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健達ねっと>健康お役立ち記事>高齢者の病気>腹水がある時期の食事の摂り方を詳しく解説します!

腹水がある時期の食事の摂り方を詳しく解説します!

肝臓病の末期には、腹水によって食事が摂れなくなることがあります。
なぜ腹水がたまると食事が摂れなくなるのでしょうか。
腹水がたまったときは、どのような食事を心がけるべきなのでしょうか。

本記事では、腹水がある時期の食事の摂り方について、以下の点を中心にご紹介します。

  • 腹水がたまる原因とは
  • 腹水がたまると食事が摂れなくなる理由
  • 腹水があるときの食事のポイント

腹水がある時期の食事の摂り方について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

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腹水とは

腹水とは、お腹の中に水がたまった状態です。
お腹にたまった水そのものを腹水と呼ぶこともあります。

腹水は、内臓を囲む腹膜と、内臓の間にある「腹腔」という部分にたまります。
腹腔に大量の腹水がたまると、胴囲が大きくなったり、お腹が丸く張り出したりします。

胃や肺などが腹水に圧迫されて、食欲不振・吐き気・息切れなどの症状があらわれることもあります。

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腹水がたまる原因

腹水は、肝臓の炎症・病気などによってたまることがほとんどです。
腹水がたまる病気としては、肝硬変が代表的です。

肝硬変によって腹水がたまる理由は主に2つあります。
1つめは門脈の血圧が高くなることです。

門脈とは太い血管のことで、肝臓に流れ込む血液の通り道でもあります。
門脈の血圧が高くなると、肝臓に血液が流れにくくなります。

肝臓の入り口でせき止められた血液は血管の外に染みだし、腹水としてお腹の中に蓄積されます。

2つめの理由は、肝硬変がアルブミンの減少を引き起こすためです。
アルブミンは血液の浸透圧(濃度)を調整する物質で、肝臓で生成されます。

肝硬変によって肝機能が低下すると、アルブミンの量が少なくなります。
すると血液の浸透圧調整に支障が出やすくなります。

具体的には、血管内の水分が血管の外に漏れ出します。
血管の外に漏れ出した水分は、腹水となって腹腔にたまります。

腹水を引き起こす肝硬変とは

肝硬変とは、「線維」という物質が増えることで、肝臓が硬くなる状態です。
線維はもともと肝臓の炎症を修復する物質ですが、増えすぎると肝硬変を引き起こします。

肝硬変の原因としては、B型・C型肝炎ウイルスへの感染が代表的です。
あるいは大量飲酒・脂肪肝・肝臓がんなども肝硬変を引き起こします。

肝硬変は進行段階によって代償性と非代償性の2つに分けられます。

代償性肝硬変

代償性肝硬変は肝硬変の初期段階です。
代償性肝硬変では、自覚症状があらわれることはほとんどありません。

肝硬変初期には、肝臓全体に硬化が進んでいないためです。
すでに硬化した部位の働きは、硬化していない部分の細胞がカバーするため、さほど深刻な症状はあらわれません。

ただし人によっては、肝硬変初期から倦怠感・だるさ・食欲不振などの症状があらわれることもあります。

非代償性肝硬変

非代償性肝硬変は、肝硬変がある程度進行した段階です。
代償性から非代償性の肝硬変に移行すると、ハッキリした自覚症状があらわれやすくなります。

代表的な症状には以下があります。

  • 黄疸(眼球・皮膚が黄色くなる)
  • 腹水
  • むくみ
  • 肝性脳症(意識障害)
  • 消化管からの出血による吐血

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腹水の影響で食事が取れない!?

腹水がたまると食事が難しくなることがあります。
腹水で食事が摂れなくなる理由は、主に2つあります。

腹水が胃を圧迫する

食事が摂れなくなるのは、お腹にたまった腹水が胃を圧迫するためです。
胃が圧迫されると、食欲がわきにくくなるほか、胃痛や腹痛が出やすくなります。

吐き気・嘔吐が出たり、お腹がゴロゴロしたりすることで、食欲が減退することもあります。

食欲不振以外の消化器症状

腹水がたまると、下痢・便秘といった消化器系の症状もあらわれやすくなります。
あるいは、腹水で肺などが圧迫されて、息切れ・呼吸困難などの呼吸器系症状があらわれることも少なくありません。

倦怠感やむくみも腹水の代表的な症状です。

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腹水発症時は食事を抜くべき?食事制限は?

