配信サービスで観る
あらすじ
12年間連れ添った妻・八重子が若年性アルツハイマー病と診断される。
夫の誠は自らも4度のがん手術を経験しながら、八重子の介護を続ける。
記憶を失っていく八重子だったが、いつも好きな歌をハミングしていた。
誠は八重子との思い出を短歌に綴り、残された時間を大切に過ごしながら、夫婦の絆を深めていく。
特徴・見どころ
本作『八重子のハミング』は、山口県萩市で暮らした、実在のご夫婦の実話に基づいた物語です。
若年性アルツハイマー病を発症した妻・八重子さんと、その妻を支え続けた夫・誠さん。
これは、単なる介護の記録ではありません。
40年以上にわたる夫婦の深い愛情と、命の尊厳を描き切った、涙なしには見られない感動作です。
この物語が観る者の心を強く揺さぶるのは、その介護がいかに過酷な状況下にあったかという点です。
夫の誠(升毅)は、妻の介護にあたる一方で、自らもがんと闘っていました。
いわゆる「老々介護」、それに加えて自身の病という壮絶な現実。
想像を絶する困難の中で、それでも誠さんは妻の手を離さず、真正面から向き合い続けます。
記憶が消えても、歌は消えない
妻の八重子(高橋洋子)は、病の進行とともに、大切な家族の記憶さえも少しずつ失っていきます。
昨日できたことが今日できなくなる。
そして、目の前にいる夫が誰であるかも、分からなくなっていく。
介護の現実が、容赦なく二人に突きつけられます。
しかし、そんな八重子さんにも、最後まで残ったものがありました。
それが、彼女がいつも口ずさんでいた「ハミング(鼻歌)」です。
なぜ、彼女は歌うのか。
そのハミングは、誠さんにとって妻がまだ「八重子」であることの証であり、二人が共に生きてきた日々の証でもありました。
記憶を失っていく妻と、その歌声に励まされ、愛を再確認する夫。
二人の姿は、言葉を超えた魂の結びつきを感じさせます。
「二人で生きる」ことの尊さ
メガホンを取ったのは、『半落ち』などで知られる故・佐々部清監督です。
監督は、老々介護の厳しい現実から目をそらすことなく、あくまでも温かい視点で、二人の日常を丁寧に、丹念に映し出します。
若年性認知症という過酷な病に直面したとき、人は何を思い、どう生きるのか。
夫・誠さんの献身的な愛と、記憶を失いながらも歌を口ずさむ八重子さん。
この物語は、愛する人と一日一日を大切に生きることの尊さ、そして人生の豊かさとは何かを、静かに、しかし力強く教えてくれます。









