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あらすじ
50歳の言語学者アリスは、コロンビア大学の教授として充実した日々を送っていた。
医師である夫と3人の子どもたちに囲まれ、幸せな人生を歩んでいた。
しかしある日から、講義中に言葉が思い出せなくなる。
若年性アルツハイマー病と診断されたアリスは、自分が自分でなくなっていく恐怖と闘う。
記憶が薄れる前に、アリスは自らある決断を下す……。
特徴・見どころ
世界的な言語学者として名声を博し、愛する家族に囲まれ、充実した人生を送っていた50歳の女性、アリス。
しかし、ある日突然、彼女の頭の中から「言葉」が消え始めます。
本作『アリスのままで』は、働き盛りの世代を襲う若年性認知症という残酷な現実と、記憶や知識を失ってもなお、「自分」として生きようとする一人の女性の尊厳を描いた傑作です。
主演のジュリアン・ムーアは、恐怖と闘いながら崩壊していくアリスを繊細かつ圧巻の演技で表現し、見事、アカデミー賞主演女優賞を受賞しました。
「言語学者」が「言葉」を失うという皮肉と恐怖
本作が観る者の心に鋭く突き刺さるのは、主人公が「言葉」を専門とする大学教授であるという設定です。
誰よりも言葉の力を信じ、知性を誇りとして生きてきた彼女が、病によってその武器を奪われていく。
講義中に単語が出てこなくなる、ジョギング中に自宅の場所が分からなくなる。
こうした若年性認知症の症状が、アリスのアイデンティティを容赦なく削ぎ落としていきます。
「癌であればよかったのに」。
アリスが漏らすこの痛切な言葉は、自分が自分でなくなっていくことへの底知れない恐怖と、周囲から「理解されにくい病」である苦しみを、強烈に物語っています。
神経科学者が描く、医学的に正確な「喪失」の過程
本作の原作者であるリサ・ジェノヴァは、神経科学の博士号を持つ専門家です。
そのため、アルツハイマー型認知症の進行過程や、本人が感じる違和感、そして家族の反応などが、医学的にも非常に正確かつリアルに描写されています。
過度なドラマチックさで飾るのではなく、淡々と、しかし確実に進行していく病のリアルさが、かえって胸を締め付けます。
また、遺伝性の病である可能性に直面したとき、家族に走る動揺や葛藤も丁寧に描かれています。
キャリアを捨てて介護をするのか、自分の人生を生きるのか。
夫や子供たちそれぞれの反応は、決して綺麗ごとだけではない、家族の現実を映し出しています。
記憶を失っても、私は「アリスのままで」
すべてを忘れてしまったら、私は私ではなくなってしまうのでしょうか。
本作の原題は『Still Alice(それでも、アリス)』です。
知識や記憶が抜け落ちても、彼女が積み重ねてきた人生や、愛する心、そして人間としての尊厳は、最期の瞬間まで残っている。
アリスが未来の自分に向けて残した、あるビデオメッセージ。
その言葉は、病と闘うすべての人、そしてそれを支える人々に、生きることの深い意味と勇気を与えてくれます。









