あらすじ
ソープ店で働く加那(中尾有伽)のもとに、母から「一週間だけ、おばあちゃんの介護してくれない?」という電話がかかってくる。
認知症の祖母・紀江(研ナオコ)の介護をすることになった加那は、実家とソープ店を行き来して「人の身体」を洗い続けるダブルワークを始める。
祖母からも店のお客さんからも「忘れられる」加那が、次第に自分の生き方を見つけていく。
特徴・見どころ
映画『うぉっしゅ』は、「人を洗う」という一つの行為を通じて、介護とソープという対極にある二つの世界を結びつけます。
この斬新で少しドキッとするような設定から、人間の尊厳や愛とは何かを深く問いかける、今までにない作品が誕生しました。
一見すると全く異なる二つの仕事には、実は私たちが普段見過ごしがちな、とても大切な共通点があったのです。
なぜ監督は、この二つの職業をあえて結びつけたのでしょうか。
介護とソープランド、二つの「洗う」仕事が描く人間の尊厳
本作の主人公は、認知症の祖母を介護しながら、夜はソープランドで働くという二重生活を送っています。
介護現場では献身的なケアが求められ、ソープランドではサービスとして体を洗う。
どちらも「人の体を清潔にする」という点では同じですが、社会が向ける眼差しは大きく異なります。
世間の偏見や自身の内なる葛藤の中で、主人公はそれぞれの仕事に真摯に向き合っていきます。
主人公は、この二つの世界で揺れ動きながら、自分自身のアイデンティティを模索していきます。
その姿を通して、どんな状況であっても人の体に触れ、清潔を保つという行為が、いかに相手への敬意と愛情に基づいているかを、本作は丁寧に描き出しています。
この映画は、私たちが持つ固定観念を優しく揺さぶり、本当の尊厳とは何かを静かに考えさせてくれるでしょう。
監督自身のリアルな介護体験から生まれた、笑いと涙の物語
この物語が持つ力強さの源は、監督である岡﨑育之介氏の実体験にあります。
彼は、昭和を代表する放送作家・永六輔氏の孫であり、実際に自身の祖母を介護した経験を持っているのです。
その時に感じた喜び、悲しみ、そして社会との隔たりや理不尽さが、本作の脚本にリアルな息吹を吹き込みました。
作品には、きれいごとだけではない介護の現実が、真摯な視点で映し出されています。
- 介護する側の精神的・肉体的な負担や疲労
- 社会からの孤立感や、仕事への偏見
- それでも決して失われることのない、家族の絆と深い愛情
しかし、本作はただ重苦しいだけの映画ではありません。
祖母との何気ない日常のやり取りには、思わずクスッと笑ってしまうようなユーモアもちりばめられています。
笑いと涙の先に、温かい希望の光を感じさせてくれる感動作に仕上がっています。
社会のレッテルに惑わされず、自分らしく生きることの尊さを教えてくれる『うぉっしゅ』。
現在介護に携わっている方はもちろん、これから向き合う可能性のある方、そして「自分らしさ」に悩むすべての人に見ていただきたい、心に深く残る一作です。
介護の現実に触れる中で、認知症への理解をより深めたいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
健達ねっとのレビー小体型認知症の介護とは?介護認定や介護施設について解説では認知症介護について詳しく説明していますので、ぜひ合わせてお読みください。
この秋、あなたの心を温め、明日を生きる勇気をくれる物語に、ぜひ触れてみてはいかがでしょうか。