腹水がたまっている場合でも、基本的に食事はしてください
むしろ食事を抜くと、栄養不良になって体調が悪化するおそれがあります。

ただし、腹水の状態によっては食事を制限したほうがよいこともあります。
食事をする場合でも、以下のようなポイントに気をつけることが大切です。

バランスのとれた食事

肝硬変で腹水がたまっている場合は、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。
栄養バランスのよい食事は、肝機能の維持・向上に役立つためです。

栄養を十分に摂ることは、肝臓の再生を助けることにもつながります。
1日3回規則正しい食事を心がけることも大切です。

腹水がたまるほど肝硬変が進むと、栄養を肝臓に貯蔵しておくことが難しいです。
栄養不足によるエネルギー切れを防ぐには、1日3回食事を摂って、栄養を定期的に補給する必要があります。

肝硬変の方が注意すべき食事のポイントはもう1つあります。
タンパク質・脂質・カロリーを摂りすぎないことです。

タンパク質・脂質を摂りすぎると、腸内でアンモニアが増えやすくなります。
通常であれば、アンモニアは肝臓などで解毒処理されます。

しかし肝硬変の方は肝機能が低下しているため、アンモニアの処理が効率よく行えません。
肝臓で処理されなかったアンモニアは血流に乗って全身をめぐり、脳や臓器にダメージを与えることがあります。

ちなみに、肝硬変の方は生魚・生卵・生肉などの「生もの」も控えることも大切です。
理由は、肝臓の解毒機能が低下しているため、食中毒が起こりやすいからです。

食べてよい物や、タンパク質の目安摂取量は個人差があります。
具体的な食事内容はかかりつけ医とよく相談してください。

便秘をしない工夫

肝硬変の方は、便秘になりやすい傾向があります。
便秘になると腸内で毒素が発生しやすくなります。

腸内で発生した毒素は、血液に乗って全身を巡ります。
毒素が脳に到達してダメージをうけると、肝性脳症という意識障害を起こすことがあります。

肝硬変の有無にかかわらず、便秘は予防・改善することが大切です。
便秘を防ぐには、食物繊維や水分を適度に摂りましょう

消化によい食事も便秘改善に役立ちます。

飲酒量を減らす

腹水がたまるほど肝硬変が悪化している方は、飲酒は控えましょう
アルコールは肝臓で分解されます。

つまり飲酒は、元々弱っている肝臓にさらなる負担をかける行為なのです。
「少しのお酒ならいいのでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし少量でも飲酒をすると、肝臓に中性脂肪がたまります。
少しずつ中性脂肪が蓄積していくと、やがて脂肪肝に至ります。

脂肪肝は肝硬変の代表的な原因です。
脂肪肝を修復しようとして、肝臓に線維が形成されるためです。

肝硬変の予防・改善のためには、お酒は一切断つのがベストです。

薬の使い方

腹水患者の辛さを軽減するには?

