人生100年時代、いつまでも自分らしく、クリアな頭で過ごしたい。
それは私たち全員の願いです。
しかし、加齢とともに忍び寄る「認知機能の低下」への不安は、多くの方が抱えている切実な問題ではないでしょうか。
2026年3月5日、そんな私たちの未来を明るく照らす、画期的な研究成果がカゴメ株式会社と弘前大学から発表されました。
それは、身近な野菜であるブロッコリースプラウトに含まれる成分「SGS(スルフォラファングルコシノレート)」を長期摂取することで、軽度認知障害(MCI)を含む高齢者の記憶機能が維持される可能性が示されたというものです。
本記事では、健達ねっとの読者の皆様に向けて、この最先端の研究内容を分かりやすく、かつ詳細に解説します。
SGSとは何か、そして3.5年という異例の長期研究が私たちに何を教えてくれるのか徹底的に紐解いていきましょう。
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発表のハイライト:3.5年の長期摂取がもたらす希望

まずは、今回の研究発表の最も重要なポイントを2つに絞ってご紹介します。
① 世界でも極めて珍しい「3.5年間」の長期介入効果
これまでの食品成分に関する研究の多くは、数週間から数ヶ月という短期間のものでした。
しかし今回の研究では、認知機能低下リスクの高い高齢者を対象に、なんと3.5年間(42ヶ月間)という長期間にわたってSGSの摂取を継続してもらいました。
その結果、認知機能の指標であるMPIスコア(Memory Performance Index)が、SGSを摂取しなかったグループと比較して、長期間良好に維持されることが確認されました。
② MCI(軽度認知障害)の方でより明確な効果を確認
さらに注目すべきは、試験開始時にすでに「MCI(軽度認知障害)」と判定されていた方々において、試験終了時点(3.5年後)の認知機能維持効果がよりはっきりと示された点です。
MCIは認知症の前段階とされ、ここでの適切な対策が将来を左右すると言われています。
SGSがこの重要な時期の防波堤となる可能性が示されたのです。
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注目成分「SGS(スルフォラファングルコシノレート)」とは何か?
今回の主役である「SGS」について、少し詳しく見ていきましょう。
ブロッコリースプラウトに秘められた力
SGS(別名:グルコラファニン)は、ブロッコリーをはじめとするアブラナ科の野菜に含まれる機能性成分です。
特に、成長したブロッコリーよりも、発芽してすぐの新芽である「ブロッコリースプラウト」に高濃度で含まれていることが知られています。
生体防御システム「Nrf2」を活性化
SGSが体内に取り込まれると、「スルフォラファン」という物質に変化します。
このスルフォラファンは、私たちの細胞内にある「Nrf2(ナーフツー)」という、いわば生体防御のマスター・スイッチをオンにする働きがあります。
Nrf2が活性化すると、体内で強力な解毒作用、抗酸化作用、抗炎症作用を持つ酵素が次々と作り出されます。
脳は非常に多くの酸素を消費するため、酸化ストレス(サビ)や炎症によるダメージを受けやすい臓器です。
SGSは、この酸化ストレスから脳の神経細胞を守ることで、認知機能の低下を防ぐと考えられています。
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なぜこの研究が行われたのか?(研究の背景)
MCI(軽度認知障害)という重要な分岐点
認知症は、ある日突然発症するわけではありません。
健康な状態から徐々に認知機能が低下し、「MCI(軽度認知障害)」と呼ばれるグレーゾーンを経て、認知症へと進行していきます。
MCIの段階で適切な生活習慣の改善や栄養介入を行えば、健常な状態に戻る(リバートする)可能性もあるため、ここは絶対に逃してはならない重要な時期なのです。
長期的なエビデンス(科学的根拠)の不足
これまでも、健康な高齢者を対象とした短期間の研究では、SGSが情報処理速度の向上やネガティブな気分の改善に良い影響をもたらす可能性が示されていました。
しかし、以下の2点について明確なデータが不足していました。
- すでにリスクを抱えているMCIの方に対する効果はどうなのか?
- 数年単位の長期的な予防効果は本当にあるのか?
