あらすじ
鹿児島港からフェリーで12時間、島民わずか100人ばかりが生活するトカラ列島・宝島。
医師も警察もいない絶海の孤島で、島唯一の介護施設に若手ドキュメンタリー監督が半年間密着した。
東京から介護未経験の若者が施設の責任者になるためにやってくるが、慣れない離島での生活や経験の浅い介護の仕事に苦戦する。
しかし、施設の利用者や島民らと触れ合うことで、徐々にその顔つきにも変化が現れはじめる。
島唯一の介護施設に密着することで見えてきた「離島の介護」のリアルを描く。
特徴・見どころ
本作『僕とケアニンと島のおばあちゃんたちと。』は、介護ドキュメンタリーとして異例のヒットを記録し、多くの感動を呼んだ「僕ケア」シリーズの待望の第2弾です。
今回の舞台は、鹿児島県の南端からさらに船で長時間揺られた先にある、トカラ列島・宝島。
「絶海の孤島」とも呼ばれるこの島には、コンビニもなければ、医師も、警察官さえも常駐していません。
本作は、そんな島民わずか100人ほどが暮らす小さな島にある、唯一の介護施設に半年間もの長期密着取材を敢行した、奇跡のような記録です。
医療やインフラが整った都会の介護とは、何もかもが違う環境。
しかし、そこには「介護の原点」とも言える、人と人との濃厚で温かい繋がりがありました。
不便さの中にある豊かさと、厳しい現実の中にある笑顔。
観る者の価値観を優しく揺さぶる、渾身のドキュメンタリー映画です。
「何もない」島だからこそ輝く、究極の支え合い
この島には、高度な医療機器も、豊富なスタッフもいません。
しかし、ここにある小規模多機能型居宅介護の現場は、驚くほど活気に満ちています。
それは、介護が施設の中だけで完結するのではなく、島全体が大きな一つの「家族」のように機能しているからです。
道ですれ違えば声をかけ合い、魚が釣れればお裾分けし、困った時はお互い様。
島民たちが自然体で高齢者を支え、協力し合う姿は、私たちが失いつつある「地域包括ケア」の理想的な形を、理屈ではなく実践として見せてくれます。
「制度」や「サービス」ではなく、「情」で繋がるコミュニティの強さ。
便利さと引き換えに私たちが置いてきてしまった大切なものが、この島には確かに息づいています。
東京から来た若者が、島の「孫」になるまで
本作のもう一つの軸は、東京からやってきた介護未経験の若者が、島の介護施設の責任者として成長していく物語です。
最初は「よそ者」であり、介護の知識もなかった彼が、島のおばあちゃんたちに揉まれ、愛され、時に叱られながら、少しずつ頼もしい「ケアニン(介護福祉士)」へと変貌していきます。
教科書通りのケアではなく、目の前のおばあちゃんが何を望んでいるのかを必死に考える。
その姿を通して、介護とは「技術」である以前に、「心」を通わせることなのだと気づかされます。
若者の葛藤と成長、そして彼を本当の孫のように受け入れ、育てていく島民たちの温かさに、胸が熱くなります。
「最期までこの島で」を叶える覚悟
もちろん、離島の介護は綺麗ごとだけではありません。
急変時の対応の難しさ、限られた資源、台風による孤立。
常に「死」と隣り合わせのリスクの中で、「それでも最期まで、住み慣れたこの島で暮らしたい」という高齢者の願いをどう叶えるか。
そこには、支える側の並々ならぬ覚悟と、命に対する深い敬意が必要です。
前作に続き、俳優・戸塚純貴さんが担当するナレーションは、時にユーモラスに、時に切なく、島の日常に寄り添います。
困難な状況でも、笑顔を絶やさず逞しく生きる島の人々。
その姿は、私たちに「豊かさとは何か」「幸せな最期とは何か」を問いかけ、未来への希望の灯をともしてくれるはずです。