腹水がたまると、腹部膨満感・腹痛・吐き気などの症状が出やすくなります。
不快な症状を軽減するには、次のようなケアが有効です。

痛み止めや利尿剤の活用

腹水による痛みがある場合は、鎮痛剤を服用するのも1つの方法です。
利尿剤も腹水の軽減に役立ちます。

利尿剤とは、尿の量を増やして排尿を促す薬剤です。
体内の余分な水分が排出されやすくなるため、腹水の軽減が期待できます。

鎮痛剤や利尿剤の服用の是非は、個人によって異なります。
医薬品の服用についての自己判断は避け、必ず医師の指導にしたがってください。

食事中の姿勢を工夫する

腹水がたまっている方は、姿勢によってはお腹がつかえることがあります。
お腹がつかえると、胃が圧迫されて食欲がわきにくくなります。

お腹がつかえて食が進まないときは、食事中の姿勢を工夫してみましょう。
たとえば上半身を高くし、膝の下に枕などを入れると、楽になることが多いです。

お腹を冷やさない

お腹の張り・痛みがある場合は、腹部を温めると症状が改善されることがあります。
たとえば湯たんぽや電気毛布などを使うのがおすすめです。

ただし、個人の状態によってはお腹を温めない方がよいこともあります。
お腹を温めたい場合は、まずかかりつけ医に相談してください。

肝硬変の進行時期別の食事の摂り方

肝硬変は進行段階によって、食事の摂り方が変わります。
主な進行段階別の食事のポイントをご紹介します。

自覚症状が無いとき

自覚症状がない代償期では、基本的に食事制限はありません。
食事を摂るときは、次のようなポイントに気をつけてください。

  • 栄養バランスのよい食事
  • 1日3回定期的に摂る
  • タンパク質・脂質・カロリーの摂りすぎに気をつける
  • 食物繊維・水分を摂って便秘を予防する
  • 飲酒は控える

肝性脳症を発症したとき

肝性脳症を発症したときは、タンパク質摂取を制限する必要があります。
肝性脳症は意識障害の1種で、原因はアンモニアによって脳がダメージを受けることです。

タンパク質の摂りすぎは血液中にアンモニアを増やします。
すると脳へのダメージが大きくなるため、肝性脳症を悪化させるおそれがあります。

肝性脳症がある方のタンパク質の摂取量は、1日0.5g~0.7gが目安です。
肝性脳症で、かつBCAAやアルブミンが不足している方は、栄養剤などでの補給も必要です。

BCAAとは、筋肉でのアンモニアの分解を助ける必須アミノ酸です。
具体的には、バリン・ロイシン・イソロイシンを指します。

BCAAを栄養剤などで補給すると、アンモニアの分解が進むため、肝性脳症の改善が期待できます。

肝性脳症の悪化を防ぐには、便秘の予防・改善も求められます。
便秘になると、腸内に毒素(アンモニア)が発生しやすくなるためです。

具体的には食物繊維や水分の適度な摂取を行いましょう。
食事での便秘改善が期待できない場合は、便秘薬を利用することもあります。

糖尿病を合併したとき

肝硬変で糖尿病を合併した場合は、食後の血糖値を上げないような工夫が必要です。
たとえば、次のようなポイントをおさえてください。

  • 1回の食事量を減らす
  • 食物繊維を多く摂る
  • 食事の間隔を空けすぎないようにする
  • お菓子・麺類などの糖質が多い食事は避ける

肝硬変は糖尿病を引き起こすことが少なくありません。
理由は、肝硬変になると肝臓に糖分を蓄えられなくなるためです。

肝臓に蓄えられない糖分は、そのまま血中に放置されます。
結果として、血糖値が高い状態が維持されやすくなります。

肝硬変ではインスリンの分泌量が多くなることも、糖尿病の原因の1つです。
インスリンは本来、血糖値を下げるためのホルモンです。

では、なぜインスリンが増えるのに糖尿病が起こりやすくなるのでしょうか。
インスリンが過剰に分泌されると、身体に耐性がついて、インスリンの効きが悪くなるためです。

結果、血糖値が下がりにくくなるため、糖尿病が起こりやすくなります。

腹水やむくみがあるとき

腹水・むくみがあるときは、身体に水分をためないような食事を意識しましょう。
具体的には塩分制限が必要です。

塩分には、体内に水分を蓄える性質があるためです。
肝硬変のある方は、1日の塩分摂取量を5~6g以内にしましょう。

塩分制限などでむくみが改善されない場合は、水分摂取を控える必要があります。

食事が摂れなくなったとき

食事が摂れなくなった場合は、BCAAを含む栄養剤などで栄養補給を行います。
BCAAはアンモニアの解毒を助けるほか、肝機能の改善にも役立つ栄養素です。

すこしでも食事が摂れるようなら、スープやとろみ食などの喉通りのよい食事を用意してみましょう。

食道静脈瘤があるとき

食道静脈瘤とは、食道の粘膜の下にある血管が膨れて瘤を作ることです。
食道静脈瘤がある場合は、柔らかいものを少しずつ食べるようにしましょう。

硬い食べものは、食道を通過する際に、瘤を傷つけて破裂させるおそれがあるため控えましょう。
同じく辛いもの・刺激物も食道静脈瘤破裂の原因となるため、控えてください。

