介護者は最後まで気を抜かずに、むしろ最後の最後に細心の注意をはらっていつでも介助の手を添えられるようにしておく必要があります。
座面が見えない中で座っていく、さらに筋力に不安がある中での動作は、本人にとってはある意味ギャンブルです。
その恐怖と不安に共感することができれば、一見安全に感じられる座る動作においても最後まで目を離さないという習慣が身に付くと思います。







