「僕とケアニンとおばあちゃんたちと。」注目施設あおいけあの秘密

「介護施設」と聞いて、あなたはどのような場所を思い浮かべるでしょうか。
静かで、管理が行き届いていて、安全だけど、どこか少し寂しい場所。

もし、そんなイメージを持っているとしたら、本作『僕とケアニンとおばあちゃんたちと。』は、あなたのその常識を根底から心地よく覆してくれるでしょう。
本作は、神奈川県藤沢市に実在し、「世界中から注目を集める」奇跡のような介護施設「あおいけあ」に、1年間もの長期密着取材を敢行したドキュメンタリー映画です。

実はこの施設、あの大ヒット映画『ケアニン~あなたでよかった~』のモデルとなった場所でもあります。
映画の感動はフィクションではなく、ここで日々繰り広げられている「当たり前の日常」から生まれたものでした。
本作は、教科書通りの介護ではなく、人間味あふれる笑顔と喧噪に満ちた、驚きの現場の全貌を映し出します。

なぜ、ここは「奇跡の施設」と呼ばれるのか

カメラが捉える「あおいけあ」の日常は、私たちが知る認知症の方の施設のイメージとはまるで異なります。

そこには、管理される利用者と、管理する職員という関係はありません。
お年寄りたちが、包丁を握って料理を作り、掃除をし、時には職員の悩み相談に乗り、子供たちと遊ぶ。
まるで大きな家族の団欒のような光景が広がっています。

ここで実践されているのは、徹底した「自立支援」と、利用者一人ひとりの「その人らしさ」を尊重するケアです。
「危ないから座っていてください」ではなく、「やりたいなら、どうすればできるか一緒に考えましょう」というスタンス。
認知症があっても、役割を持ち、誰かの役に立つ喜びを感じられる場所。

それが、多くの利用者の表情を劇的に変え、認知症の進行さえも穏やかにしていくのです。

介護未経験の若き監督が見た「リアル」

本作のもう一つの大きな特徴は、撮影・監督を務めた佐々木航弥さんが、介護現場まったくの未経験者であったという点です。
最初は「認知症の方＝何もできなくなった人」という先入観を持っていた彼が、お年寄りたちのたくましさや、ユーモア、そして人生の深みに触れ、次第に魅了されていく過程が描かれます。

専門家ではない彼の視点は、私たち観客の視点そのものです。
だからこそ、専門用語ではなく「心」で感じる発見が数多くあります。

本作で紹介される小規模多機能型居宅介護というスタイルが、いかに地域に溶け込み、柔軟に人々を支えているか。
その仕組みの素晴らしさも、理屈ではなく映像を通して自然に理解することができます。

「介護」のイメージが変わる、希望の物語

画面から溢れ出るのは、職員たちの「やらされている感」のない、生き生きとした表情です。

マニュアルに縛られることなく、目の前のおじいちゃん、おばあちゃんと本気で笑い、本気で向き合う。
そんな彼らの姿を見ていると、介護福祉士の仕事とは、単なるお世話係ではなく、人の人生を輝かせるクリエイティブで誇り高い仕事なのだと、強く実感させられます。

• 介護の仕事に興味がある方
• 家族の介護に悩んでいる方
• そして、老いることに不安を感じているすべての方

本作は、そうした人々に「こんな場所があるんだ」「年をとるのも悪くないな」という、温かい希望の灯をともしてくれます。
介護に対するネガティブなイメージが、観終わった後には「ありがとう」という感謝の気持ちに変わる、必見の感動作です。