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腹水患者の食事療法

腹水がある方の食事療法についてご紹介します。
ぜひ参考にしてください。

肝硬変

肝硬変がある方の代表的な食事療法として、夜食療法があります。
夜食療法とは、就寝前に200kcal程度の食事を摂る方法です。

夜食療法の目的は、就寝中の栄養・エネルギー不足を防ぐことです。
夕食から翌朝の朝食までは、10時間近く時間が空きます。

肝硬変の方は肝臓に糖分などの栄養を貯蔵しにくくなっています。
よって、食事の間隔が大きく開く夜間には、低栄養状態に陥りやすいのです。

低栄養状態の症状としては、就寝中の倦怠感やこむら返りなどが挙げられます。
そこで夜食療法を行い、就寝中の低栄養状態を回避するというわけです。

夜食療法を行う際は、朝・昼・夕食を軽めにし、1日の総摂取カロリーがオーバーしないように注意してください。

肝臓がん

肝臓がんの方は、肝硬変を併発しているケースが多くみられます。
そのため、食事は肝硬変の進行状況別に調整する必要があります。

肝臓がんでも特に症状がない段階では、次のようなポイントに注意して食事をしましょう。

  • 栄養バランスがよい食事
  • タンパク質・脂質・カロリーを摂り過ぎない
  • 塩分を控えめにする
  • 便秘予防に食物繊維を摂る
  • 飲酒は控える

腹水がたまっている場合は、塩分や水分の摂りすぎに注意してください。
栄養剤などを利用して、足りない栄養素を上手に摂取することも大切です。

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腹水の主な原因である肝臓病の罹患数

腹水の代表的な原因は肝臓病です。
肝臓病は、女性より男性のほうが発症率が高くなっています。

平成31年の厚生労働省の調査では、男性のがん罹患数は99万9,075人でした。
男性のがんのトップ5には以下が入ります。

  • 前立腺
  • 大腸
  • 肝および肝内胆管

肝臓がんは、男性のがんの中でも大きな割合を占めています。
対して女性のがんでは、肝臓がんは10位以下となりました。

女性に多いがんとしては、乳房・大腸・子宮などのがんが代表的です。
なお、肝臓がんの具体的な罹患数は以下の通りです。

2万5,339
1万1,957
総数3万7,296

出典:厚生労働省【全国がん登録 罹患数・率 報告

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腹水がある時期の食事の摂り方のまとめ

ここまで、腹水がある時期の食事の摂り方についてお伝えしてきました。
腹水がある時期の食事の摂り方の要点を以下にまとめます。

  • 腹水がたまる主な原因は、肝臓病や肝臓がんなど
  • 腹水がたまると食事が摂れなくなる理由は、腹水によって胃や肺が圧迫されて、胃痛・吐き気・息切れなどの症状があらわれやすくなるため
  • 腹水があるときの食事は、タンパク質・脂質・塩分を控えめにし、栄養バランスがよく、便秘になりにくいメニューを工夫するのがポイント

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

監修者 メディカル・ケア・サービス

  • 認知症高齢者対応のグループホーム運営
  • 自立支援ケア
  • 学研グループと融合したメディア
  • 出版事業
  • 社名: メディカル・ケア・サービス株式会社
  • 設立: 1999年11月24日
  • 代表取締役社長: 山本 教雄
  • 本社: 〒330-6029埼玉県さいたま市中央区新都心11-2ランド·アクシス·タワー29F
  • グループホーム展開
  • 介護付有料老人ホーム展開
  • 小規模多機能型居宅介護
  • その他介護事業所運営
  • 食事管理
  • 栄養提供
  • 福祉用具販売
  • 障がい者雇用

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