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トップページ>健康お役立ち記事>alsは原因不明の難病?発症原因説や症状・治療方法も解説

alsは原因不明の難病?発症原因説や症状・治療方法も解説

alsはかつて、原因も治療法も分からない難病といわれていました。
ハッキリした原因はまだ特定されていませんが、有力な仮説がいくつか発見されています。

果たしてalsの原因とはどのようなものなのでしょうか。

本記事ではalsの原因について、以下の点を中心にご紹介します。

  • alsはなにが原因で発症するのか
  • als発症は遺伝や環境に左右されるのか
  • alsではどのような症状があらわれるのか
  • alsに有効な治療法はあるのか

alsの原因について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。

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alsとは


alsとは、全身の筋肉が衰え、手足などに力が入らなくなる疾患です。
筋萎縮性側索硬化症とも呼ばれ、国によって指定難病に登録されています。

alsでは筋肉自体に異常が起こるわけではありません。
筋肉を動かす脳の指令系統が壊れることで、筋肉が次第に衰えていきます。

alsの具体的な症状には、物がつかめなくなる、歩行が難しくなるなどの症状があります。
あるいは、呂律が回らなくなったり、ものを飲み下すのが難しくなったりするケースも代表的です。

全身の筋肉は衰えるものの、五感や内臓機能は維持されることが一般的です。
多くの場合、視覚や聴覚、認知機能や排泄機能などには支障ありません。
難病情報センターによると、日本国内におけるals患者は約1万人です。

発症年齢はさまざまですが、60~70代の高齢者の発症率が高くなっています。
また、女性より男性の方が有病率は高めです。

出典:難病情報センター「筋萎縮性側索硬化症(ALS)(指定難病2)」

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alsを発症する原因


alsは原因が特定できていません。

しかし近年は技術の進歩により、有力な仮説が複数登場しています。

原因は解明されていない

alsは1869年にフランスで初めて発見されました。
現在まで世界中で研究されてきましたが、alsの原因はハッキリ解明されていません。

しかし、近年では、alsの原因として5つの仮説が立てられています。

原因と考えられる仮説

alsの原因と考えられる仮説は主に5つあります。

  • グルタミン酸毒性
  • 遺伝子の異常
  • 神経栄養因子欠乏
  • ストレス顆粒の蓄積
  • 環境によるもの

それぞれの内容を紹介します。

グルタミン酸毒性

グルタミン酸が過剰に放出されることで、運動ニューロンが破壊されます。
結果、脳から筋肉への指令が伝わらなくなるという仮説です。

グルタミン酸は神経伝達物質です。
アミノ酸の一種で「うまみ」としても知られています。
神経伝達物質のグルタミン酸は、食物から摂取されるのではなく、脳内で合成されます。

食物からの摂取で過剰になることはほとんどありません。

alsの原因と考えられているグルタミン酸毒性は、運動ニューロンの指令の受け渡しに関わってきます。
運動ニューロンと神経伝達物質であるグルタミン酸の関係について簡単にご説明します。

私たちが手を動かそうとしたとき、脳から「手を動かせ」と指令が出ます。
指令は、運動ニューロンから運動ニューロンへと渡されて、手の筋肉に送られます。

ニューロンは神経細胞で、脳からの指令を各部位へと伝達する回路です。
ニューロンとニューロンの間には、シナプスという隙間があります。

シナプスを通るために神経伝達物質であるグルタミン酸が放出されます。
つまりニューロン同士は、シナプスを挟んで神経伝達物質をやり取りすることで、脳からの指令を筋肉に伝えていくわけです。

alsの発症者は、グルタミン酸が過剰に放出されやすいという傾向があります。
過剰に放出されたグルタミン酸を浴びると、ニューロンは死亡します。
理由は、グルタミン酸によって必要以上に神経細胞が興奮してしまうためです。

過剰なグルタミン酸がニューロンを壊す現象を、グルタミン酸の神経興奮毒性と呼びます。
グルタミン酸の神経興奮毒性によってニューロンが壊されます。
ニューロンが破壊されることで、脳からの指令は筋肉に届かなくなります。

つまり、筋肉が動かないという現象=alsが起こるという仮説です。

遺伝子の異常

遺伝子の異常が原因でalsが起こることがあります。
具体的には、活性酸素を分解する酵素の遺伝子に異変が起こります。

活性酸素は、過剰になると細胞を傷害します。
遺伝子異常により、活性酸素を分解する酵素が働かなくなると、体内の活性酸素が過剰になります。
過剰な活性酸素により運動ニューロンが破壊されてalsが起こるという仮説です。

遺伝子が原因で起こるalsは、家族内で遺伝することがあります。
遺伝が原因で起こるalsは「家族性als」と呼ばれます。
両親・おじおば・祖父母のいずれかにals発症者がいる方は、家族性alsが起こる可能性があります。

しかし、家族性als患者は、全体のals患者のうち5~10%程度です。
家族がalsだからといって、必ずalsを発症するわけではありません。

神経栄養因子欠乏

運動ニューロンの成長・修復に必要な栄養が欠乏するという説です。
簡単にいえば、神経細胞が栄養不良になるためalsが起こります。

神経が栄養不良になると、神経細胞が十分発達できなくなります。
また、栄養不良状態では、細胞がダメージを受けても回復ができません。
つまり、ニューロンを正常に維持できなくなるわけです。

