あらすじ
カントリー音楽界のスーパースター、グレン・キャンベル。
彼は2011年、アルツハイマー病と診断される。
医師からはギター演奏を断念するよう忠告されたが、グレンは家族とともに「さよならツアー」を敢行する。
記憶が薄れていく中でも、ステージに立つと見事な歌声とギターテクニックを披露する。
音楽の力が、病と闘う彼を支え続けた。
特徴・見どころ
アメリカのカントリー・ミュージック界における伝説的スター、グレン・キャンベル。
「ラインストーン・カウボーイ」などのヒット曲で知られ、ギターの神様とも称された彼が、2011年、医師から衝撃的な宣告を受けました。
アルツハイマー型認知症である、と。
本作『アルツハイマーと僕〜グレン・キャンベル 音楽の奇跡』は、病の公表から、家族と共に敢行した全米151公演にも及ぶ「さよならツアー」の全貌を記録した、魂のドキュメンタリーです。
その感動は世界中に広がり、グラミー賞で3部門を受賞するという快挙を成し遂げました。
言葉は失っても、音楽は消えない
本作で描かれるグレンの姿は、認知症と脳の関係について、医学的な常識を超えた驚くべき事実を私たちに見せてくれます。
病の進行により、彼は日常生活での会話が困難になり、愛する妻の名前や、今日が何曜日かさえ忘れてしまう瞬間があります。
テレプロンプター(歌詞を表示する装置)がなければ、歌詞が出てこないこともあります。
しかし、ひとたびステージに上がり、ギターを手にすると、奇跡が起きます。
指は魔法のように複雑なコードを正確に押さえ、圧倒的なギターソロを奏でるのです。
「日常の記憶」は消えても、「音楽の記憶」は脳の深層に鮮明に刻まれている。
ステージ上で輝く彼の姿は、人間の能力の底知れなさと、音楽が持つ不思議な治癒力を証明しています。
「ありのまま」を晒す勇気と、家族の愛
通常、スターであれば、衰えていく姿を世間には見せたくないと思うものでしょう。
しかし、グレンと彼の家族は、あえてカメラの前で「ありのまま」を晒すことを選びました。
ステージ裏での混乱、不安による苛立ち、そして家族との衝突。
きれいごとだけではない闘病の現実が、包み隠さず記録されています。
それでも過酷なツアーを続けられたのは、バックバンドを務める3人の子供たちや、常にそばで支え続けた妻の献身的なサポートがあったからです。
時にユーモアを交えながら、病気ごと彼を受け入れ、支え合う家族の姿。
それは、介護する家族にとって、これ以上ないほど大きなエールとなるはずです。
彼が最期に家族へ捧げた曲「I'm Not Gonna Miss You(君を想うことはないだろう)」には、記憶を失っていくことへの悲しみと、それを超えた深い愛が込められています。
音楽は希望であり、生きる力そのものである。
そのことを教えてくれる、涙と笑顔に溢れた珠玉の実話です。









