あらすじ
介護職員として働く40代のヨウコは、田舎町でひっそりと暮らしていた。
ある時、過去の事件で服役していた父・シゲユキが出所するという知らせを受ける。
長い受刑生活の中で寝たきりになっていた父を、散々悩んだ挙句、ヨウコは家に受け入れることを決意する。
寝たきりの父の介護をする中で、ヨウコは憎しみや怒りを呼び起こすが、疲弊していく娘の姿を見つめながら、父は「あること」に思いを巡らせていた。
特徴・見どころ
今、ご家族の介護に悩まれている方、そしてこれから介護という現実に直面するかもしれないすべての方へ。
本作『まなざし』は、そんなあなたの心に静かに、しかし深く寄り添ってくれる一本です。
この物語は、単なる介護をテーマにした映画ではありません。
実際に介護の最前線で働く現役の介護福祉士、卜部敦史監督が自らの経験と徹底した取材に基づき、綺麗事では決して語れない介護の日常をリアルに描き出した、魂のヒューマンドラマなのです。
介護現場の「声なき声」を映し出す圧倒的なリアリティ
本作の最大の特徴は、ドキュメンタリーと見紛うほどの徹底したリアリズムにあります。
寝たきりの父と、その介護を一手に引き受ける娘。
単調に見える日常の中に渦巻く、言葉にならない感情の機微を、本作はセリフを極限まで削ぎ落とすことで浮き彫りにしていきます。
淡々とした演出は、登場人物の息遣いや視線、そして沈黙そのものに意味を持たせ、観る者に介護する側・される側双方の複雑な心情を雄弁に物語るのです。
先の見えない日々の中で積み重なっていく介護者のストレスや、社会から孤立していくような孤独感。
その一つひとつが、介護を経験した人なら誰もが頷くような、胸に迫る説得力をもって描かれています。
卜部監督だからこそ切り取れた、介護現場の「声なき声」に耳を澄ませてみてください。
絶望の先に見える、家族の新たな「まなざし」
この映画は、ただ厳しい現実を突きつけるだけでは終わりません。
在宅介護の厳しい現実の中で、少しずつ変化していく父と娘の関係性こそ、本作が描きたかったもう一つの核心です。
主人公の娘を演じるのは、ベテラン女優の根岸季衣さん。
彼女が体現する、愛情と憎しみ、希望と絶望の間で揺れ動く内面の葛藤は、観る者の心を強く揺さぶります。
介護を通して初めて父と深く向き合うことになった娘が、何を思い、何を見出していくのか。
最初は重荷でしかなかったかもしれない介護という行為が、いつしか父娘の間に失われた時間を取り戻し、新たな絆を育むきっかけとなっていく過程は、静かな感動を呼び起こします。
特に以下のような方には、きっと心に響くものがあるはずです。
- 現在、在宅介護で精神的な負担を感じている方
- 親の介護がいつ始まるのか、漠然とした不安を抱えている方
- 介護と仕事の両立に悩んでいる方
- 家族とのコミュニケーションのあり方を改めて考えたい方
父と娘が交わす最後の「まなざし」が何を意味するのか。
その答えを、ぜひ見届けてください。
本作は、介護という重いテーマの中に、人間の尊厳と家族の愛という普遍的な光を見出す、希望の物語でもあるのです。

 
  
 
 
  


 
  
 
 
   
   
   
   
  


