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あらすじ
70歳の元演劇評論家クロードは、妻に先立たれ一人で気ままな老後を送っていた。
ある日、43年前に別れた恋人リリィがアルツハイマー型認知症のため介護施設に入所していることを知る。
クロードは自分のことを思い出してもらうため、自分も認知症だとウソをついて同じ施設に入居する。
過去の記憶を失いつつあるリリィに対し、クロードは少しずつかつての思い出を呼び覚まそうとする。
彼の献身的な愛情と工夫により、リリィの心に変化が訪れ始める。
特徴・見どころ
43年という長い歳月と、アルツハイマー型認知症という病。
愛の力は、そうした時間や記憶の壁を乗り越えることができるのでしょうか。
本作『43年後のアイ・ラヴ・ユー』は、ハリウッドの伝説的な名優ブルース・ダーンを主演に迎え、人生の黄昏時に訪れた「奇跡の再会」と、変わることのない愛の力を描いた、切なくも心温まる感動作です。
主人公のクロード(ブルース・ダーン)は、ある日、衝撃的な知らせを受けます。
43年前に理由も告げず、彼の前から突然姿を消した最愛の恋人リリィ。
彼女がアルツハイマー型認知症を患い、今は介護施設で暮らしているというのです。
クロードは、失われた時間を取り戻し、愛を伝えるため、リリィの元へ向かうことを決意します。
認知症のフリをして施設に潜入する、という奇策
本作の物語がユニークで、観る者の心を強く惹きつけるのは、その設定の斬新さにあります。
クロードは、リリィに会うため、なんと「自分も認知症である」というフリをして、彼女と同じ施設に入所するという、とんでもない奇策を実行に移すのです。
この「潜入」というスリリングな展開が、物語にユーモアと緊張感をもたらします。
しかし、施設で43年ぶりに再会したリリィは、病の影響でクロードのことを全く覚えていませんでした。
人生のすべてを捧げたいと願った女性に、自分の存在すら忘れられてしまった現実。
クロードは絶望の淵に立たされそうになります。
それでも、彼は諦めません。
たとえリリィが自分を覚えていなくても、彼女のそばにいたい。
もう一度、彼女に「アイ・ラヴ・ユー」と伝えたい。
その一心で、クロードは認知症のフリを続けながら、リリィの心に再び火を灯そうと奮闘します。
カンヌ受賞の名演が描く「記憶」と「愛」
この困難な主人公クロードを演じきったブルース・ダーンの演技は、まさに圧巻の一言です。
彼は本作で、第66回カンヌ国際映画祭において、史上最年長での主演男優賞という快挙を成し遂げました。
認知症のフリをするコミカルな演技から、愛する人を前にして忘れ去られた男の深い悲しみ、そして何があっても愛を貫こうとする純粋な情熱まで。
そのすべてを、老いてなお魅力的な姿で体現しています。
認知症の進行は、時に残酷なほど、確実に記憶を奪っていきます。
リリィの記憶が戻ることはないのかもしれません。
しかし、クロードが献身的にそばに居続けることで、リリィの閉ざされた心にも、何かが響き始めます。
記憶が失われても、その人が生きてきた軌跡や、誰かを愛したという「感情」そのものは、魂に刻まれているのではないか。
本作は、人生の最後に訪れた奇跡のような出会いを通して、愛することの真の意味を問いかけます。
ユーモラスな設定の中に、切実な愛の美しさを丁寧に描いた、深く心に残る傑作です。









