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あらすじ
1948年、ジョージア州アトランタ。
元教師のユダヤ系老婦人デイジー・ワサンは、運転を誤り隣家の垣根に突っ込む事故を起こしてしまう。
心配した息子ブーリーは、母のために黒人の運転手ホークを雇う。
最初は頑なに拒否していたデイジーだったが、ホークの誠実な人柄に次第に心を開いていく。
人種差別が色濃く残る時代を背景に、二人は25年にわたる深い友情を育んでいく。
特徴・見どころ
本作『ドライビング Miss デイジー』は、第62回アカデミー賞で作品賞を含む4部門を受賞した、映画史に残る不朽の名作です。
舞台は、人種差別が色濃く残る1948年のアメリカ南部。
元教師で頑固なユダヤ人老婦人デイジーと、彼女の運転手として雇われた黒人男性ホーク。
社会的な立場も、性格も、生きてきた背景も全く異なる二人が、25年という長い歳月をかけて、かけがえのない友情を育んでいく姿を描いた感動作です。
頑固な心を開いた、ユーモアと誠実さ
当初、デイジーは自分の老いを認められず、運転手を雇うことに猛反発し、ホークに対しても冷たい態度を取り続けます。
しかし、モーガン・フリーマン演じるホークは、そんな彼女の偏屈さや偏見を、持ち前のユーモアと深い誠実さで、少しずつ、柔らかく解きほぐしていきます。
車内という密室で繰り広げられる二人の会話。
それは、単なる雇い主と使用人の関係を超え、互いの人間性に触れる魂の交流へと変わっていきます。
ジェシカ・タンディ演じるデイジーが、ホークに対して少しずつ信頼を寄せ、やがて彼を「親友」と呼ぶようになる過程は、観る者の心を温かい涙で満たします。
「老い」と共に変わる関係、そして介護へ
本作は、高齢者の心理や親の介護について考える上でも、多くの示唆に富んだ作品です。
物語の始まりは、72歳のデイジーが運転操作を誤り、事故を起こしたことでした。
「自分でできていたことが、できなくなる」という老いの現実。
プライドが高く、他人の助けを借りることを拒むデイジーの姿は、多くの高齢者が抱える葛藤そのものです。
物語の終盤、デイジーは認知症の症状を見せ始め、施設での生活を余儀なくされます。
自身もかなりの高齢となったホークが、施設にいるデイジーを見舞うシーン。
そこには、老々介護の現実にも通じる、老いた二人の静かで尊い時間が流れています。
この作品が私たちに教えてくれるのは、以下のようなメッセージです。
- 偏見や立場を超えた信頼関係の尊さ
- 老いを受け入れ、他者と支え合うことの大切さ
- 人生の最期に、心許せる友人がそばにいることの救い
言葉少なに、震える手でケーキを口に運ぶホークの優しさ。
長い人生の旅路の果てに辿り着いた、二人の穏やかな笑顔は、真の豊かさとは何かを静かに、しかし力強く物語っています。









