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あらすじ
エミー賞受賞の絶頂期にいた女優レイニーは、49歳で若年性アルツハイマー病と診断される。
大好きな演技、パートナーのエヴァとの幸せな日々、そして自分自身の記憶が、日に日に失われていく恐怖と向き合いながらも、レイニーは懸命に生きようとする。
記憶を失っても、愛する人への想いは消えることなく心に残り続ける。
レイニーとエヴァの深い絆と、病に立ち向かう勇気を描いた感動の物語。
特徴・見どころ
もし、働き盛りである40代や50代で、「若年性アルツハイマー病」と診断されたら。
そして、その病が、大切な記憶や、自分という存在そのものを、ゆっくりと、しかし確実に奪っていくとしたら。
本作『レイニーのままで 消えゆく記憶』は、その過酷すぎる現実と、愛するパートナーとの絆を、認知症当事者の視点から痛切に描き出した、胸に迫る物語です。
主人公のレイニー(クリスタル・チャペル)は、「女優」という、まさに記憶力、表現力、そして自分自身という存在を武器に生きてきた女性です。
そんな彼女を、遺伝性の若年性アルツハイマー病という病魔が襲います。
40代から50代でも発症し、一度発症すると進行が早いという、この病気。
本作は、レイニーが徐々に記憶を失っていくプロセスを、ごまかしや感傷を排し、リアルな当事者の恐怖として描き出します。
「私」が消えていく恐怖。当事者視点のリアル
本作の大きな見どころは、主演のクリスタル・チャペルが体現する、レイニーの繊細な心理描写です。
昨日まで覚えていたはずのセリフが出てこない。
慣れ親しんだはずの道で迷ってしまう。
そして、愛する人の顔や名前さえも、曖昧になっていく。
自分が自分でなくなっていくような、底知れない不安と恐怖。
レイニーは、その恐怖と闘うために、「女優」として培ったスキルを使います。
忘れてはいけないことをメモし、記憶を「演じる」ことで、何とか「レイニー」としての自分を保とうと奮闘するのです。
しかし、病は容赦なく進行していきます。
この「当事者でなければ分からない」内面の葛藤を、クリスタル・チャペルは痛切に、そして尊厳を持って演じきっています。
LGBTQカップルが描く、愛と献身の形
本作は同時に、レイニーと、彼女を支えるパートナーとの深い愛の物語でもあります。
二人は、女性同士のカップル(LGBTQカップル)です。
しかし、本作においてそれは特別なこととして描かれているわけではありません。
ただ、一組の愛し合う二人が、病という共通の困難に直面しているのです。
愛するレイニーが、徐々に変わっていく姿。
時には、自分のことさえ分からなくなってしまう現実。
それでも、パートナーは彼女の手を離さず、献身的に支え続けます。
「愛している」という事実だけを頼りに、先の見えない介護と向き合う姿は、観る者の心を強く打ちます。
これは、性別やセクシャリティを超えた、「愛する人を支える」とはどういうことか、という普遍的な問いを私たちに投げかけます。
「若年性認知症」を理解するための道しるべ
『レイニーのままで 消えゆく記憶』は、単なる悲劇の物語ではありません。
若年性認知症とはどのような病気なのか。
どのような症状が現れ、どのような対応法が求められるのか。
レイニーの視点を通して、これらの理解を深めることができる、啓発的な側面も持っています。
病気は、本人だけでなく、家族や周囲の人々にも大きな影響を与えます。
レイニーが「レイニーのままで」いられる時間を少しでも長くするために、パートナーが奮闘し、家族や周囲のサポートがいかに重要であるか。
その大切さを、本作は改めて実感させてくれます。
若年性認知症という、いつ誰の身に起こってもおかしくない現実。
その現実と向き合い、愛とともに生きようとした一人の女性の姿は、私たちに「生きること」そのものの尊さを教えてくれるでしょう。