結果、脳から筋肉への電気信号の伝達に支障が出るためals状態に至ります。

ストレス顆粒の蓄積

ストレス顆粒が運動ニューロンを破壊し、筋肉の運動を妨げるとされる仮説です。
ストレス顆粒とは、ストレスを感じたときに体内で合成される物質です。
本来は、感染や熱などのストレスから細胞を守る働きがあります。

しかしストレス顆粒が過剰に合成されると、かえって神経細胞を破壊することがあります。
神経細胞であるニューロンが破壊されると脳から筋肉への指令が伝わらなくなり、筋肉の運動に支障が出ます。

環境によるもの

環境が原因でalsを発症するという説です。

紀伊半島南部に発症者が特に多いことに起因しています。
なぜ特定の地域にals患者が多発するのかは、未だ解明されていません。
一説では、水や食べ物が原因だと指摘されています。

海外の例を挙げると、グアム島も、かつてはals患者が多発する地区でした。
しかしグアム島では現在、als患者数は減少傾向がみられます。
理由の1つとして、欧米文化の流入により、食生活が大きく変化したことが挙げられます。

しかし、本当に食事・水などにalsの原因があるのかどうかは、現在も判明していません。

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原因不明のalsの症状


初期と進行期にわけて、alsの主な症状を紹介します。

ただし、症状のあらわれ方には個人差があります。

初期の症状

alsは症状によって2つのタイプに分けられます。

手足が動かなくなるタイプと、口が動かしづらくなるタイプです。

それぞれのタイプの初期症状には以下があります。

【手足が動かなくなるタイプ】

  • 何もない所でつまずくことが多い
  • 箸を持つなどの細かな作業が難しくなった
  • 以前より物が重いと感じる
  • しゃがんだ体勢から立ち上がるのが難しい

【口が動かしづらくなるタイプ】

  • 呂律が回らないなど会話に支障が出る
  • 食べ物や飲み物が飲み込みづらい

進行期の症状

どのタイプであっても、進行期の症状は似ています。

全身の筋肉がやせていき、力が入らなくなります。
やがて、歩行や自力で立つことが難しくなります。

また、のどの筋肉が衰えるため、発声や嚥下に障害が起こりやすくなります。
さらに呼吸のための筋肉が衰え、最後は呼吸が困難になります。

実際にals患者の方は、呼吸不全が原因で亡くなるケースが少なくありません。
一方で、眼球を動かす筋肉や排泄に関わる筋肉は、末期に至るまで症状が出にくいとされています。

さらに、熱い・痛いといった感覚神経は阻害されずに維持されます。
なお、alsは進行性の病気であり、一度発病すると症状が軽くなることはありません。

余命には個人差がありますが、一般的には発病後の平均寿命は2~5年です。

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alsの治療方法


alsは進行性の疾患であり、基本的に完治は見込めません。

治療は、進行を遅らせる薬物治療と諸症状の軽減を目指す対症療法が中心となります。
現在、日本でalsの進行を遅らせるために使用されている薬は「リルゾール」という内服薬です。

また、「エダラボン」という点滴薬も承認されています。
対症療法としては、たとえば、身体の不自由さにリハビリや機能訓練で対処します。
体の残存機能を維持することが大切です。

また、呼吸困難の症状が出る前に呼吸筋を鍛えることで、発症を遅らせることができます。
病気への不安が大きいときは、向精神薬や睡眠薬が用いられることもあります。
痛みを伴う場合には、抗てんかん剤、筋弛緩剤などが使われます。

食べ物の飲み込みにくさに関しては、食物の形態を水気の多い柔らかいものにします。
飲み込みにくさが進行すると、胃に管を直接通す方法がとられます。
発声や体を動かすことが難しくなると、コミュニケーションが取りにくくなります。

しかし、多くの方は視覚や聴覚、感覚の機能が維持されています。
文字盤やICTを活用したコミュニケーション手段を取り入れ、QOLの向上を図ることも大切です。

alsは進行を完全に止めることはできません。
しかし進行スピードを遅らせることで、重症化するまでの期間を伸ばすことができます。

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alsの原因解明に向けての研究


alsは原因や治療法が確立していない難病です。
しかし日本国内では現在、原因究明に向けて大規模な研究が進められています。

alsの研究プロジェクトはJaCALSと呼ばれています。
名古屋大学医学部神経内科を中心に、大学・研究機関・行政・民間企業が一体となって始まったプロジェクトです。
現在は、北は北海道から南は九州まで30以上の施設が参加しています。

JaCALSでは様々な機関が連携しながら、実際にals患者を診断した結果をもとに原因解明や治療法の確立などを目指しています。
近年では、alsの治療に有効な注射薬の承認が行われました。

また、呼吸や栄養状態の管理、感染症の予防、患者・家族のメンタルケアなど、心身のケア技術も日々進歩しています。
今後は、JaCALSによるalsの原因特定や根治のための治療薬の開発が期待されます。

薬の使い方

alsの原因まとめ

ここまでalsの原因についてお伝えしてきました。

alsの原因の要点を以下にまとめます。

  • alsは、神経伝達物質の過剰放出などによる神経細胞の破壊によって起こると指摘されるが、定かではない
  • als発症率は遺伝や居住地の影響で左右される可能性がある
  • alsの初期は、手足や口が動かしづらくなり、進行期には嚥下や呼吸も難しくなる
  • alsには根本的な治療法はないものの、日本国内では原因究明・治療法の確立に向けた大規模な研究プロジェクトが進められている

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

監修者 メディカル・ケア・サービス

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  • 学研グループと融合したメディア
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