この大きな謎を解明するために、カゴメ株式会社と、健康ビッグデータ「岩木健康増進プロジェクト」を有する弘前大学(伊東健教授らの研究グループ)がタッグを組み、今回の長期プロジェクトが始動したのです。
研究の全貌:3.5年間、どのように検証されたのか
この研究は、科学的に非常に信頼性の高い手法を用いて行われました。
実施方法の概要
- 対象者 : 認知機能低下リスクが高い(MCI判定を含む)63〜90歳の男女26名。
- 期間 : 3.5年間(42ヶ月間)。
- 試験デザイン : ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験。
参加者をランダムに2つのグループに分けます。- SGS群 : SGSを含むサプリメントを毎日摂取。
- プラセボ群 : SGSが全く入っていない偽薬(プラセボ)を毎日摂取。
思い込みによる効果(プラセボ効果)を排除するため、参加者も、評価を行う研究者も、どちらのサプリメントを飲んでいるか分からない状態(二重盲検)で実施されました。
- 運動プログラムの併用 : 試験期間中、両グループの参加者に対して任意で参加できる運動プログラムが提供されました(栄養と運動の複合的なアプローチを想定)。
評価方法:「あたまの健康チェック®」の導入
認知機能の測定には、米国で開発され、FDA(米国食品医薬品局)の治験などでも採用実績のある客観的評価ツール「あたまの健康チェック®(The MCI Screen)」が用いられました。
これにより、被検者の微細な認知機能の変化が「MPI(Memory Performance Index:認知機能指数)」という0〜100の数値で正確に定量化されました。
驚きの結果:SGS摂取グループで記憶機能が維持された
3.5年という長い月日を経て、どのような結果が出たのでしょうか。
統計解析(線形混合モデル)を用いた厳密な評価が行われました。
① 全体における効果:MPIスコアの高維持
研究参加者全体において、SGS群はプラセボ群に比べ、3.5年間の全期間を通じて、認知機能の総合的な指標であるMPIスコアの変化量が統計学的に有意に高く維持されました。
これは、SGSを飲んでいたグループの方が、認知機能の衰えを緩やかに抑えられていたことを意味します。
② 記憶の引き出しを助ける:「即時再生」と「遅延再生」
さらに詳細な項目を見ると、SGS群では以下のスコアも有意に高く維持されていました。
- 即時再生スコア : 新しい情報を聞いて、すぐに思い出す力。
- 遅延自由再生スコア : 時間が経ってから、ヒントなしで思い出す力。
これらは、いわゆる「物忘れ」に直結する重要な記憶機能です。
SGSが、これらの機能低下を防ぐ盾として働いたことが伺えます。
③ MCIの方々での明確な効果
そして最も重要な結果として、試験開始時にMCIと判定された方々においても、SGS群のMPIスコアがプラセボ群と比べて統計的に有意に維持されることが確認されました。
これは、すでに少しリスクが高まっている状態からでも、SGSの摂取によって進行を遅らせる、あるいは状態を保てる可能性を示す非常に心強いデータです。


図1. 研究参加者全体およびMCIグループの認知機能指標(MPIスコア)の変化量(●SGS群/〇プラセボ群, 左:試験対象者全体/右:試験開始時にMCIと判定された対象者)
この研究が私たちの未来に与えるインパクト(今後の展望)
このカゴメと弘前大学の研究成果(Frontiers in Nutrition誌掲載)は、超高齢社会を迎えた日本、そして世界にとってどのような意味を持つのでしょうか。
日常的な「食」による安全な予防アプローチ
現在、認知症に対する根本的な治療薬の開発は進んでいますが、まだ誰もが手軽に利用できる状況にはありません。
そうした中で、ブロッコリースプラウトという日常的な食材に由来する「SGS」が、長期にわたって安全に認知機能をサポートできる可能性が示されたことは、「食事を通じた予防(一次予防・二次予防)」の実用的な選択肢を私たちに提示してくれました。
早期介入の重要性の再確認
「最近、物忘れが増えたかも」と感じた時が、対策の始め時です。
MCIの段階からSGSのような機能性成分を生活に取り入れ、同時に適度な運動を組み合わせることで、私たちは自分の意思で「あたまの健康寿命」を延ばすことができるかもしれません。
健達ねっとからのメッセージ
今回の研究は26名というパイロットスタディ(予備的試験)の規模であり、今後はさらに大規模な調査が期待されます。
しかし、3.5年もの間、人での有効性を追いかけたこのデータは、極めて価値の高いものです。
「健達ねっと」では、これからもこうした科学的根拠(エビデンス)に基づいた最新の健康情報をお届けし、皆様がご自身とご家族の健康を主体的に守るためのサポートを続けてまいります。
今日の食卓に、ブロッコリースプラウトを少し添えてみる。
そんな小さな一歩から、クリアな未来への投資を始めてみませんか。
- カゴメ株式会社 ニュースリリース(2026年3月5日) : ブロッコリースプラウト由来成分「スルフォラファングルコシノレート(SGS)」の長期摂取(3.5年間)が、認知機能の維持に寄与する可能性を確認
- 論文情報(Frontiers in Nutrition) : Efficacy of 42-month oral administration of glucoraphanin in preventing cognitive decline in individuals at elevated risk of dementia, including those with mild cognitive impairment: a randomized, double-blind, placebo-controlled pilot study.
著者: Sunao Shimizu, Shuya Kasai, Chieko Suzuki, Tomoya Kon, Hiroyuki Suganuma, Shigenori Suzuki, Koichi Murashita, Shigeyuki Nakaji, Kazushige Ihara, Masahiko Tomiyama, Ken Itoh
DOI: 10.3389/fnut.2026.1740494 - 弘前大学COI-NEXT拠点 : 共創の場形成支援プログラム(文部科学省・JST)関連情報
- 株式会社ミレニア : 認知機能検査「あたまの健康チェック®」について
- 先行研究参考 : Nouchi, R., et al. (2022). “Effects of sulforaphane intake on processing speed and negative moods in healthy older adults: Evidence from a randomized controlled trial.” Frontiers in Aging Neuroscience 14.







